聞き間違い 【★★★】
俺は仕事を終えて帰宅する途中だった。
ふと視界の隅に視線をやると人影が見えた。
よく見ると子供が立っていた。
しかも服や髪は濡れており体は傷だらけだった。
(なんだあの子供、、、まさか虐待か!)
俺はそっと近づき優しく声をかけた。
「こんな時間になにしてるの?」
子供は俺の声に反応しない。
俺は交番に連れて行こうとその子の手を掴んだ。
つもりだった。
だが手はすり抜けた。
俺は恐怖を感じその場から急いで離れた。
それからもあの子どもは俺の前に現れた。
流石に警察に相談したがその警察にはこの子どもが見えていないような反応だった。
「幽霊なのか、、、」
それからその子供の霊は会社や家の中まで入って来るようになった。
霊能者を呼んで見てもらったが塩を撒いただけだった。
まだその子供の霊はいる。
しばらくして俺はあることに気づいた。
「お前、達也か、、、?」
達也は小学生のときに仲が良かった友人だ。だが達也は川で溺れて死んでしまった。
俺は母親に達也の写真を送ってもらうように電話で頼んだ。
数分が経ち母親から写真が送られてきた。
送られてきた写真を見て俺は目の前の子どもが達也だと確信した。
「もしかして俺に会いに来てくれたのか」
俺は嬉しかった。死んだ友人が俺に会いに来てくれたのだと思うと。
それから俺は達也と共に過ごした。
「そろそろ寝ようかな」
俺が布団を敷いて寝ようとすると達也が何かを喋った。
「ん?何だ」
俺は達也に近づき耳を澄ました。
「死ね」
「えっ」
達也がその言葉を放ったと同時に俺の首を絞めてきた。
「くっ」
俺の首を絞める力はどんどん強くなっていく。
(息がっ、、、)
俺は意識を失った。
目が覚めると俺はベッドの上にいた。周りには母親や父親がいた。
「あなた!勇斗が目を覚ましたわ」
母親は泣きながら父親を揺さぶる。
すると父はこう言った。
「お前は5日ほど意識が戻らなかったんだぞ」
だがそんな父の言葉は頭に入ってこなかった。
今は達也が俺の首を絞めたことしか頭になかった。
(そういえば達也は、、、)
俺はあることを思い出す。
それは達也が川で溺れたのは俺のせいだということを。
(俺があの川で珍しい魚を見つけたって嘘をついたからだ。だから達也は俺を、、、)
俺は退院後に達也の墓に行った。
「達也、、、ごめんな俺があんな嘘をついたから」
俺は墓の前で膝をついて達也に謝った。
「許してやる」
達也の声でこう聞こえた気がした。
「俺を許してくれるのか?」
俺はまた来ることを墓の前で約束しその場から去る。
勇斗は聞き間違えていた。
達也は本当はこう言っていた。
「殺してやる」
END
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