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終章

三年の月日が流れ、約束の日が来た。


朝もやの中、幼竜は既に成体とほぼ同じ大きさにまで成長していた。イビットの最適化された培養技術のおかげで、その成長は順調以上のものだった。


「さようなら、イビット」雌龍が研究所の前に降り立った。「お前の知恵には、大いに助けられた」


周囲に集まった町の人々は、もはや恐れる様子もない。三年の間に、ドラゴンの姿は町の風景の一部となっていた。


「これを受け取ってくれ」雄龍が巨大な包みを置いた。中には、古の魔法が込められた宝石や、貴重な鉱物、そして竜の鱗さえ含まれていた。「我らの感謝の印だ」


イビットは頭を下げた。「僕も、たくさん学ばせてもらいました。古の生命の神秘を」


その時、町の外れから人々の声が聞こえ始めた。城壁の周りを囲んでいた炎の壁が、ゆっくりと収まっていく。


そこに広がっていたのは、予想外の光景だった。


無数の石碑が、町の周囲を取り巻いている。近隣の村々や町が建てた追悼の碑だった。彼らは、この町が滅びることを覚悟し、既に記念碑を建てていたのだ。


「これは...」アルバート町長が声を詰まらせた。


石碑には、様々な追悼の言葉が刻まれている。

「安らかに眠れ、勇敢なアンリルの民よ」

「忘れまい、ドラゴンの餌食となった町を」

「英霊たちよ、永遠の安息を」


しかし、その予言された悲劇は起こらなかった。代わりに、知恵と協力が新たな道を切り開いたのだ。


「面白い」雌龍が石碑を見つめながら言った。「運命は、時に予想外の方向に流れる」


「次の子が生まれた時も」雄龍が付け加えた。「我らはこの地を選ぼう。だが、今度は恐怖としてではなく」


イビットは目を輝かせた。「その時は、もっと良い培養技術を...」


「ああ」雌龍は頷いた。「その時は最初から、お前の研究所で子育てをしよう」


人々から歓声が上がった。かつて絶望的と思われた状況が、まったく新しい可能性へと変わっていた。


石碑は、そのまま残されることになった。だが、その意味は大きく変わっていた。それは今や、破滅の記念碑ではなく、知恵と協力が危機を乗り越えた証となったのだ。


幼竜は最後に一回り。イビットの研究所の上空で輪を描くと、両親と共に空へと飛び立っていった。その姿は力強く、優美で、まさに古の魔法と新しい科学の調和を体現するかのようだった。


町の人々は、長い間その姿を見送った。エマは、イビットの隣で小さくつぶやいた。


「先生、次は私も手伝えますよね?」


イビットは静かに頷いた。恐れられ、疎まれていたゴブリンの技術は、今や町の誇りとなっていた。そして、その知恵は次の世代へと確実に受け継がれようとしている。


石碑の前に、新たな碑文が加えられた。


『ここに眠るのは、古き偏見と恐れのみ。

知恵と勇気が、新たな道を拓きし時、

人とドラゴンとゴブリンの、

かつてない絆が結ばれたことを、

永く記憶にとどめん』

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