33 思いつき
俺はじょにーの飼い主で名は、ハル。
大学を卒業してからこの研究所に務めている。
此処にはロボット工学を専門に研究している者が多い。
研究以外の仕事として、主に企業からの依頼で生産工場で使われる機械の設計、試作を行う事が多い。国内だけでなく海外からの依頼も少なくない。
研究所には住込み状態であるが、生活をする為の施設が充実しているおかげで困る事が殆どない。
各自が自己責任でペットを飼育する事も許されている。このような環境は国内ではとても稀であると思う。本当にこの研究所はとても贅沢な環境だ。
普段は依頼された仕事を数人でチームを作り対応している。
チームで一緒になった同僚達との会話で何気なく思いつきで作り始めた自律型の猫型ロボット。
趣味的要素が強かったが、同僚達に協力してもらい改良を加えた試作型が、予想以上の性能を見せてくれた。
猫型ロボットで得られた情報を元に小型化させた自律型のねずみ型ロボットを作ったが、耐久性に問題があった。
納得が出来る程度の強度を持たせる事が出来たねずみ型ロボットが、最初に販売する事になった時には少し驚いたが、今後の楽しみが増えた。
販売する事が決まってから直ぐに研究所内のメンバーで正式なプロジェクトチームが発足した。
リーダーには俺が指名され、チームメンバーは開発に協力してくれた同僚達が選ばれた。
そのメンバーには恋人のユイも入っていた。
彼女の発想で着せ替えが出来るように、毛皮の外皮を脱着式にした。元々は猫型ロボット用の案であったが、ねずみ型ロボットにも応用は可能で、汚れ対策にもなり衛生的で好評であった。
結果的にカラフルなバリエーションも好印象で、最初の販売がねずみ型ロボットとなり、続けて猫型ロボットの販売となることがスムーズに決まった。
思いつきで始めた事が意外にも高評価で販売に至るとは、本当に驚きである。
ユイも今がとても楽しいようで何よりである。
近い将来2人の今後の事を真剣に考えなければならないとは思っているが、まずはねずみ型ロボットのチャッピーの販売と猫型ロボットのらいでん量産モデルの販売を成功させなければならない。
ここまでは予定通り順調に計画が進んでいる。むしろ順調過ぎると言えるだろう。
自律型の猫型ロボットを作ろうと思ったのもじょにーを飼っていた影響が大きいだろう。
じょにーと一緒に生活をするようになってから物事が上手く進んでいる気がする。
気のせいかもしれないが、じょにーが招き猫なら福を沢山運んで来てくれているのかもしれない。
以前から親交のある大手企業の会長の奥様からじょにーを譲り受けたが、今度、チャッピーを数体持参して挨拶に伺った方が良いだろう。じょにーに父親と母親、それから兄弟にも会わせてあげた方が恩返しにもなるかもしれない。
チャッピーの販売とらいでん量産モデルが販売されれば、プロモーション活動でじょにーが世間の注目を多少は受ける事になるだろう。じょにーの知名度が上がってから里帰りをするのも良いかもしれない。
多分、母さんが張り切ってじょにーの衣装を作るだろう。最近は、じょにーへの束縛がエスカレートしているから少し危険かもしれないけど、いくつかの衣装があったほうがインパクトはあるだろう。じょにーを守るのも俺の仕事のうちなのかもしれないな。
今後どうなるのかは正直分からない。今はただ、与えられたチャンスをものにしなければならない。
まずはチャッピーの販売を成功させる。次にらいでんの量産モデル。販売名をそろそろ決めないといけないな。これは優先順位が結構高いから早めに決断しなければ。
でも、ねずみ型ロボット・猫型ロボットと販売になれば、次はやはり小型犬サイズの犬型ロボットにも着手してみるのもありかもしれない。いやはや本当に忙しくなってきた。
そろそろ、じょにーの恋人探しもしてあげたいけど、忙しくて厳しいな。
いやー。考えると次から次へとやりたいことが増えてドツボにハマりそうだ。
きちんと優先順位をつけ直して、計画的に行動しなければ周りに迷惑をかけてしまう。
気をつけなければ。
何気にふっとじょにーを見ると「何やってんだよー」と思われている表情に見えた。
俺の心が直観的にそう思わせた。
もしかして今の俺、結構重症なのか?
『 がんばれ、俺 』
自分で自分を励ます事しかできなかった。




