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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
七章:お見舞いは突然に
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十六話

 そのまま森の中へと姿を消す。


「はー、一時はどうなることかと思ったぞ……」


 兵士ってあそこまで頑固なのか。頑固っていうか、そういう職業なんだろうな。王に従い忠義を果たすっていう感じか。


 きっとそういうふうに教育されてるんだと思われる。それでも尚、父さんは命に背いて母さんを連れ去った。それだけ意思が硬かったんだろうな。もしくはそれほどまでに母さんを愛していたか。


 どっちでもいいか。


 とりあえず町に戻る必要はない。ようは父さんっぽいやつを身代わりにして差し出せばいいんだ。軍部としても父さんが生きていたことは隠しておきたいだろうし、今回の派兵だって別の理由で処理するはずだ。


 昔なんかの漫画で読んだことがある。人間の構成成分だ。まあだいたいはタンパク質みたいなところがある。知らないけど。


 成分のすべてを似せることはできないが、それっぽく偽装することは難しくない。


 まずは腕を引きちぎって俺の分身を作り出す。


 右手で左腕をつかみ、力いっぱい引きちぎる。


「やるぞ、俺はやるぞ」


 右手で左腕をつかみ、力いっぱい、引き、ちぎるんだ……!


「ふー、ふー……」


 これ痛いんだよなあ。やだなあ、やだなあ。


 こんなことしてたら一生森の中から出られない。


 意を決して奥歯を強く噛み締めた。そして、左腕を力いっぱい引きちぎった。


「んんんんんんんんんんんんんん!」


 痛い! すごく痛い! 一瞬だけど意識が飛びかけた。涙はとめどなく流れ出てくるしどうにかなってしまいそうだ。


 待て待て、もしかすると痛覚を鈍らせる魔法をかけておけばなにも問題なかったんじゃないだろうか。


 今からでも遅くないな、ちょっとかけてみるか。


 痛覚を鈍らせる魔法、ニブクナールで痛みを緩和させた。


「痛くねーわ……」


 エンターテインメント演出のためにのたうち回ったようなものではないか。痛くないにこしたことはない。次から痛覚を殺していこう。今回みたいなことがあるかどうかは不明だけれども。


 とにかく、この腕をスライム状にして増殖。父さんと似たような形に変形させてから、また俺の体の一部として構造を変質させる。これであっという間に父さんに似た俺の偽物が出来上がるわけだ。動かないし生き返ることはないけど、臓器はちゃんとあるし血も流れてる。


 殺したことを明確にするため、心臓に向かって光線を打ち込んだ。さすがにこれだけ大穴が空いてれば問題ないだろう。


 しかしまあ、偽物とはいえ父さんを攻撃するとうのは気分がよくないな。家に帰ったらシアにでも癒やしを求めよう。アイツは嫌がるだろうけど。


 作戦は完璧だ。この偽父さんを渡して一件落着といこうじゃないか。


 一応顔を確認してから抱きかかえ、兵士たちがいる方に向かって森を飛び出した。もしも兵士が病院に偵察に来たら終わりだが、早めに退院もできそうなので時間稼ぎだけできればいい。


 兵士たちの前に降り立ち、偽父さんを地面に放り投げた。


「これでいいんだろう?」

「本当に殺したのか……」

「そういう契約であったからな。それを持って早急に立ち去れ。私とお前は一時ではあるが契約を交わした仲だ。余計なことをしようと考えぬことだ。もしもその時は、お前の命はないと思え」

「余計なこと、とは?」

「当然私の話をするということだ。部下たちにもよく言っておけ。お前たちのことも見ているぞ、と」


 このままコイツらに我が分身を仕込ませて城に侵入させよう。これで城の内部情報も得られるしな。


「わかった、約束しよう」

「口だけでは信用されないようだから灸を据えておくか」


 そう言って、俺は数人の兵士に向かって細い光線を放った。無作為に選んだ兵士の頭を吹き飛ばす。これで一般兵もビビって口外することはないだろう。


「いいか、私はいつでもお前たちのことを見ているぞ」


 後方へと飛び、そのまま闇夜の中へと姿を消す。しばらく兵士たちの様子を見ていたが、戸惑いながらも偽父さんを持って来た道を引き返していった。


 予想以上に上手くいったため、思わず深いため息をついてしまった。ちなみに光線で撃ち殺した兵士は、偽父さんを作ったのと同じ方法で作った俺の分身たちだ。死んでいると言ってもいい俺の分身を俺が撃ち抜いたのだから罪悪感を抱くこともない。


 兵士たちを見送り、俺も自分の家に戻ることにした。こんなクッソ疲れるようなことはこりごりだぞ。


 衣装をしまってシアの元へと向かった。シアはスピカの部屋にいるはずだ。


 と、スピカの部屋に入ったがシアの姿はどこにもなかった。代わりに部屋の窓が開いていた。が、窓から出ていく用事なんてないはずだし、ただただスピカが開けていったんだろう。


「ねえ母さん」

「どうしたのアル」


 縫い物をしていた母さんに声をかけた。


「シアの姿が見えないんだけど」

「シアちゃん? 家から出ていった様子はなかったけど?」


 ってことはもしかして、あの窓から連れ去られた可能性が高いってことか。


 よくよく考えればいろいろおかしいのだ。偽父さんを渡して事件を解決したはずなのにラッパが鳴らない。つまり俺のクエストはまだ終わっていないのだ。

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