第9話予想外の出来事
―――亜須香寮―――
~幸助side~
~響き合う、願いが今、目覚め「パン」~
俺は目覚ましのアラームを普通に叩き止め時計を見る。6時00分だ、まぁ丁度いい時間なのだがなぁ。あ~……痛い。体中の節々が痛い。物凄く痛い。もう泣きそうなくらい痛い。これはあれだな。昨日無理やり自分の内包『魔力』を左手に集約させたからだな。
一応言っとくが、俺の内包『魔力』というのは、文字どうり俺の中に在るものだ。この内包『魔力』が前に言った0時に回復する『魔力』だ。この内包『魔力』を使うときは、魔法陣が要らなくなるからだいたい呪文だけで魔法を発動している。まぁいうなれば『言霊』って事になるのかな。けど元々の俺の『魔力』が少ないのからあんまり大技の『言霊』は使えなかったりする。
んで魔法陣の方が大気中の『魔素』を『魔力』に変換してその『魔力』で魔法を発動するときに必ず必要になるモノだ。けど『魔素』を『魔力』に変換した時の『魔力』は、元々が俺の中になかったモノだからか原因は不明だが長時間俺の中に存在できないんだ。しかもその『魔力』は『言霊』できないんだよ。
だからそのフィルターとして魔法陣を創ってみたら、思いのほか効率よく発動するんだよね。だから発動するときは必ず魔法陣の方にしているんだよ。それが昨日はテンパっちゃってうっかり自分の内包『魔力』をそれも『言霊』を介して魔法にしたのじゃなく、そのままの素の『魔力』を左腕に集めて攻撃しちゃったから反動がものすごいデカい。
いちおう『気』を体に廻らせていたから痛みは少ないけど、歩くと足元はまだフラフラするよ。あぁ、そうそう。昨日は寮に帰ったら寮には誰もいなかったから『みんなの予定表』に≪寝る。≫と書いて速効で寝た。……今思ったら昨日は丸一日何も食ってないなぁ。っま、大丈夫か。『バイト』時代は3週間に1度しかご飯食べなかった時があったしな。しかも、ご飯と言う名のビタミン錠剤だし。
…………………………今思い出すと俺よく生きてたなぁ。っと、そろそろ準備しないとな。俺はベットから這い出て、光の魔法陣を空中に書き亜空間と繋げて、着ていたジャージと下着を亜空間に放り込み、亜空間から下着と学ランとYシャツとズボンを取り出して着替える。
「ん~、一応持っていくか。」
俺は亜空間から狂科学者印のアダマンタイト製の三段式?警棒を取り出して、懐に仕舞う。うん、まぁ一応ね。な~んか嫌な予感がすっからなぁ。さすがに『魔剣』は持ってはいけんしな。おっと、そういやこの『魔剣』の銘はなぁ、正直言って分からん。古今東西あらゆる言語と照らし合わせてみても一致するものは何一つない。何なんだろうなぁこの文字。銀文字でもないしな。
正直言おう、お手上げだよ。まぁいいや。俺は部屋を出ようと思ったが、ふと頭を掻くと、……めっさボサボサ。てか意識したらものすごくウザくなってきた。うん、そんなに時間かからんしな、切っちゃおっと。俺は亜空間から散発バサミを取り出して、髪を切る。結構適当でも俺だから普通に切れたりする。てか今思ったらこれ才能か?……違うな。てかそんなことを思ってたら切り終った。鏡を見てみる、うん、普通だ。
俺は切った髪を魔法で焼き払い、机の引き出しから受験票を取り出し財布に入れる、そんで財布をポケットに突っ込み、机の上に置いてある腕時計を付け、鞄を持って部屋を出て廊下に出る。ん、まだふらつくなぁ。そんなことを思いながらトイレに行き用を済まし下に行き、リビングに行く。
「おはようございま~す。」
と言いながらリビングに入る。リビングには亜須香さんと、八千草さんと、松村さんが机に座って談笑していた。まぁ、見た限り喋ってるのは亜須香さんと松村さんだけで八千草さんはじ~っとしている感じだ。
「あっ、おはよう幸助君。」
と言う松村さん。う~ん、やっぱり女性のように見えるなぁ~。
「おはよう幸助君。ご飯食べる?」
と聞いてくる亜須香さん。
「ういうい、お願いします。」
と言いながら椅子に座る。椅子に座ると松村さんが……
「あれ?髪切った?」
と聞いてきた。
「ん?あぁ、自分で切りましたよ。」
「え、自分で切ったの?」
「はい。そうっすけど。」
「へぇ~、髪切るの上手いんだね。」
「いえいえ、上手いんじゃなくて下手じゃないだけっすよ。」
「ふぅ~ん。そうなんだ。」
という感じ暫く雑談をしていると……
「は~い、ご飯ですよ~。」
と言いながら亜須香さんが台所から出てきて俺の前に料理を置いてくれた。
「亜須香さん、ありがとうございます。」
と言い頭を下げてから……
「んじゃ、いただきます。」
と手を合わせながら言い食べる。飯は普通に、ごはんと味噌汁と塩鮭だった。まぁこんだけだから差して時間もかからずに完食。
「ごちそう様。」
と手を合わせらが言う。
「お粗末さまでした。」
と微笑みながら食器を下げてくれた。俺は腕時計を見ると7時15分だ。そろそろ行かないとな。
「それじゃ、行ってきます。」
と言い席を立ち玄関に行く。
「行ってらっしゃ~い。合格するといいねぇ。」
と松村さん。
「行ってらっしゃい……。」
とこっちを向きながら軽く手を振ってくれる八千草さん。なんか嬉しい!
「行ってらっしゃい。頑張ってね。」
と少し黒い微笑みを浮かべながら言う亜須香さん。……警棒持ってきて良かったかもしれん。そんなことを思いながら玄関で靴を履き玄関を出る。
「さ~て行きますか。」
と言い俺は校舎のある中央に歩いていく。
―――合格発表会場―――
「お~、まるで人がゴミのようだ。」
俺は某大佐のセリフを言いながら辺りを見渡す。そこには視界を埋め尽くすほどの人、人、人、此処の場所は合格発表会場、と言うが正確に言うと運動場に受験生を集めてデカい校舎の壁に合格者の受験番号が書かれたデカい紙が張り出されているだけだ。んでその紙の周囲に受験生全員が群がっている感じだ。5000人も群がっていると見に行くにも一苦労だな。
あ~もしかして亜須香さんの頑張ってねってこれの事か?……多分これだな。ちなみに俺は群がっている人の集団の最後尾の一歩後ろにいる。さて、俺も自分の受験番号を探すかね。俺は紙の右端に視線を移し……
「【視力強化】」
俺はポツリと、俺にしか聞こえない声でつぶやく。すると、今までは真っ白いにしか見えなかった紙がハッキリ見えてくる。くっくっく、こいつのおかげで俺は人ごみに入らなくていいからな。うん、魔法超便利だぜ!と思いながらも右端から順に探すが……
「あれ?無い?」
俺の受験番号がどこにもない。う~ん、どゆこと?俺は校長と裏取引、っていうか裏口入学の取引をして入学できるようになっていたはずだ。しかも、俺は普通のテストでもかなりの点数を採っていたはずだ。だから落ちるってのは無いと思ってたんだけどなぁ~。と思っていると視界の端に、正確に言うと張り出している紙の上端に≪『普通専攻』≫と書かれている。『普通専攻』?何それ?
と思っていたら『普通専攻』の隣に≪『超能力専攻』はこの校舎裏へ≫。……ま、まさか。俺は急いで校舎裏に行こうと今いるところから群衆をグルっと回って避けて校舎裏に行く。校舎裏にはだいたい50人ぐらいの人が壁に張り出された紙を見上げている。意外と少ないなぁ、あぁもう行ったのかな?俺は紙の前まで来て紙を見るとそこには俺の受験番号が書かれていた。
ま、マジかよ。い、いや、まぁ少なくとも可能性には入ってたからそんなに驚愕はしないけど、俺に超能力なんてないよなぁ。多分これは魔法の事かな?……まぁ何とかなるか。そう思いながら張り出し紙を眺めていると端っこにクラス分けの紙と校舎の見取り図が張ってあった。俺はSクラスらしい、……Sクラスって。いや、まぁいいんだよな。俺は校舎の見取り図を脳内HDDに保存して、Sクラスがある場所まで歩いていく。
Sクラスはこの無駄にデカい久留間学園の校舎の最上階付近にあるみたいだ。まぁ、あの見取り図じゃぁ、足りないところもあるからハッキリ言えないんだけどね。俺はそんなことを思いながら校舎を上って行く。てか高!Sクラスは8階にあるんだよね。疲れたよ~。そんなことを思いながらも階段を上ってやっと8階まで来た。はぁ、疲れた。俺は廊下を渡りSクラスと書かれた教室の扉の前に来る。
中からはワイワイと騒がしい声が聞こえてくる。まぁそんなことはどうでもいいんだけどね。俺は普通に扉を開けて中に入ると一瞬だけ教室の声が小さくなり、また元に戻る。教室の中には二つの人だかりが出来ている。2つ目の人だかりの中心には綺麗な美少女が微笑みながら周りの男子生徒や少数の女子生徒と談笑している。うん、この美少女、妹だよ。よりにもよって同じ教室かよ。まぁ気づいてなさそうだからいいけど。
2つ目の人ごみにはほとんど全ての女子生徒が1人の男子生徒に群がっている。うん、美形だ、いわゆるイケメンだな。ケッ、死ねばいいのに。こいつに関しては何も言いたくない、てか死ねばいいのに。まぁ軽く言うなら主人公ってやつだな。いかにも万能人間の雰囲気を醸し出しているしな。はあ、不公平だ。そんなことを思いながら黒板と言う名の緑の板を見るとそこには≪来たものから適当に席に座れ≫と書いてある。
……適当って、いや、まぁいいけど。そんなことを思いながら窓際の一番後ろの席に行く。その席には誰も荷物を置い無かったから俺が座った。ちなみに、妹はコッチから見て教卓の左側で談笑していて、イケメンは教室の中央で談笑している。イケメンは絶滅すべきだと思うな。俺はそんなことを思いながら席に座って寝そべっている。すると教室の前の扉が開きゴリラ?が入ってくる。
「立っている奴、即刻席に座れ。」
と威圧感バリバリに出しながら言うのはゴリラ、もとい受験会場の教官、もといこのクラスの担任の……
「俺はこのクラスの担任の剛田猛だ。早速だがこのクラスの説明をさせてもらう。まず―――。」
と剛田先生がこのクラス。『超能力専攻』の説明を始めたが、まぁ長いので簡単にまとめると、この学校では超能力者を自覚している人、いない人を集めて力のコントロールなどを教えていること、S~Cまでのクラスが超能力専攻のクラスと言うこと、超能力と言っても発火能力者とか発電能力者などだけではなく、在学中の生徒の中にはとても説明できない現象を起こす生徒がいること、
君たち(俺ら)の中にもそういう可能性がある人だということなどなど、いろいろなことを言っていた。
「さて、粗方説明し終わったことだが、君たちの中にはまだ自分の能力についてわかっていない者もいると思う。その者は俺に着いてきてくれ、そうじゃなく自分の能力をちゃんと認識している者はこのまま指定の寮に帰ってもらっていい。それではわかっていない者は荷物を持って着いてきてくれ。」
と言い教室から大半の生徒を引き連れて出て行く剛田先生。教室に残ったのは俺と妹とイケメンとその他。俺以外の人は一ヶ所に集まって何か話し合っている。正直言って俺には関係ないから帰ろうと席を立って扉に向かうと教室の扉が開き男の人が顔をのぞかせる。その男は黒縁眼鏡を掛け、スーツを着こなし、エリートっていう雰囲気を醸し出している。うん、エリートってやつか。そんなことを思っていたらそのインテリが……
「え~、聖上晃君、久我希美さん、真祓幸助君は居ますか?」
と聞いてきた。それに反応したのは俺と、妹の希美と、イケメンこと聖上が反応していた。それを見たエリートさんが……
「校長が呼んでいるのでちょっと来てもらえますか?」
と言ってくる。それにイケメン君は……
「はい、分かりました。」
と言いながら鞄を持って行く。
「分かりました。今行きます。」
と鞄を持ってまだ残っている生徒に挨拶をしながらエリートの方に行く。俺はもともとエリートさんの近くにいたからそのまま待っていると、
「あなたが幸助君だね。それじゃ着いてきてください。」
と言い廊下を歩いていく。希美とイケメン君がその後に続き、その後ろを俺が着いて行っている。しばらく歩くとデカい両開きの扉がある部屋の前まで来た。エリートさんが……
「ここが校長室です。じゃあ入りますね。」
と言い扉を開けて中に入る。次に希美とイケメン君が入り最後に俺が入る。部屋の中は左側の壁に歴代校長の写真とかトロフィーとかが飾ってある。右側は本棚になっており外国書籍の本が所狭しと並んでいる。部屋の中央にはデカいガラス張りの机があって、その両サイドに高級そうな黒いソファが置いてある。んでそのソファの奥側にデカい執務机があって、その傍にエリートさんが立っている。
そんで執務机の向こう側にスーツをビシッと着込み、縁なしメガネを掛けていて、何やらインテリの雰囲気を醸し出している女性がこれまたデカい社長椅子に座ってこちらを見ている。なんかねぇ。配置的にみるとこの人が校長だろうな。んでその傍にいるのが秘書ってとこか。そんなことを思っていると校長と思われし人が……
「やぁこんにちは、新入生諸君。」
と言い挨拶をする。
「僕はこの学園の校長兼理事長の真祓強哉だ。3年間よろしく頼むよ。」
と言い椅子に座ったまま一礼する。そんでその隣のエリートさんが一歩前に出て……
「私は真祓さんの秘書を務めています。黒部斎賀と申します。以後よろしくお願いします。」
と言い一礼して一歩下がるエリートさん、もとい黒部さん。黒部さんが下がると真祓さんが……
「さて、挨拶も済んだことだし、僕から君たちに言うことがあるんだ。」
とこちらを見ながら言う校長。
「言うこと?ってなんですか?」
と聞くイケメン野郎。それを今言おうとしてんじゃん!と怒鳴りそうになるのを必死にこらえる。
「そう急かさないでよ、まぁ簡単に言うと君たち3人に生徒会に入ってもらう。と言うことかな。」
と言う校長。…………へ?3人?まさか俺も入ってんの?
「何か質問はあるかな?ないならこの寮に行ってくれ。この寮が生徒会専用の寮だからな。」
と言いながら引き出しから書類を取り出し黒部さんに渡す。黒部さんは渡された書類を2人に渡した。……俺のが無いが後でもらえるのかな?そんなことを考えていると2人は部屋から出て行った。扉が閉まってから校長が……
「ん?幸助君なにかな?」
と聞いてくる。
「え~っと、生徒会に入るのが、あの2人なら分かります。あの2人は主人公ですからね。でも、何で俺まで生徒会に入るんですか?生徒会に入るのはあの2人で十分でしょ。」
これは本当に疑問だ。確かに俺はそれなりの学力を身に付けたが所詮は俺、脇役だ。正確に言うと村人FかチンピラBだ。んであの2人だけを生徒会に入れるなら他の生徒も皆大喜びだろう、だが俺は完全に蛇足だ。余計なものだな。必要ない。なのに入れる。何故だ?と言うことになるのよ。んでまぁ折角の機会だから聞いてみたってわけ。
「ん?なんだそのことか。それはな、君ともっと話したかったからだ。」
と結構ある胸を張って答える校長。ってなんだそれ。
「はぁ?」
あぁ、ほら、黒部さんが訳が分からずに呆けちゃってるよ。
「幸助君を普通の生徒にしていると余り話す機会が無いからな、普通の生徒よりかは話す機会がある生徒会に入れることにしたんだよ。」
と堂々と答える校長。
「はぁ、それなら『連合』のボイスチャットで十分でしょ。」
「いやいや、あれは君がいつも暇を持て余していたからだよ。進学したんだからそんな暇はもうないぞ。だからこそ『連合』以外での会話の機会が欲しかったんだよ。」
「だけどこれはやり過ぎだろ。何も無理やり生徒会に入れなくても良かったんじゃないか?」
「う~ん、そうでもないんだよ。君は時々僕でさえ知らない事を知っているし、何より能力だけなら十分生徒会に入ることはできるよ。」
「だけどそれだけなら別にあの2人だけでも良かったんじゃないのか?俺は明らかに蛇足だろ。」
「そこはさっき言った会話のためだよ。君からはもっと聞きたいことがあるしね。」
「俺は無いんだけどな。」
「そんなこと言わずにさぁ、ほら、麻雀あるよ。」
「いや、今は関係ないだろうよ。」
「まぁそう言わずにさ、了承してくれよ。ていうかもう入会手続きは済んでるから。」
と言い引き出しから入会手続き書を取り出し見せてくる。
「事後承諾かよ。」
「ああ、こうでもしないと君は了承してくれなさそうだからな。」
「……はぁ、仕方がない。わかったよ。一応納得しとくよ。」
「悪いね。」
「本当に悪いと思ってんのかねぇ?」
「さぁ?思ってるんじゃない?」
「いや、お前が疑問形になるなよ。」
なんて会話を続けていると呆けていた黒部さんが復活して、話しかけてきた。
「え~っと、校長と幸助君はお知り合いなのですか?」
と聞いてきた。俺は真祓さんとアイコンタクト会議で話し合った。結果、俺が説明することになった。……面倒くさ。
「はい、そうなりますね。俺と校長はネットゲームの『板遊戯連合』の構成員なんですよ。」
「『板遊戯連合』?ってなんですか?」
「『板遊戯連合』ってのはですね、ネットゲームの種類の中でボードゲームだけが遊べるゲームの名前が『板遊戯連合』っていって通称『連合』です。んで『連合』の中には各ボードゲームの種類分の『組』があるんですよ。たとえば『オセロ組』、『将棋組』などがありますね。んで俺と校長はその中の『麻雀組』に所属してんですよ。ちなみに校長は日本支部麻雀組会長で俺が副会長です。
あと『連合』は意外とデカいですよ。海外サーバーがあるぐらいですしね。たしか100ヶ国ぐらいにサーバーがあったと思いますね。」
ん~、ザッとこんなもんかな。
「そ、そうなんですか。」
と眼鏡のブリッジを抑えながら苦笑い風に言っている。
「さて、と。んじゃま、理由も聞いたし、俺はどこの寮に行けばいいんすか?」
結局まだ生徒会の寮とやらの場所は聞いてないんだよね。
「亜須香寮だよ。」
……………………………………………はぁ?
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