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普通の関西人、魔法使いになる  作者: かわむら咲
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〜廃校寸前の魔法学校での魔法奇譚〜

初めまして、かわむら咲です。前々から、小説とか書いてみたいなーと思っていたのでゆるふわっと書いてみることにしました。宜しくお願いします。

ーまだ、死ぬわけにはいかない。

直感的にそう思う。冷たく黒い波に呑まれながらも懸命に平穏を願う。



 いつも通りだった。いや、ちょっとだけ特別だったかもしれない。

朝焼けをたたえた空に淡い桜の香りをはらんだ風が吹く、春の朝。

春の朝、新しい生活に高鳴る気持ちを感じつつ、狭い布団で目を覚ます。

自分の他にあと四人いる弟妹を起こせば、1日の始まりだ。

「母さんが朝飯作って待ってんで、起きんと俺が全部食うよーっ」

「まってや、まだゆうちゃん寝てんで」

「しゃあないな、一緒に起こそか、圭」

「そうやな!」

「「 お は よ ー ! ! 」」

「…おはよー。お兄ちゃん達朝から元気ええよな」


 やっと、食卓に全員が揃った頃。父母俺入れて七人、目の前に並ぶトーストの香気が皆の食欲を盛んにする。

引っ越したばかりの部屋には段ボールやらが雑然と積まれていてイマイチ居心地良くないが、それもまたいい。

適当に置かれた机を囲んだ家族は普通に朝食を、その時だった。

ぐらんとする。なんだ酷い眩暈かと思って顔を上げると、目の前の景色が違うのに気が付く。

痛い。助けて。お兄ちゃん。広臣。

助けを求める声に動こうとしても、足の上にふせる食器棚で思うように立ち上がれない。

 「父さん!!!母さん!!!ゆう、圭、みらい、剛人!!!」

 とりあえず、名前を呼んでみる。四方から助けを求める声と謎の轟音が耳の奥を揺らす。

なんか、眠たい。このまま皆死んでしまうのならば、別に今意識がなくて困ることはない。

悪あがきは試した、でも皆各々諦めてるだろう。とりあえず、助かるのは助かってくれ。

俺はもう無理や。


 冷たい、痛い。刺すような痛みは足から。絶え間なく口や鼻から流れ込む濁流は気味の悪い味がして、息が

できない。咽せる。咽せ返る。辺りを見れば、流れる家、車、人、血。さっき醒めたのにまた遠のいていく意識の中でずっとずっとただ家族の無事を祈る。



 ぼんやり霞む視界は、あ、眼鏡がないからか。

なんにせよ、ここがもうこの世でないことくらい馬鹿の俺でも示しが付いている。痛みも何もない。

あんな目にあったんだ、天国にくらい行きたいものだ。

立ち上がって辺りを見れば、海。白い砂浜?多分遠くの城のようなもの?

天国と言うにはあまりに殺風景で、大阪や神戸と言うにはあまりにも綺麗な砂浜。

ここどこなんだ。

死んでないけど、どこも痛くない。

じゃあ、どこなんだ。

とりあえず、自分を見てみる。汚れて、びしょ濡れの部屋着。髪を触れば、濡れている。

こりゃ、漂流やな。まあ、歩けば誰かいるだろう。


 街らしきところに差し掛かった。後ろから、走る音が聞こえて来る。あまり活気のないここではこちらに向かってくるのがよくわかる。誰だろう、立ち止まって振り返ってみる。

 「djakjfcslafljflhoieoihhlalkslhljcljshlgclgalgosuflfe!!!!!!!!!!」

 「何言ってんのかわからんのやけどー!!!」

 ありえないほど長い黒髪をバサバサ揺らしながら走る自分と年の近いように見える少女はわからんとの旨を叫び返すと、ハッとしたようにポケットから何か取り出して口に投げ入れる。

 「ごめんなさいー!こうしないとダメなんでしたー!ごめんなさーい!」

 「この距離なら叫ばんでもええのに」

 「はっ、そうですね!」

 「俺は五代広臣(ごだいひろおみ)っていうんやけどここどこかと君誰かだけ教えて、あと君が今食べたんホンヤクコンニャク?」

 「ホンヤクコンニャク…?なんでしょう、あ、名前ですね!私はエレナシア。エレナシア・マリエルベルト・メイガーデンです。あと、ここがどこかですよね、あなたの出身国と思われる国よりだいぶ北西にあるところです!」

 「どこやねん、だいぶ北西て…。」

 「いや、私もあんまりわからないんですよ、ごめんなさい。」

 いやわかっとけや。そう思いながらついてこいと言う彼女についていく。

だんだん、城のようなものに近づいていく。というか今城の目の前やん。

 「ここ何なん?」(小声)

 「私の学校です。」

 「ここ学校なんや。」

 「はい、そうです」

 「ところで君はいくつなん」

 「17です」

 「タメやん」

 「タメって…ああ、同い年を表す言葉でしたね!広臣さんは大人っぽいですね」

 「君はなんや可愛らしいね」


 他愛無い会話をしつつ、ある部屋の前にたどり着く。今まで生きてて見たこと無いほど大きい木の扉、それを飾るツタのような模様の錆びた鉄の装飾具。エレナシアは、一歩下がって「失礼しまーす!エレナシアです!」と叫ぶと、ドアを押し開ける。かすかに手を添えて手伝うと微笑まれた。眼鏡が無いので部屋の奥がよく見えず目を細めると、奥の人影に驚く。白っっっっっ!!!バリ白いやんけ!!!!ほっそっっっ!!骨見えとるやんけ!!!

かすかに埃っぽい部屋の奥で散らかった本の整理をしているのがその人。ちょっと近づいたので顔を見てみると、顔立ちは整っていて…。眼球、なくね!??なんで!!??こっわ!!??今日だけで驚きキャパオーバーやからほんまにやめて…。その人物はこちらに顔を向けて驚く。こっちかて死ぬほど驚いとんねん。

 「おお!?え、誰!?エレナシアちゃん、この人誰!?」

 「俺もあなたが誰かわからないです」

 「あれ、ああ!がってん!!今日日本やばかったんだよね?」

 「はい、それよりあなたは誰でここはどんな学校なんです」

 「ここは私立中央魔法学校。僕はイノセント・イーツマン。ここの先生だよ。」

 「魔法ってそんな…?まあいいや、俺は五代広臣です」

 「急に色々あってびっくりだよね、とりあえず右の部屋でこれに着替えてタオルで頭拭いてきなよ、風邪ひいちゃうよ」

 「あ、ご親切にどうもありがとうございます」


 一通り、着替えが終わって、頭を拭きながら考える。窓から射し込む西日が少しだけ眩しい。

って、なんやねん!結局何やねん。魔法って何やねん。怪しっ!で、あん人こわっ!めっちゃ親切やけど見た目でビビるわあんなん!!なんかようわからんし!俺はとりあえずここに連行されてきたんはわかる。でも何で!?どうしたらええの!?とりあえず、さっきのところ戻らなあかんよな。よし、もどろ。

 「五代です。失礼しますね」

 「おお、早いね!」

 「で、何です?」

 また別の部屋に案内してもらいここが今日から君の部屋だからとりあえずゆっくり休め、と言われた。少し風通しが悪いのか、ちょっと暑い。置いてある少し古めかしいベッドに腰掛けて、先ほどまで話されたことなどを思い出す。話は、聞いた。でもあんまり何が何だかわからなかった。ここはヨーロッパぽいどこかでその中のどこかの魔法が残る土地。で、ここはそれを教える学校。で、エレナシアってのはここの生徒であの親切な人がここの先生。で、俺は今日からこのよくわからない場所の生徒。住む場所も食事も保証してもらえる、と。いや、わかるけど、いまいち理解しきれない。普通に日曜を過ごすかと思っていた俺には、理解できない。今日一日、色々ありすぎた。まあ、安心できるとこっぽいのかな。謎は、考えるのは後でもいいような気もしてきた。家族もここに流れ着いたりしていないかな。



読んでくださった方がいたら、ありがとうございます。

よかったら、改善点や感想など教えていただけると嬉しいです。




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