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森の精霊セルヴァン

最深部は円形の広間になっており、中央に祭壇がある。その上に一冊の古い魔導書が置かれ、淡い緑の光を放っていた。


しかし、祭壇の前には一人の人物が立っていた。長い緑の髪、尖った耳、そして古風な装束を身にまとった男性。その姿は美しくも威厳に満ちており、周囲の空気がその存在によって震えているようだった。


「人間…!」


男性が振り返ると、その瞳には深い怒りが宿っていた。


「よくもここまで来たな。お前たちが魔導書を求める理由など聞きたくもない。どうせ力を手に入れて他者を支配したいだけだろう」


「待ってくれ!俺たちは…」


「黙れ!」


男性が手を振ると、強烈な風が吹き荒れた。カズマとリーフィアは壁に叩きつけられ、呻き声を上げた。


「貴様ら人間が何をしたか、この森の精霊セルヴァンが忘れるとでも思ったか!」


セルヴァン。それは森を司る古い精霊の名前だった。


「森を焼き、動物を殺し、我が同胞を奴隷にした!そして今度は古代の叡智まで奪おうというのか!」


セルヴァンの怒りは凄まじく、洞窟全体が共鳴して震動していた。


カズマは立ち上がり、必死に言葉を紡いだ。


「俺たちは違う!俺は王国に捨てられた。スキルがないって理由で処刑されそうになったんだ!」


「嘘を言うな!」


「本当だ!リーフィアの村で匿ってもらって、みんなを魔物から守った。俺は人間を助けるんじゃない、みんなを助けたいんだ!」


セルヴァンの表情が僅かに変わった。


「戯言を…」


「森の精霊よ」リーフィアが前に出た。「私はエルフのリーフィア。故郷を人間に滅ぼされた。でも、この人は違う。彼は本当に、種族の枠を超えて皆を守ろうとしているの」


「エルフが人間を庇うだと?馬鹿な!」


セルヴァンは混乱した。エルフが人間を庇うなど、常識では考えられない。


「ならば証明してもらおう。お前たちの本性を見せてもらう!」




精霊との戦闘


セルヴァンが両手を広げると、洞窟内に巨大な竜巻が発生した。風は刃となり、岩を砕き、すべてを切り刻んでいく。


「【風刃嵐】!」


無数の風の刃がカズマたちに襲いかかる。カズマは咄嗟に【封雷結界】を展開したが、精霊の力は想像以上に強大だった。結界がひび割れ、破綻寸前になる。


「くそっ!」


「カズマ!」


リーフィアが【精密射撃】で応戦する。しかし、矢は風によって軌道を変えられ、セルヴァンには届かない。


「無駄だ!森の怒りを受けろ!【古木縛鎖】!」


洞窟の床から巨大な木の根が伸び、二人の足を縛り上げた。身動きが取れない状況で、セルヴァンがとどめの魔法を詠唱し始める。


「【暴風天裂】…これで終わりだ」


その瞬間、カズマの中で何かが弾けた。仲間を守りたい、この精霊の誤解を解きたい、そして何より…皆が平和に暮らせる世界を作りたい。


「させるか!【朧影転写】!」


カズマの影が分離し、実体化した。影のカズマは木の根の束縛を受けず、本体とは別行動を取ることができる。


「何だこれは…」


セルヴァンが驚愕する中、影のカズマは精霊の背後に回り込んだ。そして本体のカズマが【転移】でセルヴァンの真正面に出現する。


「俺の気持ちを見ろ!」


カズマは精霊の両手を掴んだ。その瞬間、古代魔法の力により、カズマの記憶がセルヴァンに流れ込む。


処刑台での恐怖。エルフ村での温かい日々。子供たちを守った時の必死さ。リーフィアとの絆。そして、すべての種族が平和に暮らせる世界への憧憬。


セルヴァンの瞳が見開かれた。


「これは…本当の記憶か?」


「全部本当だ。俺は力が欲しいんじゃない。みんなを守る力が欲しいんだ」


セルヴァンの魔法が止まった。風は静まり、木の根も土に還っていく。


「面白い…」


精霊の口元に、僅かな笑みが浮かんだ。


「お前は転生者だな?人間はまだそんな愚かなことをしているのか…異世界から人を呼び出して、都合よく利用しようとするとは」


「知ってたのか?」


「数千年も生きていれば、魂の在り方くらい分かる。お前の魂は確かに異世界のものだ。そして…」


セルヴァンはリーフィアを見た。


「エルフよ、お前がこの男を信じる理由も分かった。彼の心に偽りはない」


リーフィアは安堵の表情を浮かべた。


「それで…俺たちのことは」


「認めよう」セルヴァンが頷いた。「お前たちなら、古代魔法を正しく使ってくれるだろう」

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