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第十八話 失踪者の部屋

 失踪者の部屋は、

 思ったよりも整っていた。


 生活感があるのに、

 決定的なものが欠けている。


 東堂恒一は、

 棚の奥から、

 一つの箱を見つけた。


 中身は、紙。


 絵。

 メモ。

 そして、録音データ。


「……展示に、行った人間だな」


 三嶋恒一郎が言った。


 再生された音声は、

 ノイズ混じりだった。


『見たんです……

 未来が、壁に……』


 男の声。


『整理されてて……

 正しいって、

 思った』


 息を呑む音。


『でも……

 誰の、未来か……』


 音声は、そこで途切れていた。


 箱の底に、

 一枚の紙。


 白。

 鉛筆。


 ——空白。


 何も描かれていない。


「……描かなかった」


 東堂は、呟いた。


 それが、

 唯一の抵抗だった。


 東堂は、

 ふと、思った。


 ——不知火灯も、

 同じ選択をした。


 未来を描かない。

 見せない。

 意味を与えない。


 それは、

 敗北ではない。


 連鎖を断つ、

 唯一の勝ち方だ。


 その夜、

 展示側の拠点は、

 静かに解体された。


 違法ではない。

 だが、持続もしない。


 核が、消えたからだ。

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