32 チャッピーのプロモーション撮影
吾輩は現在、車の中で移動中である。
車には主の他にユイちゃんとらいでんが一緒に同行している。
今回チャッピーの販売用プロモーション撮影は、制作会社のスタジオで行われることになっているらしい。
撮影は明日の朝から行われる為、前日の今日はホテルに泊まり準備するようだ。
研究所から目的地には車で5時間ほどかかるらしい。吾輩にとってはとても長い拘束時間だ。
主とユイちゃんはとても仲が良い。2人は恋人なのかは吾輩は知らないが、多分恋人なのだろう。
吾輩も男なのでそろそろ女の子とイチャイチャしてみたいのである。
吾輩のモフモフした胸で抱きしめてあげたいのである。
吾輩にもいつか春は来るのだろうか?
らいでんがずっと吾輩をガン見しているが、吾輩が今考えていたことを知られたくなかったので寝ているふりをする事にした。
「じょにー。ようやく着いたよ。部屋まではもう少しだから我慢してね」
ホテルに着いて部屋に入るとようやく吾輩専用のかごから出してもらえた。
主に教えてもらったのだが、一般的なホテルは吾輩のようなペットが同伴できないらしい。このホテルではそれが許されているらしい。
吾輩は体全身のコリをほぐすために伸びの運動をしてから部屋の中を散歩する事にした。
この部屋の作りはとても大きく、大人がゆったり座れそうなソファーがローテーブルを挟んで対に2台置かれている。
隣には扉のない部屋に大きなベットがある。
「じょにー。今日はずっと一緒だからよろしくね」
ユイちゃんは吾輩を抱き上げ頬ずりすると直ぐに自由にしてくれた。
どうやら主とユイちゃんは同じ部屋のようだ。
主とユイちゃんはソファーに座ると書類を確認しながら明日の打ち合わせを始めたようだ。
しばらくすると20体近くのMR3を箱から出した。
今回のMR3はカラフルらいでんと同じように色とりどり毛皮の衣装があるようだ。
テレビで見たことのあるモッキーマウスのキャラクターと同様のデザインと思われる衣装を着たものもいる。
同じ色、同じデザインのものはここにはいない。
しかし、いま主が手に持っているMR3は素の状態で毛皮は身に着けていなかった。何も身に着けていない時はらいでんと同じように銀色の毛がないツルツルであった。
どうやら着せ替えが出来る用にしてあるらしい。
吾輩は2人を観察する事に飽きたので、窓際から外を見ることにした。
吾輩がいる部屋は建物の高い位置にあるようで遠いところまでよく見える。
遥か遠くには山が見える。山頂の方には雪が積もっているようだ。
近くの方には周りよりも一段と高い塔の様なものも見える。そして、建物の下の方を見ると人が米粒のように小さい。吾輩の一口で沢山の人々を食べてしまいそうである。
本当にここから見る景色はとても見晴らしが良く見ていると楽しく、とても不思議な感じである。
長い時間見続けていたのだろう。辺りは段々と暗くなっていった。
主が用意してくれたご飯を食べてからも飽きずに窓際で外を眺めていた。
夜になると建物の様々な光や街灯や車のライトなどとても綺麗に見える。空を飛んでいる飛行機もライトが点滅しており面白い。
吾輩にとっては普段とは全く違う状況がとても楽しく、時間があっという間に過ぎていった。
気づけば朝になっていた。
「おはよう。じょにー」
ユイちゃんは、まだ眠そうな顔で吾輩に挨拶をしてきた。吾輩は出来る男である。
「にゃー」
挨拶を返しておく。
しばらくしてから主も起きたようである。
主が朝ごはんを用意してくれたので、ご飯を食べてから少し寝ることにした。
「じょにー。仕度が出来たから出掛けるよ」
2人は出掛ける用意が出来たようで、吾輩は専用カゴに入り移動することとなった。
車で30分位の移動で目的地に着いた。
「ようこそお越し下さいました。撮影スタジオにご案内致します」
「よろしくお願いします」
主とユイちゃんは案内人の後に続いて歩き始めた。
この建物には撮影用に大小様々なスタジオと呼ばれる部屋が多くある。
利用するスタジオに着いたのか、案内人が扉を開き中へ入るように2人に促す。
主とユイちゃんが入ったスタジオは、研究所の多目的ルームよりも大きいが、この建物では中間位の大きさであるらしい。
スタジオには撮影用の大きなビデオカメラが数台置かれており他にも撮影に必要な機材が多く置かれている。
主とユイちゃんは、担当者らしき人達と打ち合わせを始めた。
しばらくすると昨日ホテルで確認していた20体近くのMR3を箱から出して撮影の準備を始めた。
「さあ、チャッピーの撮影開始だ!」
最初は毛皮を着けていない素のMR3だけの撮影をするようだ。
その後、色とりどりのMR3が置かれ、撮影が続いている。
「じょにー。もうすぐ出番だからね」
「ユイ。じょにーにこれを着せて」
「分かった。じょにー少し我慢してね」
吾輩はなぜかユイちゃんに衣装を着せられた。この衣装はママさんが大興奮していた豪華な衣装であった。何故か吾輩をアンドレと呼ぶ。
「うゎー。じょにーかっこいいよ」
ユイちゃんが吾輩を見てニコニコしている。
「いよいよ、じょにーの出番だよ。チャッピーを追いかけて豪快に弾き飛ばしてきて」
吾輩はユイちゃんにスタジオの真ん中に降ろされた。辺りが一瞬暗くなり、すぐにカラフルな光が吾輩を照らす。
『 ニャンだ これは 』
吾輩はカラフルな光に驚いてしまった。驚きでしばらく動くことが出来なかった。
主の方を見ると何かを言っているようだった。
吾輩は主に言われたことを思い出した。
「MR3。商品名チャッピー。吾輩はじょにー。いざ、参る」
吾輩は少しだけ周りの状況を確認し、近くにいるチャッピーに狙いを定める。
猛ダッシュにて距離を詰める。そして吾輩の右手を一閃。
「必殺 猫スマッシュ!」
チャッピーが豪快に弾き飛んだ。そして、弾き飛んだ先にも別の色のチャッピーがおり激突後弾き飛んだ。
吾輩はこの瞬間思った。ただ弾き飛ばすだけではもったいない。弾き飛ばした先の数体をさらに弾き飛ばす。俄然やる気が出てきた。
周りの状況を観察しながら攻撃イメージをする。短い時間で状況を判断しなければならない。
「覚悟せよ。まとめて蹂躙するにゃ」
全てのチャッピーが吾輩から逃げていく。
「逃がさんぜよ」
吾輩は一度の猫スマッシュで3体・4体・5体と同時に蹴散らしていく。
現在の一度の攻撃で倒せる数の最高記録は5体である。
これ以上はスタジオも広いので、チャッピーが広範囲に逃げてしまうとまとめて処理するのは無理だろう。
「じょにー。もういいよ。おつかれ」
主が声を掛けてきた。そして、ユイちゃんが吾輩を抱き上げた。
「次は、らいでんの撮影があるからね。もうしばらく待ってね」
らいでんも同じようにチャッピーを追いかけ始めた。数体は弾き飛ばすことが出来たようだ。
「これで終了だね」
主とユイちゃんが担当者と少し話をした後、片付けをしてすぐにホテルへ戻ることになった。
チャッピーの販売用の撮影なのに、吾輩とらいでんに弾き飛ばされてばかりでいい所がないのに大丈夫なのだろうか?主とユイちゃんを見ていると何も問題はなさそうであるが、チャッピーは生まれながらにしてやられ役的なロポットなのかと思うと少しかわいそうであった。
でも、着せ替え用の衣装が沢山あり、吾輩達がいなければ平和に楽しめるなら問題はないのかもしれない。チャッピーは人気が出るのだろうか?吾輩には分からないが、折角だから人気が出ると良いな。吾輩も協力したから、少しくらいは社会的にブームになって欲しいな。
今日の吾輩はチャッピーの良き将来を願うのであった。




