僕の家族
僕の名前は山之内利人、小学3年生です。
父は外科医、母は皮膚科医をしています。
そして、高校2年生の兄がいます。
兄の名前は山之内愁と言います。
兄と年齢が離れているのは、父親の再婚相手が僕の母親だからです。
兄は子供の頃からミュージカルで活躍し、わりと人気があります。
兄の母親がハーフだったらしく、兄は背が高く目鼻立ちがハッキリとした超イケメンで美声の持ち主です。
そんな兄が恋をしたようです。
あれは、僕が小学1年生の時です。
母の知り合いのピアノの先生の所でピアノを習いだし、半年くらいたった頃、発表会に出ました。
両手で弾けるようになったばかりで、まだまだ大した事はありませんが、上手に弾いていると兄は褒めてくれました。
その頃、兄は元気がなく大好きだった歌もやめていました。
というのも、祖母が亡くなり兄はショックから立ち直れませんでした。
父が兄の母親と離婚したのは、兄が3歳の時です。
それから、兄は祖母に可愛がられ育ちました。
祖母は音楽が好きな人で、兄が歌うととても褒めていました。
ミュージカルを始めたきっかけは、祖母の影響だそうです。
喜ぶ祖母を見るのが嬉しかったそうです。
もちろん、兄自身も歌は好きだし実力は確かです。
祖母がいなくなり、歌う気力を失った兄でしたが、急にキラキラと輝き歌うようになりました。
どうも、僕のピアノの先生の息子さんを好きになったようです。
僕が初めて出たピアノ発表会に、その息子さんも出ていました。
すごくピアノが上手くて、カッコ良かったです。
その人は兄と同じ年で置田冬弥さんと言います。
超イケメンでモテモテの兄が、男の人を好きになった事に最初は驚きました。
兄は、僕のピアノレッスンによく付き添うようになりました。
もちろん僕の為ではありません。
冬弥さんに会えるかもと思ってでしょうが……
当時、中学3年だった兄は、ピアノの先生に
「息子さん、ピアノ上手いですよね」「何歳なんですか?」
「どこの中学なんですか?」「高校はどこを受けるのですか?」
と冬弥さん情報を聞き出していました。
先生の子供が娘さんだったら、先生も警戒したかもしれません。
僕のピアノレッスンを見るふりをしながら、窓の外をよく見ていました。
冬弥さんが帰ってこないか見ていたのでしょう。
何度か学校帰りに門から入ってくる冬弥さんを見れたようです。
両手で口元を押えて頬が赤くなっている兄を、僕は横目で見ましたから。
超イケメンなのに、乙女のようでした。




