36 お疲れのじょにー
最初のチャッピープロモーション活動も無事に終わり、次の目的地へと向かう。
次の場所までは電車で移動をするようだ。吾輩は電車に乗るのが初めだったが人が沢山いるだけで楽しい事は何もなかった。電車を乗り換えると先頭の車両が白い色だがペリカンのくちばしの形に似た乗り物だった。これも電車らしく、主が新幹線という乗り物であることを教えてくれた。とても速いらしい。
新幹線が出発してから外の景色を見たが、最初は楽しむことが出来たが徐々にスピードが上がるにつれて吾輩には早すぎて何が何だか分からなくなってしまった。主が運転する車のスピードよりもはるかに速い事を教えてくれたが、窓の外を見ても景色を楽しめないので仕方なく寝て過ごすことにした。
吾輩が目を覚ましてもまだ移動中であった。今回の旅は移動する時間がとても長くて退屈である。数日は同じような状況が続くのだろう。本当に嫌になってしまう。何か楽しいことはないだろうか。周りを見ても人だらけで面白くない。しかし、暇を潰さなければならない。仕方がないので人間ウォッチングをする事にした。
吾輩が最初に気になったことは髪の毛の色だった。研究所にも黒い髪以外に茶色や金色の人はいるが、ここには黄色や赤い色・灰色の人がいる。おばあちゃんのような人でも紫色やオレンジ色の髪の毛の人がいる事には驚いた。とってもファンキーな人なのかもしれない。
主のおばあちゃんから教えてもらったのは、人は歳を取っていくと髪の毛の色が白くなっていく事だった。だからおばあちゃんの髪の毛の色も白くなってしまったと言っていた。なのに何故、おばあちゃんのような人達でもカラフルな髪の毛の色なのか不思議であった。
吾輩の暇つぶしのおかげか、ようやく今日泊まるホテルに到着したようだ。部屋に着き解放されると体全身を伸ばして固まった体をゆっくりほぐした。
「お疲れ様、じょにー。長い時間カゴの中は窮屈だよね」
「にゃ」
ユイちゃんが吾輩を労ってくれた。吾輩は出来る男である。ちゃんと言葉を返しておく。
部屋には大きなリビングルームとベットルームがあり、吾輩が少し走り回っても大丈夫そうだったのでらいでんと追いかけっこをする事にした。
大きいと思っていたスペースも走り回って見ると狭く感じた。壁や物に体が当たる事が増えてきたので追いかけっこは辞めて大人しくする事にした。
吾輩が晩御飯を食べる頃には窓の外は暗くなっていた。吾輩は食事の後に毛繕いで身綺麗にしてから窓の外の景色を楽しむ事にした。今日見る夜景も高いビルの明かりや町の街灯などがとても綺麗である。長い時間夜景を見ていたが、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。気づけば朝になっていた。
今日はチャッピープロモーション活動の2回目になる。主とユイちゃんは昨日よりも上手くチャッピーのアピールが出来るだろう。でも吾輩は出来れば関わりたくない。チャッピーが重要なのに吾輩が目立つのは納得が出来ない。断固反対したいが言葉が通じなければ考えを伝える事が出来ない。本当に不便である。
今日も吾輩はゴージャスな衣装を着ている。昨日と同じようで少しデザインが違うらしい。ユイちゃんが教えてくれなければ吾輩には違いが全く分からなかった。
主とユイちゃんの支度が出来たようで次の会場に向けて出発した。会場に着くと若い女の子が沢山いるようだった。主が人気者になったのだろうか?そうするとユイちゃんが嫉妬するだろうなと考える吾輩であった。
『チャ。チャ。チャチャ。チャ。チャァーッピー♪ チャッピー♪ チャッピ!』
変な歌がまた流れている。チャッピーの歌なのだろうが吾輩にはこの歌の良さが全く理解できない。
主がらいでんを抱え、ユイちゃんが吾輩を抱いて会場入りした。
何やら女の子から吾輩へ黄色い声援が飛んでいる気がするが気のせいだろうか?
「キャー。じょにー」「アンドレー。愛してる」
でもよく聞いていると吾輩の名前と例のアンドレが混ざっている。
何故ここにもアンドレと呼ぶ人がいるのだろう。吾輩はアンドレに転生したのだろうか?
本当にアンドレって誰なの?
チャッピーのプロモーション活動なのに吾輩が目立って良いの?
相変わらずらいでんは吾輩をじっと見ている。
吾輩の手をユイちゃんが一生懸命に振っている。
ユイちゃんに伝えたい。吾輩の手は車のワイパーではないのだと。
吾輩は早く研究所へ帰りたい。もう吾輩の出番は必要ないと思うのだけどダメですか?
吾輩、グレちゃうぞ!と言いたい。伝えたい。
プロモーション活動で企画されていた内容が順調に進みもうすぐ終了してホテルへ帰れるのかと思っていたら、まさかのビックリ企画が用意されていた。
「さあ、皆様お待ちかね。貴公子じょにーの握手会です。先着100名様には整理券をお配りしております。慌てずにお並び下さい」
司会役の人が意味不明な事を言っている。吾輩の握手会?なぜ?チャッピーじゃないの?
吾輩は両手を頬に当て「うひょー」と心の中で叫んだ。
吾輩の握手会が始まると全員女性だった。若い女の子からおばあちゃんのような人まで年齢は様々であったが一様に皆が満面の笑みを浮かべ喜んでいた。たかが吾輩との握手で喜べるなんてビックリである。吾輩はただの猫である。何が珍しいのか全く分からない。
100人との握手会が終わるとようやく帰路につけた。
吾輩はもうぐったりである。らいでんにお役目を変わって欲しい。
叶わぬ願いが叶って欲しい。
ホテルの部屋へ戻ると吾輩の食事がとても豪勢であった。
どうやら握手会に参加した女性たちが吾輩に色々と贈り物をくれたらしい。
先程までの吾輩は人気が出ることに乗り気ではなかったのだが、色々と贈り物が貰え、豪勢な食事にありつけるなら悪いことではないのかもしれないと考えを改めた。
今日の吾輩はとても疲れたので豪勢な食事をヤケ食いしてやる。と思うのであった。




