03 -- End mark.
「が……はっ?」
「あなたは、あなたの思う世界に連れて行かない」
「ごふっ」
瑞浪あずさは口から血を吐き出す。
それを手で受け止めて、漸く自らが出した血であることを理解する。
「……あはは、あははっ! そうか。そう来たか、信楽マキさん!! 私の生み出す世界に反抗出来ないなら、私を、私そのものを殺してしまえば良いと!!」
「あの大量殺人の手向けになるかどうかは分からないけれどね。いずれにせよ、あなたの負けよ。瑞浪あずさ」
「私のっ、あははっ、負けえ? あはあはあはああっ、そんなことどうだって良い! 私は、あははっ、私の世界を実現させればそれだけで充分……あははっ、あははははっ!」
倒れそうになる彼女を、肩で支える。
もういつ死んでもおかしくないのだ。少しぐらい自由を眺めてやっても良いだろう。
それに、私の『断罪』は終了した。
もうこれ以上、彼女に与える罪は、罰は、存在しないのだ。
「あはははははははっははははははっはははははは。はははっははっはははっははははは」
もう彼女は笑いが止まらなかった。
無事自分の世界を実現させることが出来たからだろうか?
それとも自分の世界を見る前に殺されてしまったことが悔しかったからか?
きっと問いかけても答えてはくれやしないのだろう。
歩いて行くうちに彼女が静かになり、身体が冷たくなっていく。
死んでいったのだろう。
外に出る。多くの人間が倒れている。きっともう、意識の統一が行われた後なのだ。
私もそう遠くないうちにメロディが流れてくることだろう。
さよなら、あずさ。
さよなら、世界。
さよなら、わたし。
<End Mark>




