ハロウィン戦記
ハロウィン終わりましたね。あっちの世界ではどうだったんでしょうかね。
とある朽ちた洋館の中、人ならざる者たちが集まっていた。
「我ら妖怪は人間を恐怖させるためにある。しかし、最近は人間たちの反応が悪い。そこで、西洋の妖怪に学んでこの流れを変えようと努めた。まずは今までの成果を共有しよう」
上位の妖怪がまず目の前のグループを指名した。
「最初にお前たちから頼む」
当てられた中から一体の妖怪が立ち上がり答えた。
「私たちは子供に化けて人間を驚かそうとしました。人間は恐れて我々にお菓子を貢いで退去を願ったのです。我々の輝かしい勝利です」
とても自慢げだ。
「よ、よし。よくやった」
答えた妖怪は満足そうだった。
(いや、それはハロウィンの仮装した子供に間違われただけだろうが。怖がられるんじゃなくて愛でられてるじゃないか)
指摘するのも野暮なので、気を取り直して次へ行った。
「そこの妖怪、頼む」
強面の妖怪が答えた。
「わしらは西洋の妖怪の姿を借りて街へ行き、通行人を怖がらせた。剛毅な人間が飲み比べを仕掛けてきたが返り討ちにしてやった。残念ながら途中で飲み過ぎたのか、気がついたら朝だったがな」
淡々と語る。
(なんとなく人間たちは怖がっている振りをして楽しんでいる気がするな。あと、人と飲み比べて完勝できないのかよ)
「では、次」
大柄な妖怪が答えた。
「俺たちは街で車をひっくり返し、その上で雄たけびを上げた。もちろん周りの人間は恐れていたさ。しかし、何故か人間の若者が真似をしだしてな。そのうち、役人らしき人間がたくさん来たので、慌てて人間どもと一緒に逃げたんだ」
だいぶ不満そうだ。
人間に真似されて、警官に追われるなんて恥と思うだろう。
「なかなかうまくいかないものだな。とりあえず、最後にお前だ」
奥の方にいた妖怪を指名する。
「あたしたちは、街の悪所の近くで人間の男どもをたぶらかして精を吸い取っていたんだよ。それでさ、何故か似たような恰好をした人間の女がたくさんいてね。ほとんどこっちには来なかったんだよ」
なんだよあいつら、とその妖怪は悪態をついていた。
上位の妖怪は頭を抱えたくなった。
こんなのでは人間に恐怖を与えるどころか、むしろ人間に負けているのではないか。
人間恐るべし。