表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/51

城での一夜

その夜、カズマたちは城の客室で休んでいた。魔族の城だけあって、部屋には不思議な装置や魔法のアイテムが置かれている。


「本当にいいの?」リーフィアが心配そうに尋ねた。


「ああ」カズマは窓から見える魔族の街を眺めていた。「これがチャンスだ。古代魔導書を手に入れれば、もっと強くなれる」


「でも、危険すぎるわ。女王様も生きて帰れるかどうか分からないって言ってたじゃない」


セルヴァンが割り込んだ。「確かに危険だろう。しかし、このまま逃げ続けていても状況は良くならない。王国の召喚者たちはどんどん強くなっている」


カズマは振り返った。「そうだ。ミツルたちは手の届かないところにいる。俺はまだ彼らに遠く及ばない。このままじゃ王国に処分されるのを待つだけだ」


リーフィアは悩んだが、最終的に頷いた。「分かった。でも、絶対に一人では行かない。私たちも一緒よ」


「ありがとう」カズマは彼女の手を握った。


その時、部屋の扉がノックされた。三人が身構えると、女王の声が聞こえた。


「入るぞ」


扉が開き、女王が一人で入ってきた。臣下も護衛もいない。


「女王陛下?」カズマは驚いた。


「少し話がしたくてな」女王は椅子に座った。「君は本当に人間と魔族の共存を信じているのか?」


カズマは正直に答えた。「信じています。簡単じゃないことは分かっています。でも、不可能じゃないと思います」


女王の表情が複雑になった。「私の故郷は百年前に人間の軍隊に滅ぼされた。家族も、友人も、みんな殺された。私だけが生き残った」


「そんな…」リーフィアが言葉を失った。


「だから私は人間を憎んでいる」女王は続けた。「しかし同時に、すべての人間が悪だとは思いたくない。お前のような人間もいるのだからな」


カズマは女王の痛みを感じた。自分も王国に裏切られ、殺されそうになった。その苦しみが少しは理解できる。


「俺も王国に裏切られました」カズマは言った。「でも、リーフィアやセルヴァンに出会って、諦めずに済んでいます。一人じゃできないことも、仲間がいれば可能になる」


女王は長い間カズマを見つめていた。そして、小さくため息をついた。


「明日、地下の遺跡に案内しよう。そこでお前の本当の覚悟を見せてもらう」



地下遺跡への挑戦


翌朝、女王は約束通り地下への入り口を案内してくれた。城の最下層にある隠し扉の向こうには、石でできた古い階段が続いている。


「この先は本当に危険だ」女王は忠告した。「引き返すなら今のうちだ」


「大丈夫です」カズマは階段を見下ろした。確かに不気味な魔力が立ち上ってきている。


「なら、幸運を祈る」女王は魔法のランタンを渡した。「これがあれば、少なくとも道は見えるだろう」


三人は地下へと降りていった。階段は想像以上に長く、降りても降りても底が見えない。空気はどんどん冷たくなり、魔力の濃度も増していく。


「古い魔力だな」セルヴァンが呟いた。「少なくとも千年は前のものだ」


やがて、階段の底に到着した。そこには巨大な石の扉があり、表面には見たこともない文字が刻まれている。


「古代語か」リーフィアが文字を見つめた。「読めないわね」


カズマが扉に近づくと、突然文字が光った。そして、カズマには文字の意味が理解できた。


「『真なる力を求める者、覚悟を示せ』…そう書いてある」


扉がゆっくりと開いた。中から青白い光が漏れてくる。


「いよいよだな」セルヴァンが身構えた。


三人は遺跡の中に入った。そこは想像以上に広い空間で、天井には星空のような光が輝いている。床には複雑な魔法陣が描かれ、中央には光る水晶が浮いていた。


「綺麗…」リーフィアが息を呑んだ。


しかし、カズマは危険を感じていた。あまりにも静かすぎる。




水の精霊アクエリア


中央の光る水晶から、青白い光がゆらめき始めた。光は次第に人の形を取り、やがて透明感のある美しい女性の姿となって現れる。

長い水色の髪が重力を無視してゆらゆらと漂い、瞳は深い海のような青。全身が薄い水のヴェールに包まれ、足元から小さな水滴が舞い散っている。


「人間がここに来るとは…」


声は水の流れのように美しく響く。アクエリアはカズマを見つめ、微笑みを浮かべた。


「私はアクエリア。この遺跡を守る水の精霊です」


リーフィアとセルヴァンが身構えるが、アクエリアからは敵意は感じられない。


「恐れることはありません。私は争いを好みません」アクエリアは優雅に手を振る。「それより、興味深いものを見せていただきました」


彼女の視線がカズマに注がれる。


「あなたの魂…とても清らかな流れを感じます。そして、深い愛情も。魔族への偏見なく、純粋な気持ちで共生を望んでいる」


「あ、ありがとうございます」カズマは緊張しながら答えた。


アクエリアはゆっくりと歩み寄る。


「しかし、気持ちだけでは不十分。真の共生には、深い理解と強い精神力が必要です。そのための試練を、あなたに課しましょう」


「試練…ですか?」


「そうです」アクエリアの表情が厳粛になった。「これは古代から続く『異種族との共生の資格』を証明する神聖な儀式。本来、人間が受けた記録はほぼ存在しません」


「それは…なぜですか?」


アクエリアは悲しそうに目を伏せる。


「大抵の人間は、精神が崩壊して命を落としてしまうからです。この試練は魂の最も深い部分、あなたの本質そのものを試します。偽りの心、隠れた悪意、そして恐怖…それらすべてがさらけ出される」


カズマは唾を飲み込んだ。死ぬ可能性があると言われても、ここで退くわけにはいかない。


「それでも…やります」


「カズマ!」リーフィアが駆け寄る。「そんな危険なこと…!」


「大丈夫だ」カズマは彼女の手を取って微笑んだ。「俺は、俺たちは本気で共生を望んでいる。それを証明するためなら」


アクエリアはカズマの決意を感じ取り、優しく微笑む。


「美しい覚悟ですね。あなたの心の流れは、きっと濁ることなく試練を乗り越えられるでしょう」


彼女が両手を広げると、魔法陣が青白い光を放ち始めた。


「それでは始めましょう。あなたの魂を、深淵の底まで潜らせます。そこであなたが見るもの、感じるもの…それがあなたの真の姿。偽りなき心で、この試練に立ち向かってください」


ミュリエルが優しく微笑む。


「覚悟はよろしいようですね。それでは始めましょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ