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29.ナオコ
ナオコは心では泣いていた。だが彼女には果たすべき責務があった。
ナオコはカオリたちの受け入れをタマエおばさんに任せると、シロとクロを連れて東京丸の内のビル街へ向かった。株式運用部隊へ送る生きた情報が滞っていたからだ。本当はもっとカオリやエミと話したかったが、彼女の立場はそれを許さなかった。
協力者と組織への志願者は着実に増えていた。近頃ではブルーカラーのみならず、大手企業の総合職や弁護士、会計士など、いわゆるホワイトカラーも合力を申し出てくれていた。以前よりも格段に大企業の奥の院に忍び込みやすくなり、情報の速度と精度は向上した。お礼代わりに、隣室に隠れて、彼らの仕事相手の本音を探って教えてあげた。ウィンウィンである。
今日は早い段階でいい情報が入手できたので、足を延ばして霞が関見学に赴いた。もちろん埼玉県じゃない。いずれ政府官公庁を偵察する必要があるので、土地勘をつけておこうと思ったからだ。
最も喫緊に調べたいのが桜田門前にある建物の中の人々の考えだった。その建物を、人々は警察庁ならびに警視庁と呼ぶ。




