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翌々日、二人は村近くの森へと足を運んだ。
この奥には蛮族がよく見かけられるため村人は森にはほとんど近寄らず、時折出てくる蛮族をディゼルが狩っている程度だった。
狩る、というのも、ディゼルの技量であれば50を超えない限りは一人で対処できるからであり同程度の蛮族なら100でも相手にできるから戦闘にならないのである。
そのせいか、蛮族もめったに森から出てこず様子を見に入るディゼルを見かけてはそそくさと逃げていくほどだった。
アークもこの森に入るのは初めてだった。
普段スカウトやレンジャーの知識を母から教えてもらうために入る森では野生動物しか出ないのと、こちらから姿を見かけても接触しないようはなれていったからである。
それも、母が経験の浅い射手でしかなく戦闘になった場合まず間違いなくこちらが狩られるからだ。
なので、見知った森ではない分緊張もひとしおだ。
「よし、じゃあここから試験開始だ。3時間この森で探索しろ。」
「3時間?」
アークの疑問ももっともだ。
実戦訓練を目標にするのであれば何体のこれこれこういう蛮族を倒せ、という指示になると思っていたからである。
それに、今までの経験からすると3時間森を探索するというのはなかなか厳しいものがある。
熟練の冒険者ならまだしもいまだ成人すらしていない少年なのだ。鎧をつけての行動もはじめてで、一人での行動もはじめて...数え始めたら初めてだらけの行軍なのである。
にもかかわらず、ディゼルは「3時間探索しろ」という指令を出した。
「ああ、まずはどこまでできるかを試験する。今日の成果次第で明日以降やるべきことを変えるんだ。」
てきぱきと森へと入る支度を進めるディゼル。
森の中で隠れやすいようにするためか緑を基調とした外套についた草掛けらしきところに森の入り口にある雑草を乱雑に巻き付けていく。
「蛮族を避け続けてもいいし、追いかけてもいい。今までソニアと安全な行動をしていた時とは違ってここは危険に満ち溢れている。危なくなったら助けに入るから、限界まで行動してどこまでできるかを俺に見せてくれ」
「わかった。やってみる。」
「まず最初に言っておくが今回森に出るだろう蛮族の種類はあえて伝えないそれを学び取りどんな対策をするのかを見せてもらおう。戦利品はお前のものだ。」
こくり、とうなずき出発の準備を整える。
道具の最終確認を行い、初めての森の中へと踏み入った。
ディゼルは、その5分ほど後に姿を森に溶け込ませるように後を追った。