第9章「王国の侵攻と獣人王の捕獲」
ミツルの夜襲計画
その夜、王国の軍営では緊急作戦会議が開かれていた。
大きな天幕の中央に地図が広げられ、その周囲を王国の将軍たちと、そして回復したミツルが囲んでいる。彼の表情は昨日までの迷いを捨て去り、冷徹な決意に満ちていた。
「獣人国は今、武道会の疲労で守りが手薄になっている」将軍の一人が地図上の獣人国を指差した。「今こそ電撃作戦を仕掛ける絶好の機会です」
「ナギサとリュウヤはまだ治療中なのか?」ミツルが静かに尋ねる。
「はい。あの時の傷が思った以上に深く…完全回復まであと数日はかかるでしょう」
ミツルは小さくため息をついた。あの戦いでカズマに敗北した屈辱は、まだ胸の奥で燃え続けている。
「構わない。僕一人でも十分だ」
彼の声には絶対的な自信が込められていた。龍神の血の影響で、彼の力は以前とは比較にならないほど向上している。
「ミツル様、やはり危険では…」
「獣人どもに正義の鉄槌を下すのに、危険も何もない」ミツルの目が冷たく光る。「それに、あの裏切り者カズマがまだ近くにいるかもしれない。今度こそ、必ず始末してやる」
地図上の獣人国の城を見つめながら、ミツルは拳を強く握りしめた。心の中で、あの日の屈辱が何度も蘇る。
(僕は選ばれた存在なんだ。正義の執行者なんだ。なのに、なぜあいつは僕の邪魔をする?なぜ魔族なんかの味方をする?)
「夜襲を開始する。月が雲に隠れる深夜二時、全軍で獣人国の城を包囲せよ」
ミツルの命令に、将軍たちが一斉に敬礼した。
深夜の奇襲
深夜二時。月が厚い雲に隠れ、獣人国の城は静寂に包まれていた。
城壁の見張り台では、獣人の衛兵が眠気と戦いながら警備についている。武道会の興奮と疲労で、いつもより警戒が緩んでいるのは事実だった。
「ふわあ…今夜は静かだな」
衛兵がそう呟いた瞬間、空気が変わった。
遠くから、かすかな足音が聞こえてくる。最初は風の音かと思ったが、だんだんとはっきりしてきた。それは大軍が移動する音だった。
「な、何だ?」
衛兵が双眼鏡で遠方を覗こうとした瞬間、空から眩い光の槍が降り注いだ。
「【審判の光】!」
ミツルの声が夜空に響く。光の槍は正確に見張り台を貫き、衛兵を一瞬で戦闘不能にした。
「敵襲だ!敵襲ー!」
城内に警鐘が鳴り響くが、すでに遅かった。王国軍の精鋭部隊が城壁を越え、四方八方から侵入してくる。
城の正門では、ミツルが一人で立ちはだかっていた。厚い鉄の扉も、彼にとっては紙同然だ。
「【聖剣召喚】」
光の剣が彼の手に現れ、その輝きで周囲が昼間のように明るくなる。一振りで城門が粉砕され、王国兵たちが雪崩のように侵入した。
「獣人どもを一匹残らず捕らえろ!抵抗する者は殺して構わん!」
ミツルの冷酷な命令に、兵士たちが応えた。
城内では、突然の襲撃に混乱した獣人たちが慌てて武器を取っていた。
「王様を守れ!」
「侵入者を城から叩き出せ!」
しかし、王国軍の装備と戦術は獣人国を圧倒していた。魔法による遠距離攻撃、統制の取れた集団戦法、そして何より、ミツルの圧倒的な力。
城の中庭では、獣人の精鋭戦士たちがミツルに立ち向かっていた。
「人間め!我が国になんの用だ!」
熊の獣人が巨大な戦斧を振り下ろすが、ミツルはそれを軽々と受け止めた。
「用?正義の執行に理由など不要だ」
ミツルの聖剣が閃く。光の刃が熊獣人の胸を貫き、彼は倒れ伏した。
「つ、強い…」
狼の獣人が震え声で呟く。しかし、仲間のために戦わなければならない。彼らは一斉にミツルに襲いかかった。
「無駄だ。【絶対正義】」
ミツルを中心に正義の力場が展開される。王国の価値観に基づいた「正義」に反する者、すなわち獣人たちの能力が大幅に削がれた。
動きが鈍くなった獣人戦士たちを、ミツルは次々と倒していく。その表情には、もはや迷いも躊躇もなかった。




