永遠に続く 【★★★★★】
4月4日、火曜日。
四十代主婦の吉江は、息子の遺品を整理している。
十九歳の息子・貴明が数日前に自殺した。
遺書はなく、理由は不明だった。
すると押入れの奥から、吉江は見慣れない小箱を見つける。
中には手のひらサイズのボタンと一枚の紙が入っていた。
吉江が紙を見るとこう書かれている。
【このボタンを押せば、永遠に生きられる】
「何かしら、オモチャ?」
冗談半分で吉江はボタンを押した。
だがなにも起こらなかった。
ふと足元で動く気配を感じ、吉江が床を見るとゴキブリがいた。
「きゃああっ!」
吉江は咄嗟に近くの雑誌を丸めて叩き潰しす。
「気持ち悪い…」
そう呟きながら遺品の整理を続けた。
遺品の整理を始めたのは朝だったが終える頃には夜になっていた。
吉江はリビングに戻ると夫の平蔵は椅子に座っている。
それから吉江は夕食をとり、風呂に入り、寝た。
吉江は目を覚ますと、なぜか貴明の部屋にいた。
それに昨日と同じ服を着ており、手にはボタンを持っている。
「あれ?」
足元に目をやるとゴキブリがいた。
「きゃああ!」
吉江は雑誌でゴキブリを叩き潰す。
部屋を見回すと昨日整理したはずなのに散らかっていた。
「どういうこと?」
混乱しながら一階に降りると、リビングでは平蔵がテレビを見ていた。
『今日は4月4日、火曜日です』
アナウンサーの声に吉江の動きは止まる。
「えっ今日は4月5日でしょ?」
「なに言ってんだ」
平蔵は吉江の方を見る。
「昨日も4月4日だったよね…?」
「お前、疲れてんだよ。少し休め」
「そうね…」
吉江はベッドの上に横たわり眠りについた。
だが目覚めるとまた貴明の部屋にいた。
吉江「嘘でしょ…」
何度寝てもまた4月4日の朝に戻った。
寝ずに4月5日を迎えたこともあったが、寝ると4月4日に戻った。
それから何千、何万回と繰り返した。
だがどんな行動をしても結末は同じだった。
「もう嫌…」
吉江は台所は向かい、包丁を手に取り首に深く突き刺す。
平蔵はそれに気づき台所へ走る。
「吉江!」
血が飛び散り、吉江は崩れ落ちた。
それから数日後。
貴明と吉江の葬儀が行われた。
礼服を着た平蔵は、ぽつんと遺影を見つめる。
式が終わったあと、平蔵は貴明の部屋に入った。
「二人ともどうして俺を置いていくんだ」
ふと机を見ると平蔵は何かを見つけた。
END
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