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捕獲と撤退

王の降伏により、獣人国の抵抗は完全に終息した。


「王を拘束しろ。人質としての価値がある」


ミツルの命令で、王国兵たちが特製の拘束具で王を縛り上げる。その拘束具には魔力を封じる効果があり、どんな強者でも脱出は不可能だった。


「くそ…まさかカズマ以外の人間に敗れるとは」


王は屈辱に歯を食いしばったが、もはや抵抗する力は残っていない。


城の中庭に、捕らえられた獣人たちが集められていた。しかし、ミツルの指示は意外なものだった。


「反抗する獣人どもは容赦なく殺せ。従順な者だけ解放しろ」


「し、しかし…」


「命令だ。無駄な殺生はしない」


この言葉に、獣人たちは驚いた表情を見せる。王国軍が虐殺を行わなかったのは、珍しいことだった。


「なぜ…なぜこんなことを」


獣人の戦士の一人が震え声で尋ねる。


「効率的だからだ」ミツルが冷然と振り返る。「王さえ確保できれば十分。お前たちに価値はない。ただし、今後王国に刃向かえば全て殺す」


王国軍は王を連れて、夜明けとともに撤退を開始した。


獣人国の城には、恐怖に震える獣人たちだけが残された。彼らの王が奪い去られ、仲間が無慈悲に殺されたのだ。


ミツルは馬上で振り返ることなく城を後にした。しかし、彼の心の中では、まだカズマという名前が重くのしかかっていた。勝利を得ても消えない、あの男への複雑な感情を抱えながら。



カズマの感知


その頃、カズマたちは獣人国から数十キロ離れた森で野営をしていた。


焚き火を囲んで夕食を取りながら、平和な時間を過ごしていたが、突然カズマが空を見上げた。


「何か…嫌な予感がする」


「どうしたの?」リーフィアが心配そうに尋ねる。


「分からないけど…なんだか胸騒ぎが」


セルヴァンが眉をひそめる。


「風の精霊たちが騒がしい。何か良くないことが起きているようだな」


アクエリアも不安そうに呟く。


「水の流れが乱れています。遠くで争いがありました」


イグニスが炎を見つめながら言う。


「戦いの臭いがするぜ。しかも、大規模な」


カズマは立ち上がって、獣人国の方角を見つめた。


「まさか…王国軍が?」


「確認しに行きましょう」リーフィアが提案する。


「でも、もし王国軍がまだいたら危険だ」


「だからといって、見捨てることはできません」


カズマは迷った。確かに危険だが、もし獣人国に何かあったなら、見過ごすわけにはいかない。


「分かった。様子を見に行こう。ただし、慎重にだ」


五人は急いで獣人国へ向かった。




後の祭り


獣人国の城に到着した時、すべては終わった後だった。


城門は破壊され、城壁には戦いの跡が生々しく残っている。しかし、不思議なことに死体はほとんど見当たらない。


「これは…」


城内に入ると、獣人の戦士たちが傷の手当てをしている光景が見えた。みな生きているが、深い絶望に支配されているのが分かった。


「何が起きたんだ?」


カズマが負傷した獣人戦士に尋ねる。


「人間…まさか王国の回し者か?」


戦士が警戒するが、カズマの表情を見て考え直した。


「いや、違うな。お前は武道会にいた…」


「王に何があったんだ?」


「王様は…王様は連れ去られた」戦士の声が震える。「王国の召喚者にやられたんだ。あまりにも強くて…」


カズマの顔が青くなった。


「召喚者?まさか…」


「白い鎧を着た若い男だった。光の剣を使って…」


カズマには分かった。それはミツルだ。


「くそ!」


カズマは拳を強く握りしめた。自分がここにいれば、王を守れたかもしれない。そんな後悔が胸を突く。


「王様はどこに連れて行かれたんだ?」


「王国の首都だろう。人質として使うつもりだ」


リーフィアがカズマの肩に手を置く。


「あなたが悪いわけじゃない」


「でも…」


「今できることを考えましょう」


セルヴァンが前に出る。


「王を救出する方法を考えようではないか」


アクエリアも頷く。


「みんなで力を合わせれば、きっと何か方法があります」


イグニスが炎を燃やし上げる。


「やってやろうぜ!王国なんかに負けるかよ!」


獣人の戦士たちも立ち上がった。


「そうだ。王様を見捨てるわけにはいかない」


「でも、どうやって?王国は強大すぎる」


カズマが考え込む。確かに、正面から王国に挑むのは無謀だ。しかし、このまま手をこまねいているわけにもいかない。


「必ず、王を助け出す」


カズマの決意を込めた言葉に、その場にいた全員が頷いた。


新たな戦いが始まろうとしていた。


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