襲来
謁見の間の扉が勢いよく開かれる。魔族の見張り兵が血相を変えて飛び込んできた。
「女王様!大変です!王国の軍勢が城に向かっています!」
「何だと?」
バルログが立ち上がる。
「数は?」
「約三千!そして…」
見張り兵の声が震える。
「召喚者たちも一緒です!」
その瞬間、謁見の間の空気が一変する。先ほどまでの和やかな雰囲気は消え去り、戦闘準備の緊張感に包まれる。
「くそ!」
バルログが拳を握りしめる。
「あのタイミングで攻めてくるとは。人間の狡猾さを見くびっていた」
ヴェルザも厳しい表情になる。
「迎撃準備を。総員戦闘配置に」
「待ってください」
カズマが前に出る。
「俺たちも戦います」
「人間が我らのために戦うと?」
バルログが疑わしげな視線を向ける。
「当然です。俺は共生を望んでいる。それなら、魔族を守るのも当たり前だ」
リーフィアも弓を構える。
「私もです。この城の皆さんは、私たちを受け入れてくれた」
精霊たちも意思を示す。
セルヴァン「面白い戦いになりそうだな」
アクエリア「清らかな心を持つ者たちのため、私も力を貸しましょう」
ミュリエルが微笑む。
「素晴らしい。これこそが真の共生の始まりね」
ヴェルザは少し驚いた表情を見せたが、すぐに決意を固める。
「ならば、共に戦おう。人間よ、お前の実力を見せてもらう」
城壁での対峙
魔王城の城壁に全員が集まる。眼下には王国の軍勢が陣を敷いている。中央には見慣れた顔があった。
ミツル、ナギサ、リュウヤ。
カズマと同時に召喚された三人の召喚者たちが、堂々と最前線に立っている。
「キミ!あのときの転生者だね」
ミツルがカズマを見上げて声をかける。その表情には驚きと、どこか嬉しそうな色があった。
「マジで?俺達と一緒に転生してきたやつ?こんな顔のやつだっけか?ミツルよく覚えてるなあ。ってか生きてたのかよ」
リュウヤが軽い調子で言う。
「うふふ、久しぶりね」
ナギサも笑顔を見せるが、その目は冷たい。
カズマは城壁から見下ろしながら、複雑な気持ちになる。確かに彼らは同郷の人間だが、今は完全に敵対している。
「なぜ人間が魔族なんかを庇う?」
ミツルが真剣な表情で問いかける。
「理解できない。僕たちは人類のために戦っているのに」
「国に捨てられた逆恨みか?」
リュウヤが挑発的に笑う。
「どちらにしても、もう遅いよね。魔族の味方をした時点で、あなたも敵よ」
ナギサの声には、先ほどまでの愛想良さは微塵もない。
カズマは深く息を吸う。
「俺は逆恨みなんかしてない。ただ、種族の壁を越えて共存できる世界を作りたいだけだ」
「共存?」
ミツルが眉をひそめる。
「魔族と人間が共存?そんなことが可能だと本気で思っているのか?」
「可能だ。現に今、俺たちは魔族と協力している」
「それは君が魔族に騙されているだけだ」
ミツルが剣を抜く。神聖な光を帯びた美しい剣身が、夕日に反射して輝く。
「魔族は邪悪な存在。人間に害をなす敵でしかない。それが王国の、そして神の教えだ」
「神の教え?」
カズマは苦笑する。
「お前たちは王国の都合の良い洗脳を受けているだけだ」
「洗脳だと?」
リュウヤが怒りを露わにする。
「ふざけるな!俺たちは正義のために戦ってるんだ!」
「正義?」
カズマの声が厳しくなる。
「魔族の村を襲って、無抵抗な民間人を虐殺することが正義か?」
「奴らは魔族だ。人間の敵だ」
ナギサが冷然と言い放つ。
「敵を排除するのは当然でしょう?」
その言葉に、カズマの怒りが頂点に達する。
「お前たちは…同じ日本人だったはずなのに、なんでそんなに冷酷になれるんだ」
「冷酷?」
ミツルが首を振る。
「これは必要な戦いだ。世界の平和のための」
「平和?誰の平和だ?人間だけの平和じゃないか」
カズマが城壁から飛び降りる。リーフィアと精霊たちも続く。
「俺が目指すのは、全ての種族が笑顔で暮らせる平和だ」




