エルフ村からの悲報
カズマが共存の街で束の間の平和を感じていた朝、一羽の伝書鳥が舞い降りた。小さな足に結び付けられた羊皮紙を開いた瞬間、カズマの血の気が引いた。
『カズマへ。村のみんなが王国軍に連れて行かれた。子供たちも、長老も、みんなだ。助けて—— エルフの村 生存者より』
「クソッ!」
カズマの拳が壁を叩く。リーフィアが心配そうに駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「村のみんなが人質に取られた」
リーフィアの顔が青ざめる。カズマが最初に世話になったエルフの村——彼女の故郷ではないが、同胞たちが危険にさらされている。
精霊女王ミュリエルの声が静かに響く。
「これは罠ね。あなたを誘い出すための」
「分かってる。でも、行かないわけにはいかない」
セルヴァンが風を纏って現れる。
「面白い。久しぶりに血が騒ぐな」
火の精霊イグニスが炎を散らしながら現れる。
「オレの炎で全部燃やし尽くしてやる!」
水の精霊アクエリアも美しい水の渦と共に姿を現す。
「清らかな心を持つ者たちを守らなければ」
王国からの通達
翌日、正式な使者が現れた。王国の制服に身を包んだ騎士が、巻物を広げて宣言する。
「王国の命により告ぐ。反逆者カズマは、三日後の正午、ルシアス平原の中央で投降せよ。同行者は主要人物のみとする。軍隊や大勢での出現は、人質の即座なる処刑を意味する」
騎士はそのまま馬に跨り、去っていく。
カズマは拳を握りしめる。
「主要人物のみ、か。つまり俺とリーフィア、そして精霊たちだけで来いってことだな」
「数万の兵士に囲まれる可能性があります」リーフィアが心配そうに言う。
「構わない。俺たちには古代魔法がある」
三日後の正午。ルシアス平原は見渡す限りの草原で、隠れる場所は一切ない。カズマ一行が指定された場所に到着すると、予想通り数万の王国兵士が円形に配置されていた。
平原の中央には簡素な処刑台が設置され、そこにエルフの村人たちが縄で縛られている。村長の老いた顔、子供たちの恐怖に満ちた表情、若い母親たちの泣き腫らした目——カズマの心に怒りが込み上げる。
「よく来たな、反逆者」
重厚な声と共に、三人の人影が処刑台の前に現れた。ミツル、ナギサ、そしてリュウヤ。一緒に異世界に召喚された元日本人たちだ。
ミツル「ふふ、やはり君はすごいよ。人質のために、こんな不利な状況でも現れるなんて」
彼の表情は狂気じみた笑みを浮かべている。正義への執着が彼を歪めていた。
ナギサ「お前に会いたくてたまらなかった!今度こそ決着をつけるギョ!」
リュウヤ「へへ、最高潮の興奮だぜ!今度は逃がさねえゲコ」
カズマは一歩前に出る。
「条件を飲んだ。俺たちはここにいる。村人たちを解放しろ」
ミツル「そうはいかない。君たちを確実に殺すまでは、保険が必要だからね」
「卑怯な真似を——」
「正義のためなら手段は選ばない!」ミツルが叫ぶ。「君は魔族の味方をした!人類の敵なんだ!」
カズマの古代魔法適性が、周囲の殺気を敏感に察知する。数万の兵士たちが一斉に武器を構えた瞬間を感じ取った。
「リーフィア!」
「分かってる!」
二人は背中合わせに立つ。精霊たちも戦闘態勢に入る。魔族女王ヴェルザも魔力を高めていく。
大規模戦闘の開始
「攻撃開始!」
ミツルの号令と共に、数万の兵士が一斉に襲いかかる。弓兵隊が空を覆うほどの矢の雨を降らせ、騎兵隊が四方から突撃してくる。歩兵たちは槍を構えて包囲網を狭めていく。
しかし、カズマは冷静だった。
「みんな、準備はいいか?」
「ああ!」
カズマが両手を天に掲げると、巨大な魔法陣が足元に現れる。これまで習得した古代魔法の力が集約されていく。
【大規模転移】
「消えろ!」
瞬間、平原を覆っていた数万の兵士が一瞬にして姿を消した。草原には風が吹き抜けるだけの静寂が戻る。
ミツル「な、なんだって?」
「全員、100キロ向こうの森に送ってやった」カズマが答える。「殺しはしない。だが、ここに戻ってくるには徒歩で三日はかかるだろう」
リュウヤ「ふざけんなゲコー!」
「黙れ」
カズマの声は静かだが、その中に込められた怒りは凄まじい。魔力還流マントが風に舞い、古代魔法の力が彼の周囲に渦巻く。
「お前たちの相手は俺たちだ」




