表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

06◇高良ミツキの場合

◇高良ミツキの場合



 近づく。どんどん近づく。

 でも、先輩は一向に私のほうを見て、返事をしようとしない。

 聞こえてないのかな?

 何て思いながら、駆け寄ると案の定。

 また間違えた。

「あー……なんていうかこう……ごめん」

 なんともいえない気まずい空気が流れる。

「……いえ」

 彼はうつむいたまま、そう短く返事をした。

 誰だろ、この子。とか思いつつも、胸元の名札に目をやる。

 名札の学年色が私と同じだから同い年か……なんて思いながらもう一度彼の顔を見ると

「あっ!? 吉良ミズキ……っ!!!」

 名札を見たときは一瞬スルーしてしまったけども、彼だった。

 クラスの端っこの、いつもうつむいている彼。

「えっ……!? な、なんですか?」

 そう言って少しだけ顔をあげた。

 お、やっぱりきれいな顔。しっかり顔を見たのは初めてな気がする。

「いや……えっと……美術部?」

 名前を叫んだはいいものの、話題が無い。

 咄嗟に彼が抱え込むようにして持っていたスケッチブックを見てそう聞いた。

「え……?あ、はい……」

 彼の言葉は一々尻すぼみだ。まるで何に関しても自信が無いみたいな。

「今からどっかに書きに行くなら一緒に行ってもいい?」

 なんとなく、だけど。彼のこの自信の無さの理由が気になったんだと思う。

 無意識にそんなこと、言っていた。

「えっ……?あ、はい……って、えぇえ?!」

 驚いたように目を見張る。

 いつもだったら下向いてぼそぼそとしゃべっているだけの彼が。

「いいじゃん、私さ、絵描けないから、絵描ける人って羨ましいんだよね。お願いっ!」

 なんとなく、こんなに自分に自信の無い彼の創る世界を隣で見たいと、そう思ったからじゃないかって今なら思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ