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城壁での独白

その夜、ミツルは一人で城の最上階へと向かった。風が強く吹く城壁に立ち、遠く魔王城の方向を見つめる。


月明かりに照らされた彼の顔には、迷いと決意が入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。


(あの男...カズマ。なぜ君は魔族の味方になったんだ?)


ミツルの脳裏に、異世界に召喚された日のことが蘇る。四人の日本人高校生が魔法陣に現れた瞬間。ミツル自身は強力なスキルを持っていたが、カズマだけは何も持たず、そのまま地下牢に送られてしまった。


あの時は、自分が選ばれた特別な存在であることを実感し、内心で優越感を抱いていた。元の世界では「優等生のフリをした偽善者」と陰口を叩かれていた自分が、初めて本物の英雄として認められたのだから。


「僕は...僕はこの世界で英雄になるために来たんだ」


風に乗って、下の回復室から声が聞こえてくる。


「ミツル...頼む。俺達の分まで、ぶっ殺しまくってきてくれ」リュウヤの憎悪に満ちた声。


「お願い...私たちの屈辱を晴らして」ナギサの涙声。


ミツルは自分に言い聞かせるように呟く。「そうだ...これは正義の戦いだ。魔族も、それに味方する者も...すべて、この世界に不要な存在。一人でも...今度こそ、必ず"あの男"を倒す」


彼の瞳に、確固たる決意の光が宿る。それは同時に、狂気の入り口でもあった。



新たな力への渇望


翌日、ミツルは王国の奥深くにある秘密の修練場に呼び出されていた。そこには見たこともない魔法装置や古い魔導書が並んでいる。


宰相バルザックが彼の前に立ち、薄い笑みを浮かべて説明を始めた。


「君一人での戦いとなると、特別な力が必要だ。ここにあるのは古代から伝わる、強力な力を引き出すための秘術だ」


ミツルが前に出る。「それは...安全なのでしょうか?」


「安全?」宰相が小さく笑う。「君は英雄だろう?英雄には多少のリスクなど関係ないはずだが?」


ミツルの目に決意が宿る。「仲間の仇を討つためなら、どんなリスクでも受け入れます」


「よろしい。まず、この魔導書を読むがいい。『龍神の加護』について記されている」


宰相は満足そうにうなずいた。そして小瓶を渡す。


「これはかつてこの世界を支配していた龍神の血だ」


「龍神の血...」ミツルが息を呑む。「これは...」


「古代龍神の力を人間に移す秘術だ。ただし、使用には相応の覚悟が必要となる」宰相の目が怪しく光る。「まだ実験段階だからな」


ミツルは迷うことなく答えた。「やります。どんな代償があろうとも、正義を貫くためなら」


「素晴らしい」宰相が手を叩く。「では、準備を整えよう。次の戦いまでに、君は全く違う存在になっているはずだ」



過酷な特訓


それから数週間、ミツルは過酷な訓練に明け暮れた。通常の魔法訓練に加え、龍神の血を少量ずつ飲み力を蓄える。一人での修練は孤独だったが、それが彼の決意をさらに固くした。


訓練場では、ミツルが新しいスキルの練習に取り組んでいる。


【絶対正義】の力場を展開すると、周囲の空間が金色に輝く。この範囲内では、王国の価値観に反する者の能力が大幅に制限される仕組みだった。


「もっと範囲を広げられないか?」ミツルが汗を拭いながら尋ねる。


指導役の魔法師が答える。「あなたの正義への確信が強くなれば、自然と範囲も広がります。迷いがあれば効果は弱くなりますが」


「迷い...ないさ」ミツルは拳を握る。「僕の正義は絶対だ。仲間の仇を討つことこそが、正義なんだ」


龍神の血による強化で、彼の身体能力は以前とは比べ物にならないほど向上している。しかし、同時に何か重要なものを失いつつあることも感じていた。闘争心が日に日に高まっている。


毎日、回復室のナギサとリュウヤを見舞った。二人の憎悪に満ちた言葉が、ミツルの心をさらに硬化させていく。


「ミツル、あいつの顔、覚えてるか?」リュウヤが苦痛に歪んだ顔で言う。「絶対に許すな」


「私たちの分まで...絶対に」ナギサも涙ながらに訴える。


その度に、ミツルの正義への確信は強くなった。同時に、人としての温かさも少しずつ失われていく。




大規模進軍の決定


ある日、宰相バルザックが急いで修練場にやってきた。その背後には騎士団長ガイウスと数名の高級将校が続いている。


「君の出番だ」宰相の声に緊迫感がある。「獣人族領への大規模侵攻作戦が決定した。君には1000の精鋭を率いて、この作戦の総指揮を執ってもらう」


ミツルが立ち上がる。「1000人の指揮をですか?」


「君の【絶対正義】の力なら、大軍を率いても問題ないはずだ。それに...」宰相が意味深な笑みを浮かべる。「あの魔族の味方も、獣人族を守りに来るかもしれん。今度こそ仕留められる」


ミツルの目が光る。「つまり、完全な勝利を収める機会ということですね」


「その通りだ」宰相がうなずく。「大軍を率いた君の前では、あの男も逃げ場がない。存分に力を発揮してもらおう」


騎士団長ガイウスが前に出る。「選抜された1000の兵は、すべて王国最精鋭です。魔法師団100名、重装騎兵300名、歩兵600名。獣人領など一日で制圧できる戦力です」


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