39 写真集
吾輩は今、写真集の販売記念イベントに参加している。当然のように今日の吾輩も貴公子のような衣装を着ているが、ママさんがかなり暴走したようで衣装にはキラキラと光る細工が全体に施されており、グレードアップしたゴージャスじょにーがお披露目されている。
そして吾輩は、お約束であるユイちゃんに抱えられていつものように吾輩の右手は車のワイパーに負けないくらい動き続けている。
吾輩の右手はそのうち別の生物になっているかも知れない。吾輩には右手の感覚が既になく、それでも酷使され続けても動き続ける右手。
「もう辞めてにゃー。お家に帰りたいー」と叫びたーい。吾輩はモブ猫として平穏な日常生活を希望する。スターなど望んでいなーい。
神様助けてー。
しかし当然ながら何も起こらなかった。
吾輩が本当に困っている時に助けてくれない。薄情過ぎると吾輩は言いたい。
「大きな声で叫んじゃうぞー。魔王になっちゃうぞー。どうだ!」
それでも結局何も変わらなかった。
だから吾輩は諦めることにした。
此処は300人程の人が入れるイベントホールになっており、会場には大型のスクリーンが置かれ写真集に関連する内容などが紹介されているようだ。チャッピーが吾輩に弾き飛ばされる映像が何度も流れている。写真集の販売と同時にチャッピーの販売も行われている。そして、時々チャッピーの変な歌も流れている。
吾輩としてはチャッピーの販売がメインだと思うのに何故だかおまけのような状態である。
吾輩は「なんでこうなゃったー」と叫びたい。
相変わらずイベント会場にいるのは殆どが女性であり年齢層は幅広い。多くの人が何かを言っているようだが、じょにーとアンドレの呼び名が半々くらいである。もしかして吾輩のフルネームがじょにー アンドレまたはアンドレ じょにーと思われているのだろうか?未だにアンドレの意味が分からない。
吾輩は何がどのようにイベント企画が進んでいるのか分からないが、チャッピーのプロモーション活動の企画に同じような流れが多かったのでそろそろ握手会が行われることが予測出来た。
握手会ではもう何度も会っている人が沢山いる。吾輩の何に熱狂しているのかは知らないが、いつも沢山の贈り物をくれる。彼女達はママさんと同じ部類の人間なのかも知れない。
今回は一人一回だけの写真撮影も同時に行われているので終了までには、まだまだ時間が掛かりそうである。
握手&写真撮影が終わった人達は笑顔でとても喜んでいるが、吾輩と一緒に写真を撮って何が嬉しいのだろう。
吾輩は猫である。人間の女性ならかっこいい男性と一緒に写真を撮って喜ぶのではないのか?
吾輩にはさっぱり理解が出来ない。
ユイちゃんなら分かるのだろうか?
「にゃにゃにゃにゃーにゃ」
なんとなく叫んで見た。
「キャ~」「かわいい」「もっと聞きたーい」
吾輩が思っていた反応と違った。
この場は大人しくしていた方が良いようだ。
「じょにー。ようやく半分位が終わったようだぞ」
主がそっと吾輩に教えてくれた。
吾輩が列に並んでいる人を改めて見てみると、後ろの方に並んでいるのに周りにいる人達よりも背が高ので、とてもよく見える人物がいた。彼?彼女?強烈な印象を放つ人物は少しずつ吾輩に近づいてくる。
なんだか少し怖い。
彼?彼女?はムキムキの超マッチョ体系で髪は黒色の角刈り短髪。タンクトップで筋肉が凄いのがとてもよく分かる。そして胸の毛が盛大に見えている。
タンクトップにある文字はパパさんから教えてもらった事があるので知っている。
「 L O V E 」
吾輩はどうすれば良いのだろう。
今直ぐにでもここから逃げ出したいのである。
吾輩が何故、彼なのか彼女なのかを判断出来なかったのは、彼女?は真っ赤な口紅を塗っており頬には薄いピンク色の化粧がされていたからであった。
吾輩がママさんから教えてもらった事は、女性は自身をより綺麗に見てもらう為に顔に化粧をするのだと聞いた。
吾輩が少し考え事をしていると、あっという間に彼?彼女?は吾輩の目の前にいる。
真っ赤なショートパンツに編み上げ式の真っ赤なブーツを履いており、全身が見える状態だと更に強烈な印象である。
「う〜ん。じょにー。とっても会いたかったわー」
凄い重低音である。同時に投げキッスとウインクがあったが、咄嗟に両腕でガードしておいた。
「やだ~ 照れちゃって。可愛いんだから〜」
「まずは握手ねー。ドキドキしちゃう♡」
ゴツくてデカい手はいとも簡単に吾輩を粉砕する事が出来そうな感じである。
早く終わって欲しい・・・。
今日は悪夢を見そうだにゃー。やだなぁ・・・。
そうだ!今日は寝る時、らいでんと一緒にお休みしよう。
「また会いに来るわ♡」
吾輩が考え事をしている間に写真撮影は終わったようだが、去り際のひと言は聞きたくなかった。
吾輩、どうしよう・・・。
吾輩には考えても答えなど出せないのである。
吾輩は早くお家に帰りたかったが、吾輩の気持ちなどお構いなしに握手&撮影会は進んでいく。
「じょにー。お疲れさま。ようやく終わったよ」
吾輩は主から言葉にようやくホッとする事が出来た。
今日の強烈な体験は二度としたくないが、無理なんだろうなぁ〜。
今夜も美味しいご飯を沢山食べてから、らいでんと一緒に寝ればいつもの日常が戻って来ると思いたい。そう願う事しか出来ない吾輩であった。




