決勝戦
決勝戦:カズマ vs 獣人王ガル・バオ
闘技場に立つ王
ついに決勝戦。相手は獣人王ガル・バオその人だった。王は自ら闘技場に降り立ち、全身に獣の毛をまとった巨大な体躯を誇示するように立っていた。身長は優に2メートルを超え、腕の筋肉は丸太のように太く、指先の爪は刀身のように鋭く光っていた。
観客席は静寂に包まれていた。王自らが戦うなど、誰も予想していなかった。
「よくここまで来たな、人間」王の声は低く響き、闘技場全体に威圧感を与えた。「だが、俺を倒すのは別だ。覚悟はいいか?」
「ああ」カズマは腰の剣に手をかけながら答えた。「やるしかない」
王の口元が僅かに歪んだ。それは笑みなのか、それとも獲物を前にした獣の表情なのか判別がつかなかった。
「面白い。その目、死を恐れていないな」
審判が高らかに宣言した。「決勝戦、開始!」
合図と共に、王が咆哮した。
「ガオオオオオ!」
その咆哮だけで、闘技場の砂が舞い上がり、観客席の石柱が微かに震えた。カズマは思わず後ずさりそうになったが、足を踏ん張った。
王は四つ足の姿勢を取ると、野獣のような俊敏さで駆け出した。その速度は常識を超えていた。砂煙を上げながら、カズマとの距離を一瞬で詰める。
「速い!」
カズマは咄嗟に【転移】を発動した。王の爪が空を切り、カズマの姿が5メートル後方に現れる。しかし、王は既にそちらに向かって駆けていた。
「転移か。面白い芸だ」
王は二足歩行に切り替えると、巨大な体躯を活かした豪快な右ストレートを放った。カズマは身を屈めて回避するが、王の拳風だけで頬が切れた。
「うっ!」
血が一筋流れる。カズマは距離を取ろうと後ろに跳ぶが、王は既に追撃の構えを見せていた。
「逃げ回るだけか?」
王の左足が地面を蹴る。爆発的な推進力で、カズマとの距離を再び詰めた。今度は爪による横薙ぎの攻撃。
カズマは【朧影転写】を発動した。自分の影が分離し、王の足元に絡みつく。
「これで!」
影が王の左足首に巻きついた瞬間、王の動きが僅かに鈍った。カズマはその隙に剣を抜き、王の脇腹を狙った。
しかし、王の反射神経は人間の常識を遥かに超えていた。左足が拘束されたまま、右足だけで体を支え、上半身を捻って剣を回避。同時に右の爪でカズマの剣を弾いた。
「甘い!」
金属音が響く。カズマの剣が宙に舞い、砂の上に落ちた。
「剣なしでどうする?」
王の爪がカズマの肩に向かう。カズマは【転移】で回避しようとしたが、王の動きが読まれていた。転移先に先回りされ、王の左爪がカズマの右肩を裂いた。
「ぐあ!」
深い傷から血が噴き出す。カズマは痛みに顔を歪めながら、更に距離を取った。
観客席からは王への声援が響いた。
「王様!そいつをやっちまえ!」
「人間なんかに負けるな!」
第二ラウンド:古代魔法の覚醒
カズマは右肩を押さえながら、状況を分析した。王の身体能力は予想を遥かに超えている。純粋な格闘戦では勝ち目がない。
(古代魔法に頼るしかないか...)
カズマは【封雷結界】を発動した。雷の魔力が王の周囲に結界を形成し、王の動きを封じようとする。
「なんだこれは...」
王の体に電流が走り、動きが鈍くなった。しかし、完全に止まることはなかった。
「魔法か...面白い」
王は結界の雷を受けながらも、気合いで前進した。雷に体を焼かれながら、それでもカズマに向かって突進する。
「こんなもので俺は止まらん!」
王の爪がカズマの腹部を狙う。カズマは【風刃結界】を展開して防御した。風の刃が王の爪と激突し、火花が散る。
「硬い...」
王の爪は風の刃を貫通こそしなかったが、結界自体を押し返した。カズマは衝撃で後方に吹き飛ばされる。
「魔法も大したことないな」
王は雷の結界を無理矢理突破し、カズマに肉薄した。今度は両手の爪による連続攻撃。左右の爪が交互にカズマを襲う。
カズマは【朧影転写】で複数の影分身を作り出し、回避に専念した。しかし、王の攻撃範囲は広く、影分身も次々と切り裂かれていく。
「影遊びが得意だな」
王は三体目の影分身を切り裂くと、本体のカズマを見つめた。その目は獲物を狩る肉食獣のそれだった。
「だが、本物はこっちだろう?」
王の嗅覚が本体を特定したのだ。カズマに向かって渾身の突進。
「しまった!」
カズマは咄嗟に【時空境界の鎖】を発動した。周囲の時間と空間を固定化する古代魔法。王の動きが完全に止まった。
「これで...」
しかし、固定化は30秒しか持たない。カズマはその間にできるだけ距離を取り、次の戦略を考えた。
30秒後、固定化が解除された瞬間、王が再び動き出した。
「時を止める魔法まで使うか。だが、永続ではないようだな」




