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第3戦:獣人戦士との激闘

準決勝の相手は予想外の人物だった。獣人族の戦士—その巨体は2メートルを優に超え、狼のような鋭い牙と爪を持つ威圧的な存在だった。茶色い毛に覆われた筋肉質な体躯は、まさに生まれながらの戦士という印象を与える。


「俺の名はガルン・ブレイドクロー」獣人は低く唸るような声で名乗った。「獣人王ガル・バオ様の直属の戦士だ」


カズマは身構える。相手の殺気がひしひしと伝わってくる。


「人間よ、お前が魔族の味方をしているという話は聞いている」ガルンの黄色い瞳がカズマを睨みつけた。「だが俺は違う理由でお前と戦う」


「違う理由?」


「お前の力を試したいのだ。人間でありながら古代魔法を使うという...その力が本物かどうかをな」


ガルンは戦闘態勢に入る。四つ足になって地面を這うような構え—これは獣人族特有の戦闘スタイルだった。


「来い、人間!俺に勝てたら、俺もお前を認めてやる!」


ガルンが地面を蹴って突進してきた。その速度は想像を絶するものだった。まるで弾丸のようにカズマに迫る。


「速い!」


カズマは咄嗟に【転移】で後方に跳躍する。ガルンの爪が宙を切り、地面に深い傷跡を残した。


「逃げるだけか?」ガルンが挑発する。


「まだ始まったばかりだ」


カズマは【封雷結界】を発動しようとしたが、ガルンの動きが予想以上に早く、結界が完成する前に再び間合いを詰められてしまう。


ガルンの右の爪がカズマの頬を掠める。一筋の血が流れた。


「初血は俺のものだ」ガルンが不敵に笑う。


カズマは距離を取りながら戦況を分析する。相手は近接戦闘に特化している。正面から挑むのは得策ではない。


「なら、これはどうだ」


【朧影転写】を発動。カズマの影が分離し、実体化する。3体の影の分身がガルンを取り囲んだ。


「面白い技だ!だが—」


ガルンは雄叫びを上げながら、周囲の影分身を爪で薙ぎ払おうとする。しかし影は物理攻撃をすり抜け、逆にガルンの手足に絡みついた。


「なんだと?」


影による拘束でガルンの動きが封じられる。今がチャンスだった。


「【空間断絶斬】!」


空間を切り裂く斬撃がガルンに向かって飛ぶ。しかしガルンは野生の直感でその危険を察知し、全身の筋力を爆発させて影の拘束を強引に振りほどいた。


「甘いな!」


間一髪で斬撃を回避したガルンだったが、右肩に浅い切り傷を負っていた。



反撃開始


「やるじゃないか、人間」ガルンの目が輝く。「なら俺も本気を出そう」


ガルンが特殊な構えを取る。四肢で地面を掴み、まるでバネのように体を圧縮させた。


「【獣王奥義・剛爪連撃】!」


ガルンが爆発的な速度でカズマに迫る。今度は単純な突進ではない。空中で体を捻りながら、連続で爪撃を繰り出してくる。


一撃目—カズマが転移で回避。

二撃目—影分身で防御を試みるが、今度は実体のある攻撃で影が切り裂かれる。

三撃目—


「危ない!」


カズマは【風刃結界】を急いで展開した。風の刃で構成された防御結界が爪撃を受け止める。しかし、ガルンの攻撃力は想像以上に高く、結界にひびが入る。


「その程度の防御で俺を止められると思うな!」


ガルンがさらに攻撃の手を緩めない。連続する爪撃で風刃結界が完全に破られる。


カズマは再び転移で距離を取る。しかし、ガルンは執拗に追いかけてくる。まさに野獣のような執念深さだった。


カズマは精霊を呼ぶことを躊躇した。この戦いは自分一人の力で勝負したかった。ガルンの純粋な戦士としての姿勢に敬意を表するためでもあった。


「精霊は呼ばないのか?」ガルンが問う。


「お前との戦いは、俺一人でやりたい」カズマが答える。


ガルンの目が一瞬輝いた。「いい心構えだ!」


ガルンが再び突進してくる。今度は完全に1対1の勝負だった。


カズマは冷静に相手の動きを観察する。ガルンの攻撃パターンには一定のリズムがある。それを見極めることができれば...


「【朧影転写】!」


今度は影分身を囮として使う。3体の影がガルンの周りを回り、本体の位置を分からなくした。


「小賢しい!」


ガルンが全方向に爪撃を放つ。影分身が切り裂かれるが、その隙にカズマが背後に回り込んだ。


「【水流操作】!」


カズマは地面の水分を操り、ガルンの足元に水の渦を作り出した。精霊の力を借りずとも、契約により得た魔法は使用可能だった。


ガルンの足が滑る。バランスを崩した瞬間、カズマが【時空境界の鎖】を発動した。


周囲の時間と空間が固定化される。ガルンの動きが完全に停止した。


「これで終わりだ」


カズマは【空間断絶斬】を構える。しかし、なぜか手が止まった。



相互理解


「なぜ止めない?」ガルンが時間の固定化の中で呟いた。彼の意識だけは動いているようだった。


「お前は俺を殺すつもりで戦っていない」カズマが答える。「最初から殺気がどこか抑制されていた」


「...鋭いな」ガルンが苦笑いする。「その通りだ。俺は最初からお前を殺すつもりはない」


「なら、なぜ?」


「お前の本質を見極めたかったのだ」ガルンの表情が真剣になる。「魔族と手を組む人間が、果たして信用に値するかどうかを」


カズマは【時空境界の鎖】を解除した。ガルンは再び自由に動けるようになったが、攻撃の構えは取らなかった。


「結論は?」


「合格だ」ガルンが立ち上がる。「お前は確かに力もあるが、それ以上に...相手を理解しようとする心を持っている」


「お前の負けを認めるのか?」


「そうだ。この戦い、俺の負けだ」ガルンが頭を下げる。「だが俺は満足している。お前のような人間がいるなら、種族間の争いもいつかは終わるかもしれない」


カズマは手を差し出した。「握手をしよう」


ガルンは一瞬驚いたが、すぐにその手を握り返した。


「ガルン・ブレイドクロー、今日からお前を戦友として認める」


「カズマ。俺もお前を仲間として認める」


観客席がざわめいた。獣人族と人間が握手している光景など、この世界では前代未聞だった。


「すごい...」リーフィアが感動したような声を出す。「カズマ一人であの強さ...」


カズマは準決勝を勝利で飾った。しかし、それは単なる勝利ではなく、新たな仲間との出会いでもあった。


ガルンは退場する際、振り返ってカズマに言った。


「決勝戦、頑張れよ。そして...なすべきことを成せ」


「ああ、約束する」


こうして、カズマの第3戦は、戦闘での勝利だけでなく、心の勝利でもあって終わった。種族を超えた理解と友情—それこそが、カズマが目指す新しい世界への第一歩だったのかもしれない。

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