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シロとクロ(全年齢版)  作者: はもはも
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28.タマエ

 山中のおばさんことタマエは、作戦成功の知らせに安堵していた。


 ナオコたちを乗せたバスは茨城県某所にある孤児院に到着した。そこはかつて億単位の資産を持つ金満老人向けのホームが建設されていたが、入居予定者が2割にも満たず運営会社が倒産してしまったという、いわくつきの建物だった。安い特別養護老人ホームに切り替えようにも建設費が高すぎて回収できず、また田舎過ぎて競売にかけても値が付かなかった。


 莫大な負債の一部なりと埋め合わせてやろうと、組織の支援者のひとりが善意を発揮して500万で買い取ったが使い道に困っていたところ、ナオコたちが現れて性的搾取に苦しむ少女たちの受け皿にしてほしいと頼み込んだ。遊ばせておくよりはと快く貸与してくれて、現在は40人の少女が起居する場となっている。


 気さくそうなおばさんが、カオリたちを出迎えた。


「はーい、みなさん初めまして~。施設長の山中といいます。ここは安全だから、みんな気を楽にしてね。困ったことがあったらなんでも言ってちょうだい。ブラのサイズから生理用品のメーカーまで、何でも相談にのるからね」


 タマエは怪訝に思った。これが地獄の強制労働施設から生還した子たちなのかしら。まるでこれから入所するかのような暗さである。


 同行してきたシロとクロが目蓋を泣き腫らしていた。特別な共感覚に加えて感受性の強いふたりには、カオリの、エミの、ナオコの悲しみが痛切に伝わってしまうのだった。


 少女たちを代表して、ナオコと同じくらいの背丈の子がタマエに挨拶した。


「山中さんですね。自分カオリっていいます。今日からお世話になります。よろしくお願いしまーす」


 カオリが頭を下げた。少し遅れて、みんなも「お願いします!」といって一礼した。


「はーい、よろしい。みんな若いのに、ちっとも元気が無いから、心配しちゃったわ。長い時間、バスに揺られて疲れちゃった? ごはん用意してあるけど、胃が受け付けない人は無理しなくていいのよ。おにぎりにしてとっとくから、あとでゆっくり食べてね」


 その言葉に、カオリが、エミが、みんなが嗚咽を漏らした。こうして彼女たちは部品から人間に戻ったのである。

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