3 主と吾輩
吾輩が気持ち良い昼寝から目覚めると主は何かを作っている最中であった。
吾輩はいつものように暫くの間、主の作業を観察していた。
「にゃー」
観察する事に飽きてしまったので主に何をしているのだと尋ねた。
すると主はニコニコしながら教えてくれた。
「今作っているのはじょにーの新アイテムだよ」
「これはじょにーの頭に被せて使う。ちょっと大きいけど非常に軽くなるように設計してあるよ。もう直ぐ完成するから楽しみに待っていてね」
吾輩は楽しみにしていないのだが、主はとても楽しそうである。
「コン、 コン」と誰かがドアをノックした。
主がドアを開くとそこには主の同僚である女性が立っていた。
「ハル君、頼まれていた物を持ってきたよ」
彼女は茶色い毛がフサフサした物を手に持っていた。
「ありがとう、ユイ。ちょうどよかった。もうすぐ完成するけど見る?」
「ええ、時間があるからお邪魔するね」
彼女は部屋に入り吾輩のいるソファーに腰を下ろした。
「こんにちは。じょにー」
「にゃー」
吾輩も彼女に挨拶をした。
彼女は優しく吾輩を撫で始めた。
彼女の手つきはまるでゴッドハンドの如く吾輩を快楽の世界へ誘う。吾輩の意識がどんどん遠のいていく。
「出来た!」
大きな声が室内に響いた。吾輩は驚いて意識を取り戻す。
主が何やら手に持って吾輩に近づく。そして、吾輩の頭に何かを被せた。
「どれどれー、わぁすごく可愛いー。とってもいい感じに出来てる」
「だろー。とてもいいね」
2人はとても満足そうであるが、吾輩はどうなっているのか分からなかった。
「じょにー。鏡を見てごらん」
主は吾輩の前に手鏡を持ってきた。
「にゃ!!」
吾輩は先程の一瞬でライオンに転生したようだ。
しかしよく鏡を見てみると、ライオンの口の中に吾輩の顔がある。吾輩はライオンに食べられてしまったのだろうか?
しばらく考えていると吾輩の目の前が突然真っ暗になった。
訳が分からなくなり、頭を上下に振ってみた。すると目の前が明るくなった。
「ごめんじょにー。驚かせてしまったね。今、口が動作するか確かめてみたんだ」
主は戸惑った様子の吾輩を見て言葉を続けた。
「まずはアイテムの説明だね。じょにーはライオンの被り物をしている。これはある事をすると口が開閉するようになっている。ちょっとした噛みつき攻撃が出来るようになっているよ。でも牙の部分は柔らかい材質にしているから噛みついた相手が怪我をすることはないよ」
どうやら吾輩はライオンの被り物をしており、口の部分が動くようだ。
吾輩がライオンに転生した訳でもなく食べられた訳でもなく、とりあえずは一安心である。
「さて、口の部分を動作させる為には頭を縦に振る事で口が開閉するよ。口が閉じた状態でも暫くすると自動的に口が開くよ。『にゃおー』というと・・・」
突然、吾輩の目の前がまた暗くなった。どうやら口が閉じたらしい。吾輩は頭は縦に振る。すると口が開き目の前が明るくなった。
「はははは。ごめんじょにー。さっきの言葉でも口が動作するよ。特定の言葉で動作するように音声のセンサーを取り付けているからね」
「ジョニー。雄叫びをあげてみて」
吾輩は彼女からの要望に応えるべく。
「にゃ にゃおー!!」
吾輩は暗闇にとらわれた。しかし、すぐさま頭を振り、暗闇から脱出する。
「すごいすごい!」
彼女は手を叩いて喜んでいた。主は盛大に笑っていた。
吾輩の気持ちは複雑であった。
このアイテムは吾輩としては微妙だった。今の吾輩は頭がとても大きい状態である。
この状態では、吾輩が使っている扉の出入り口は多分通ることが出来ないだろう。
まぁ、この新アイテム29号はお蔵入りだな。
今はもうしばらく2人が喜んでいる姿を見ていることにしたじょにーであった。
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