1.モブ、転生する。
以前短編として投稿したものを連載作品としていくつか修正を加えて再投稿しました。
俺、田中太郎(享年18)はずっと正真正銘本物のモブ
だった。身長170.5cm 体重61.8kg 家族構成は父、母、俺とポチ(猫)の4人。趣味は読書で、特技は口笛。親友と呼べるような距離感の友達はいない。かといって友達がいない訳でもなく、日常的な会話をする友人はいる。昼休みの昼食は多くても3人としか一緒に食べたことがないが。学校でも授業中の目立ちたがり屋の発言で微笑む程度の立ち位置だった。
別に俺はそんな自分に満足していたし、それ以上も望んでいなかった。でも今この瞬間、目の前にいる羽が生えた女の人を見て少し期待をしてしまった。
転生ってやつを
「あなたは死にました。157680時間25分25秒の人生が幕を閉じたのです。縁起がいいですね、端数が”ニコニコ”です。」
目の前の羽が生え頭に光輪がついている天使の様な見た目をした女は口ではそう言いつつも顔はニコニコとはかけ離れた冷ややかな目をしていた。
「俺、やっぱり死んだんですか!?家族は!?俺、どうなるんですか!?てか、ここどこですか!?」
咄嗟に自分が考えていたこと全部を吐いてみたが、我ながらいかにも死ぬのが初めてのモブが吐くようなセリフを吐いてしまった。死ぬのが初めてじゃないモブなんているのだろうか。
慌てふためく俺を無視し、天使?は手に持った巻物のようなものを読み上げる。
「とりあえずあなたのこれまでの人生を振り返らせていただきます。田中太郎18歳男、生まれは埼玉で育ちも埼玉…典型的な田舎者ですね。」
なんてことを言うんだ。今すぐ全埼玉県民に土下座しろ。と言いたかったが、俺は愛想笑いしかできなかった。情けない。
「それにしてもつまらない人生ですねぇ…なんで小中高合わせて友達が累計7人しかいないんですか?それに好きだった異性10人て笑。アイドルグループの箱推しでもしてました?笑」
「仕方ないでしょう!?俺は話しかけられたり目が合っただけで好きになっちゃうタイプのピュアボーイなんです!」
「…………」
…そっちから話をふってきたのに無視はないだろう。
そこから数分間、この嫌味ったらしい言い回しをする天使が俺の人生を嫌味ったらしく振り返っていった。
「さて、あなたの人生を全て見せてもらいましたが、総括するとモブですね。モブ未満かもしれません。」
人生の振り返りが終わった。天使は俺のモブモブしい人生を退屈そうに読み、ことある事に嫌味を吐いてきた。しかし自分で自分のことをモブだと思ってなかった訳では無いが、他人から改めて言われるととても心にくる。もっと優しい言い方をしてくれ。盛り上げ役とか、縁の下の力持ちとか。
「さて、なにか質問はありますか?」
俺が死にたての時にした質問が無視されていたことは一旦置いておき、俺はずっと気になっていたことを聞く。
「俺が死んだということは、やっぱりここは天国なんですk「そんな自惚れまくった勘違いはやめてください。」
言い切っていないのに否定された。これまでの人生で俺の発言が他の人に遮られたことは何度もあったが、ここまで心にきたのは久しぶりだった。
「天国や地獄といったところは死後の世界にはありません。どんな善人も悪人もみな等しくこの場所に訪れ、転生後の人生、異世界での第2の人生に向けての計画を練ります。先程のように人生を振り返り、その行いを評価して、私たち天使はどのようなスキルや恩恵を与え、転生させるかを決めます。まあ例え天国や地獄のようなものがあったとしても、あなたのようなモブでそんなモブな自分を肯定してるような心の底からのモブでモブなあなたの行くところはせいぜいゴ…泣いてます?」
俺があまりにも深くうつむくので天使は俺が泣いていると勘違いしたらしい。泣いてなんかいない。ストレートネックなだけだ。だが天使に言われ自分でも自分に腹が立ってきた。どうして今まで俺は自分がモブであることに疑問を持たず、モブであることを認めてモブとして生きてきたのだろう。俺が勇気を出せば友達も100人作れて、100人でご飯を食べたりすることもできたはずだ。俺が好きになった10人のうち誰かに告白していれば、彼女もできていたかもしれない。俺だって美少女黒髪ストレートお兄ちゃん大好きっ子な妹が欲しかった。難解な言葉遣いをして美人委員長やツンデレ幼なじみに囲まれやれやれ…ムーブをしたかった。
この思いにもう少しでも早く気づけていれば。残念、無念また来年。
と今までのモブい俺だったら思っていただろう。
今、俺は人生をやり直すチャンスを持っている。俺はさながら主人公のように天使に指を突きつけて叫ぶ。
「あんた言ったよな!どんな善人も悪人もみな等しくこの場所に訪れ、転生後の人生、異世界での第2の人生に向けての計画を練る。そしてその後、スキルや恩恵を付与し転生させる。ならば俺にもあるはずだ。第2の人生を歩む権利が。それにこれまでの人生とは違う主人公らしい、輝かしい無双転生ライフを歩む権利が!!!!!」
俺はそんな熱い想いを胸に勢いのまま両手を思い切り掲げ、人生(?)一大きな声で叫んだ。
「俺を今までの俺とは違う新しい俺として異世界に
転生させてくれぇええええええ「では今のあなたにステータス+勇気3を付与し転生させますね。」えええええええええええ!!!…………え?」
勇気+3?聞き返そうとした瞬間体が光に包まれていく。転生が始まったらしい。俺は必死に叫ぶ。
「お、恩恵ってそれだけ!?チートスキルとか、
最強ステータスとかは!?!?」
「あなたのさっきの熱弁が癪に触ったのでダメです。これまでと同じように、モブらしくモブ生を生きてもらいます。なにかしら恩恵を与えないと転生させられないので、適当に選んだ勇気+3を付与しました。」
そんな理不尽な。こいつの好き嫌いだけで俺の第2の人生の命運が決められてしまってたまるか。俺が天使につかみかかろうとした途端、意識が遠のく。
薄れゆく視界の中、あの毒舌嫌味性悪天使が俺に囁いた。
「では、いいモブ生を………」
俺は暖かいお湯の中で目を覚ました。といっても目は生まれたてであまり良く見えておらず、優しい光と黒色の輪郭がふたつ見えただけだった。どうやら無事(?)に転生は成功したらしい。だが俺は全く納得できていない。俺は暴れる。俺が手足をジタバタさせる度に、黒い輪郭たちはゆらゆらと動く。こいつらはなんなのだろうか。俺は転生していきなり何かに襲われているのだろうか。俺は抵抗しようとより激しく手足を動かす。これが精一杯だった。
「〜〜〜〜〜?〜〜〜〜〜!〜〜〜!」
俺が動く度大きい方の黒い輪郭が話しながら動く。外国語だろうか?1文字も聞き取れない。だが先程の女神の言葉のような悪意のようなものは感じられない。産まれたての俺を殺そうとしてこないところを見るに、どうやらこの黒い輪郭たちは俺の両親だろう。きっとこの大きい輪郭が父親で、隣の小柄な輪郭が母親なのだろう。俺はいつの間にか挨拶がわりに大泣きしていた。安心して泣いているのか、先程の天使からの仕打ちに対して泣いているのかは分からなかった。
とりあえず何か言葉を話そうと泣きやもうとしても泣きやめない。赤ちゃんとはそういうものなのだろうか。とりあえず今は、赤ちゃんらしく泣くこと以外できないらしい。不本意だが大人しく泣いていよう。
俺(18)の本気の号泣を見せてやる。ちょうど天使からの仕打ちに対して叫びたい気分だったし。
オンギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
読んでいただきありがとうございました。
次回の投稿も以前投稿した短編の後半を修正したものとなります。ご了承ください。




