カズマ対ナギサの決着
ナギサは影の拘束から逃れようと必死にもがいていた。
「離しなさい!私は選ばれた聖女よ!」
「聖女?」カズマの声は氷のように冷たかった。「子供を殺そうとした奴が聖女だって?」
カズマは【封雷結界】を発動。雷の結界がナギサを包み込み、動きを完全に封じた。
「う、動けない…」
「君は最初から演技だったんだな」カズマは悲しそうに言った。「本当の君は、こんなに醜い心の持ち主だった」
「違う!私は被害者よ!」ナギサは涙を流しながら叫んだ。「元の世界では誰も私を見てくれなかった!この世界でやっと認められたのに!」
「だからって無関係な人を殺していい理由にはならない」
カズマは【氷結侵食】を発動。ナギサの体内に氷の結晶を生成し、内部から凍結させ始めた。
「ひっ…冷たい…」
「これで終わりだ」
ナギサは意識を失い、戦闘不能になった。
リュウヤの最後の抵抗
リュウヤは膝をつきながらも、まだ戦意を燃やしていた。
「まだだ…まだ終わってねえ!」
彼は【殺戮の悦び】を発動。周囲の死体から生命エネルギーを吸収し、傷を回復させ始めた。
「気持ち悪い能力ね」リーフィアが眉をひそめた。
「だが、これで終わりだ」カズマが前に出た。
彼は【重力制御】を発動。リュウヤの周囲の重力を10倍に増大させた。
「ぐあああああ!」
リュウヤの体が地面に押し付けられる。骨が軋む音が聞こえた。
「重い…動けねえ…」
「もう諦めろ。お前たちの負けだ」
カズマは【空間断絶斬】を発動。空間を切り裂く斬撃がリュウヤに向かった。しかし直前で軌道をずらし、彼の武器だけを真っ二つにした。
「次は体を切る。抵抗をやめて降伏しろ」
リュウヤは完全に戦意を失い、地面に倒れ込んだ。
戦後の慚愧
戦いが終わった後、カズマは魔族の死体の山を見て愕然とした。数百もの命が理不尽に奪われていた。
カズマは倒れておるナギサとリュウヤにとどめを刺そうとするが…
「ダメだ…やっぱり殺せねえ…」
ナギサとリュウヤを見下ろした。二人は意識を失って横たわっている。
「クソッ!なんでお前らは同じ日本人なのに、こんなに冷酷に命を奪えるんだ!」
カズマの拳が震えていた。怒りと悲しみで胸が張り裂けそうだった。
「カズマ…」リーフィアが彼の肩に手を置いた。
「分からないんだ。同じ世界で生まれ育ったのに、なんでこんなに違うんだ…」
女王ヴェルザがゆっくりと近づいてきた。
「お前は優しすぎる。だが、それが強さでもある」
「女王様…」
「この二人をどうする?」
カズマは長い間考え込んだ。そして決意を固めて言った。
「人質にしよう。王国に獣人王を返してもらうための交渉材料にする」
魔王城の牢獄で、ナギサとリュウヤは鉄格子の中に閉じ込められていた。二人とも意識を回復していたが、力を封じる魔法の鎖に縛られていた。
「なんで私達がこんな目に…」ナギサがすすり泣いた。
「クソ野郎…絶対に復讐してやる…」リュウヤが歯を食いしばった。
カズマは牢獄の前に立った。ナギサとリュウヤが彼を睨みつける。
「お前ら、しばらくここにいてもらう。王国との交渉が済むまでの間だ」
「ふざけるな!私達は英雄よ!」ナギサが叫んだ。
「牢獄だ? ふざけるな! 俺達は選ばれた存在なんだぞ! この力は神に与えられたスキルだ! 神が悪にスキルを渡すか? 俺達が正義だろ!」リュウヤが激高して叫んだ。
「そうだよ! 魔族なんてバケモンじゃん! 獣人なんてモンスターじゃん! 倒すべき存在なんだよ! 敵を倒すためにスキル与えられたんじゃん!」ナギサも続けて叫んだ。
その言葉を聞いて、ヴェルザが悔しそうに拳を握りしめた。魔族である彼女にとって、その差別的な言葉は深く心に刺さった。
カズマは小さく言った。「バケモノか…」そして手を掲げ、新たなスキルを発動した。
【形態変化強制】
光がナギサとリュウヤを包み込んだ。
「な、何これ!?」
光が収まると、そこには変わり果てた二人の姿があった。リュウヤは緑色のガマガエルのような外見になっており、ナギサは半魚人のような姿になっていた。
「うわああああ!なんだこれ!?ゲコ」
「きゃあああああ!私の美しい顔が!ギョ」
「少しはマシな面になったな」カズマはため息混じりにに言った。
「元に戻せ!ゲコ」
「お願い!元に戻して!ギョ」
「反省が見られるまでは無理だね」
カズマは背を向けて立ち去った。牢獄に二人の絶望の叫び声が響いた。
治療活動の開始
翌日、カズマとリーフィアは襲撃を受けた魔族の村で治療活動を行っていた。
カズマは【水流操作】で傷の治癒を行い、リーフィアは【浄化の水流】で毒素を中和していた。精霊たちも協力し、アクエリアが清浄な水を供給し、イグニスが【紅蓮爆炎】で傷口を焼灼して止血を行った。
「ありがとうございます…」
重傷を負った魔族の老人がカズマに頭を下げた。
「いえ、当然のことです。申し訳ありませんでした、同じ人間として」
「あなたは違います。あなたは優しい心を持っておられる」
魔族の子供たちがカズマの周りに集まってきた。最初は怖がっていたが、治療を受けるうちに懐くようになった。
「お兄ちゃん、痛くない!」
「すごい魔法だね!」
カズマは微笑んだ。この瞬間のために戦ってきたのだと実感した。
女王ヴェルザが彼の隣に立った。
「お前のような人間もいるのに…なぜ同じ種族でこんなにも違うのだろうな」
「俺にも分からない。でも、だからこそ諦めたくないんです」
女王は複雑な表情でカズマを見つめた。そして、ふと頬に軽く口づけした。
「えっ!?」
リーフィアが慌てて駆け寄ってきた。
「ちょっと女王様!何してるのよ!」
「礼だ。深い意味はない」ヴェルザは微笑んだ。「…たぶんな」
カズマは赤面し、リーフィアはぷんぷん怒った。その様子を見て、魔族の子供たちが笑い声を上げた。
久しぶりにこの場所に笑顔が戻った瞬間だった。
人質交換の実現
数日後、王国との人質交換が行われることになった。交換場所は中立地帯である大草原。
王国側からは騎士団長ガイウスが来訪し、魔族側からは女王ヴェルザとカズマが参加した。
「獣人王と引き換えに、召喚者二名を返していただく」
ガイウスは公的な口調で言ったが、その表情は複雑だった。彼は軍人として命令に従っているが、内心では疑問を感じているようだった。
「条件を呑もう」ヴェルザが答えた。
人質交換は滞りなく行われた。獣人王ガル・バオが解放され、ナギサとリュウヤ(ガマガエル人間と半魚人の姿のまま)が王国に引き渡された。
「助かった」獣人王がカズマに頭を下げた。「礼をしたい」
彼は特別な装備をカズマに贈った。
【魔力還流マント】
「ただし、魔力を半端なく消費する。常人は数分で魔力が枯渇するだろう。まあ、とてつもない魔力を持ったお前なら問題ないと思うが」
カズマはマントを身に着けた。魔力の流れが変化し、より大規模な魔法が使えるようになったことを実感した。
王国の一行が立ち去る際、ガイウスが振り返った。
「もしかしたら…あなた方が正しいのかもしれません」
小さくそうつぶやいて、彼らは去っていった。




