68.天変
相原三姉妹は喜んでいた。
本当は法律家と宮内省の詳しい人を交えて、じっくりと細部を詰めてから、行う予定だった。ところが、安藤の身勝手な要求のせいで、急遽予定を繰り上げて行わざるを得なくなってしまったのである。しかし、国民の混乱を収拾し、卑劣なテロリストに毅然とした態度で臨むためにも、やむを得ない処置であった。
ナオコとシロナが現場に駆け付けた時には、もう演説は佳境に達していた。決して慌てず急がず切々と述べられたその演説は、天皇と日本国民の神性を改めて否定し、統治権を国民に奉還した上で、今後いかなる事態になろうとも東京を離れず、決して退去しないという宣言だった。
とりわけ急遽付け加えられた3つ目が大事だった。陛下が自由愛国党と護国会議の欺瞞と我欲に満ちた綱領を全否定し、国民とともに残ると宣言してくれたお陰で、核ミサイルの脅しにこういってやれる。
「このヘタレがっ。撃てるものなら撃ってみろワレ。いてまうどボケ!」
まあ、実際の返答は優秀な官僚のおじさんかおば・・・・・・おねえさんに、なるべく上品な感じに翻訳してもらうとしよう。それより今は・・・・・・。
演説を終えた陛下に、相原ナオコは抱きついた。相原シロナもそれに続く。ついでに元々お側にいた相原クロエも便乗した。カオリとサトリとケンジは、どうしていいか分からず、まごついている。
嬉しかった。相原ナオコは嬉しかった。シロナもクロエも嬉しかった。陛下が話を聞いてくれて嬉しかった。願いを聞き届けてくださってほんとうに嬉しかった。
「そろそろ離れてくれますか」
三姉妹は慌てて飛び退き、畏まった。カメラはまだガッツリと回っていた。
「ご、ごめんなさい。いえ、申し訳ございませんでしたっ。すっごく失礼な事しちゃいました。ほんとにほんとにごめんなさいっ」
「ごめんなさいっ」x2
そのひとは、柔和に微笑みながら言いました。
「いいえ、いいんですよ。ただ、
妻が妬くので」




