38 貴公子の憂鬱
吾輩はチャッピーのプロモーション活動も終わり、ようやく研究所の部屋で普段の日常生活を過ごしている。主はとても忙しそうに仕事をしているが、吾輩には関係ないので今はゆっくりお昼寝を楽しむのである。
吾輩がダラダラした時間を過ごしていると窓の外は暗くなり晩御飯の時間になっていた。
最近のご飯とおやつは、チャッピーのプロモーション活動の時にファンからもらったプレゼントが沢山あるおかげで、日替わりで違う種類の食べ物が用意されている。そして、吾輩は美味しくいただく。
このまま吾輩の舌が肥えてしまったら、グルメじょにーになってしまったら、この先どうなってしまうのだろう。今はまだ、困ることはないだろう。しかし、この美味しい食事が当たり前のように用意されている状況が続き、吾輩が何も感じなくなった時に突然、以前のキャットフードに戻ったら吾輩は耐えられるのだろうか?吾輩にとって食事はとても大切である。この先、ご飯が美味しいと感じられなくなった時の事を考えると憂鬱である。
らいでんは相変わらず吾輩をじっと見ている。
「じょにー。うまいか?どうだ?ん-うまいか?」
らいでんは話すことが出来ないが、吾輩はそんな風に聞かれている気がした。
なんとなく返事をすることにした。
「とても美味しいよ」
すると吾輩の気のせいだとは思うが、らいでんは無言で頷いているように感じた。
とても不思議な感じである。
らいでんは吾輩に話しかけていたのか?らいでんは吾輩の言っている事が分かっているのか?
謎である。
食事が終わり吾輩はいつものように毛づくろいをしてリラックスしていると、部屋のドアが大きな音と共に開いた。
「じょにー。また忙しくなるよ」
「え?」
吾輩は聞きたくないことを主から聞いてしまった気がした。
「チャッピーの販売と同時にじょにーの写真集の販売が決まったよ」
「え?なにそれ」
主がまたおかしなことを言っている。吾輩の平穏な生活が奪われてしまう。
なぜこんなことになってしまったのだ。吾輩は悪いことは何もしていないのに。
神様は助けてくれないの?どうして?
「じょにーよ。これは試練なのだ。魔王になってしまったお前にはこれからも多くの試練が待ち受けるだろう」
「日々精進せよ」
にゃ?にゃんだ・・・?この声は何処から聞こえてくるの?
「あなたは誰ですか?」
「我か?秘密じゃ。ここで秘密を明かしてはつまらぬ。魔王ではなくなった時に教えてやろう」
「えー。吾輩は魔王じゃありません。魔王に興味もありません。魔王ならすぐに辞めます」
「ダメだじょにー。貴様は魔王だ。ワシが認めたのだ。魔王をやめることはワシが許さん」
「え?あなたは誰?何故、別の声がするの?吾輩の頭がおかしくなちゃった?」
「ワシか?秘密だ。永遠に秘密だ。あきらめろ」
「えー。そんなー」
「でも吾輩は魔王をやめます。そもそも吾輩は普通の猫です。魔王ではありません」
「ぬぬぬ・・・。貴様は魔王である。魔王を辞めることなど許さん。此奴が余計な事をしているのだな。ならば邪魔者は消し去ろう」
「ふぅん!」
「どうだ!奴と同等の力を持つ神なのだから奴を吹き飛ばしてやった。全く恐るるに足らん。はっはっは・・・」
「あなたは神様?」
「神じゃとー。何のことだ?ワシは知らんぞ。」
「ワシはようやく楽しみを見つけたのだ。魔王を辞めることは許さん。やめた時には呪いでまずいご飯ばかりの毎日に変えてやろう。よいな。覚悟せよ。さらばだ」
突然、聞こえていた声が聞こえなくなった。おかしなことが続いている。吾輩に何が起こり続けているのだろう。吾輩の魔王がまだ続いているの?吾輩は本当に頭がおかしくなってしまったのかもしれない。どうしよう。
吾輩は混乱した頭を整理することが出来ずに、現実逃避する為にとりあえず寝ることにしたのであった。




