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第11章「共存の街と絆の深まり」

翌朝、女王がカズマに重要な話を切り出した。


「覚悟ができないのは無理もない。人間、ましてやこの世界のものではないのだからな」


「覚悟?」


「王国との戦争よ。あの召喚者たちの暴挙を見て、我々魔族の多くが人間との全面戦争を望んでいる」


カズマは息を呑んだ。戦争となれば、多くの無実の人々が犠牲になる。


「でも、その前に見てもらいたい場所がある」女王が続けた。「魔族領の端にある街がある。一度そこを訪ねてみるといい」


「どんな街なんですか?」


「自分の目で確かめなさい。お前なら、きっと何かを感じ取るはず」


女王は詳しく説明しようとしなかった。ただ、その目には希望の光が宿っているのをカズマは見逃さなかった。


## 共存の街への道


数日後、カズマとリーフィアは女王の指示に従い、魔族領の端にある街へ向かった。精霊たちも同行し、賑やかな旅となった。


半日の旅路を経て、一行はついに目的地に到着した。


## 理想郷との出会い


街の入り口で、カズマたちは息を呑んだ。そこには信じられない光景が広がっていた。


人間の商人がエルフの職人と笑顔で商談している。魔族の子供と人間の子供が一緒に遊んでいる。獣人の兵士と人間の兵士が肩を並べて警備に当たっている。


「これは…」


リーフィアが言葉を失う。


街の人々は、カズマたちを温かく迎えてくれた。人間の老人が近づいてくる。


「よそから来た方ですね。この街へようこそ」


「すみません、この街は一体…」


「ああ、驚かれるのも無理はない。ここは『共存の街ハーモニア』と呼ばれています。様々な種族が平和に暮らしているのですよ」


老人の説明によると、この街の住民たちは皆、それぞれの故郷で迫害を受けた者たちだった。人間でありながら異種族を庇った者、混血で両方の種族から疎まれた者、戦争の被害者たち。


「我々は皆、女王陛下に救われた身です。彼女がこの街を作ってくださったのです」


カズマは女王の深い愛情を感じ取った。表面上は冷たく振る舞っているが、彼女は誰よりも平和を願っているのだ。


街を歩いていると、様々な光景に出会った。


エルフの医師が魔族の患者を治療している診療所。人間の教師が異種族の子供たちに勉強を教えている学校。種族混合のカップルが営む料理店。


「パパ、あの人たちも新しい住民?」


人間と魔族のハーフらしい少女が、父親らしき獣人に尋ねている。


「そうだな。きっと我々と同じように、故郷を追われたのかもしれない」


獣人の男性は優しく娘の頭を撫でた。


「この街に来れば、みんな家族よ」


少女の言葉に、カズマの心は温かくなった。


夕方、街の中央広場で住民たちとの歓迎会が開かれた。各種族の料理が並び、音楽と笑い声が響く。


「乾杯!新しい仲間たちに!」


人間の青年が音頭を取ると、全ての種族が一斉にグラスを掲げた。


カズマは隣に座った魔族の老人と話し込んだ。


「私は元々、王国の貴族でした」老人が語る。「しかし、魔族の友人を庇ったために家族もろとも追放されたのです」


「辛い経験でしたね」


「いえ、今思えば良かったのです。あの頃の私は、本当の友情を知らなかった。ここに来て初めて、種族を超えた絆の尊さを学んだのです」


老人の言葉に、カズマは深く頷いた。


リーフィアもエルフの女性と意気投合していた。


「私も最初は人間を信じられませんでした。でも、カズマに出会って…」


「分かります。愛は全ての境界を越えますから」


エルフ女性の言葉に、リーフィアは赤面した。



精霊たちの感動


精霊たちも街の雰囲気に感動していた。


「これが本当の調和だ」セルヴァンが呟く。「何百年も夢見ていた世界がここにある」


「みんなの心が、清らかな水のように美しい」アクエリアが涙を浮かべる。


「オレも燃え上がってきたぜ!こんな街を守るためなら、何でもしてやる」イグニスが拳を握りしめた。



夜の決意


その夜、宿で休んでいるとき、カズマはリーフィアに心境を語った。


「ここが、オレたちが目指すべき世界なんだ」


「ええ。でも、まだ一つの街に過ぎない。この輪を広げるには…」


「戦争じゃダメだ。憎しみからは憎しみしか生まれない」


カズマは窓の外を見つめた。星空の下で、異種族の夫婦が手を繋いで歩いている。


「オレは、この街のような平和を世界中に広めたい。そのために、王国の召喚者たちと向き合わなければならない」


リーフィアがカズマの手を握った。


「私も一緒よ。一人で背負う必要はない」


「ありがとう、リーフィア」


二人は静かに夜を過ごした。明日からは、より困難な戦いが待っているかもしれない。しかし、希望の街を見た今、もう迷いはなかった。


翌朝、街の人々が見送りに集まった。


「また必ず戻ってきてください」


「この街を忘れずに」


「平和のために戦ってくださいね」


温かい言葉に包まれて、カズマとリーフィアは街を後にした。心に新たな希望を抱いて。


精霊たちも決意を新たにしていた。


「カズマよ、お前の理想を支持する」セルヴァンが宣言した。


「清らかな心で、世界を洗い流しましょう」アクエリアが微笑む。


「全部燃やし尽くして、新しい世界を作ってやる!」イグニスが雄叫びを上げた。


一行は魔王城へと向かった。女王に報告し、これからの戦いについて話し合うために。


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