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夜営での会話

その夜、三人は洞窟で焚き火を囲んでいた。魔族領の夜は異様に寒く、普通の火では暖を取ることができない。セルヴァンが精霊の炎で特別な暖かさを提供してくれていた。


「魔王城まであとどれくらいかかるかしら?」リーフィアが尋ねた。


「このペースなら三日ほどか」セルヴァンは炎を見つめながら答えた。「ただし、無事にたどり着ければの話だが」


カズマは空を見上げた。星がいつもより暗く見える。


「セルヴァン、魔族女王って一体どんな人なんだ?」


セルヴァンは少し考えてから口を開いた。「ダークネス・ヴェルザ…数百年前に魔族の王位に就いた女性だ。美しく、知的で、そして強い。だが、人間に対してはかなり複雑な感情を抱いている」


「複雑な感情?」


「魔族は長年、人間から迫害を受けてきた。土地を奪われ、家族を殺され、奴隷として売られた。女王自身も若い頃に人間の軍隊に故郷を滅ぼされている」


リーフィアが悲しそうな表情をした。「私たちエルフと同じね」


「そうだ」セルヴァンが頷いた。「だから女王は人間を憎んでいる。しかし同時に、すべての人間が悪だとは思っていない。矛盾した感情を抱いているのだ」


カズマは拳を握った。「俺たちが行っても、話を聞いてくれるだろうか?」


「それは君次第だ」セルヴァンは振り返った。「君がどれだけ誠実で、どれだけ強いかによる。魔族は力を尊重する。弱い者の言葉に耳を傾けることはない」


「なら、魔導書を手に入れてもっと強くなる必要があるな」


リーフィアがカズマの手に自分の手を重ねた。「私も一緒に強くなる。あなたを支えられるように」


セルヴァンは二人の様子を見て、小さく微笑んだ。「君たちは面白いコンビだな。まあ、見ていて退屈はしない」



魔王城の威容


三日目の夕方、ついに魔王城が見えてきた。それは想像を絶する壮大さだった。黒い石で造られた城は山そのものを要塞化したかのような巨大さで、無数の塔が空に向かって伸びている。城の周りには紫色の魔力が渦巻き、不気味な美しさを放っていた。


「すげぇ…」カズマは思わず声を漏らした。


「魔族の建築技術は人間のそれを遥かに上回る」セルヴァンが説明した。「あの城は一千年前から存在している。魔法で強化されているから、どんな攻撃も通用しない」


リーフィアは城門の前に立つ巨大な守衛たちを見て緊張した。「あの守衛たち…全員が魔族ね」


守衛の一人がこちらに気づいた。角の生えた大柄な魔族で、巨大な斧を持っている。


「人間だ!」守衛が叫んだ。「人間がここに何の用だ!」


他の守衛たちも武器を構えた。カズマは両手を上げて敵意がないことを示した。


「俺たちは戦いに来たんじゃない」カズマは大きな声で言った。「魔族女王に会いたいんだ」


「笑わせるな!」別の守衛が笑った。「人間風情が女王陛下に謁見だと?」


その時、セルヴァンが前に出た。風の力を纏い、明らかに精霊であることを示す。


「私は森の精霊セルヴァンだ。この人間は私が保証する」


守衛たちの態度が一変した。精霊に対しては敬意を払うのが魔族の習わしだった。


「精霊様…しかし、人間を連れての入城は…」


「女王陛下の判断に委ねよ」セルヴァンは威厳を込めて言った。「この者には特別な事情がある」


守衛たちは互いに顔を見合わせた。最終的に、一人が城内に報告に向かった。


しばらく待った後、守衛が戻ってきた。


「女王陛下がお会いになります」守衛は渋々といった様子で言った。「ただし、武器は預けていただきます」


カズマとリーフィアは武器を差し出した。セルヴァンは精霊なので武器検査は免除された。


城内は外観以上に荘厳だった。高い天井には魔法で作られた星空が描かれ、壁面には魔族の歴史を描いた壮大な絵画が飾られている。歩く度に床の魔法陣が光り、まるで生きているかのようだった。


通路では多くの魔族とすれ違った。彼らはカズマを見ると、明らかに敵意の込もった視線を向けてくる。


「人間め…」


「よくもこんな聖なる場所に…」


「女王陛下は甘すぎる」


リーフィアはカズマの袖を掴んで歩いた。セルヴァンは堂々としているが、警戒は怠っていない。


やがて、巨大な扉の前に到着した。扉には複雑な魔法陣が刻まれており、触れただけで強大な魔力を感じることができる。


「入れ」守衛が扉を開いた。


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