十三話
そんな俺の顔を見てじじいがニヤリと笑った。怖い怖い怖い。
「ということではいこれ」
とじじいが出したのは紙芝居だった。
「なんか久しぶりな気がするな」
「昔々あるところに金太郎という男の子がおった」
「お、なんか趣向が変わったな」
紙芝居にはちゃんと金太郎が描かれている。まあ本来しているはずの前掛けが完全にビキニ状態で乳首以外丸出しではあるのだが。一応モザイクは入ってる。
モザイクいる……?
「うーん、この」
「金太郎は非常に強く、挑まれた勝負には誠意を持って立ち向かう。まさに男の中の男」
「そういう話だったっけか……?」
熊と取っ組み合いをしてはいるがなんで熊の股間にモザイク入ってるのかがよくわからない。
「こんな大きな獲物も金太郎なら倒してしまう」
次の紙芝居ではクジラを持ち上げているシーンだった。金太郎にそんなシーンはない。
「つか股間のモザイク外れて顔にいっちゃってるじゃん。だーれだ、じゃねーんだよ。もうわかってんだよ顔はよぉ」
「そして金太郎は鬼を倒して日本一にのし上がりましたとさ」
「当たらずとも遠からず」
「了」
「終わった……?」
「次回! 世界一武闘大会編、開幕!」
「開幕じゃねーわ」
「はいここで特殊クエスト」
めくられた紙芝居には【大切な人を守れ!】と書かれていた。
「またとんでもなく漠然としたもの用意したな」
家族とかって書けばもっと楽なものを。
「お主が大事に思っているもの、まあ大体七割とか八割守ったらクエストクリアってことで」
「もっとちゃんとして?」
「じゃあ七割で」
「そこじゃない」
そうなるだろうなとは思ったけどね。
「お主わかっておらんようじゃが、この家よりもお父上がおる病院の方が王都に近いでよ」
「ってことはつまり、こんなところで無駄話してる暇はねーってことだな」
「そういうことじゃな。善は急げじゃ」
「無駄話してたのお前だからな?」
完全に紙芝居のせいである。
「ワシは知らんぞ。ワシの話に付き合ったお前が悪い」
「話引っ張ったのお前じゃん……」
「まあこの話はこれくらいにしようではないか。終わらない戦いはすべきではない」
「だから終わる話なんだってば……」
コイツ、絶対非を認めないつもりだな。
「わかったわかった。もうそれでいいから」
さっさと行かないと父さんがどうなるかわかったもんじゃない。
夕方に出たってことは、夜中のうちには病院についてしまう可能性がある。というか間違いなく着く。そして町についた時点で止めるのが難しくなる。ということはもっと早くに止めなきゃいけない。
「はあ、すぐにでも出るか……」
「それがよかろう。兵士の数も多いからのう」
「できれば一般人には見られたくないからな。じいさん、俺の姿になれるよな?」
「当たり前じゃ、神様をなめるでない」
「神様のクセにできないこと多すぎるから訊いてんだろ」
「できるできる、めっちゃ変装できる」
「信用できねえ……」
信用はできないがやってもらうしかないな。いくら俺でも時間を止めることはできない。もちろん遅くすることもできない。もう少しで夕食だし、母さんになんて言い訳をすればいいかわからない。
「んじゃ行ってくるから、俺の代わりちゃんとやってくれよ」
「なんじゃ、シアちゃん連れて行かんのか?」
「シアの代わりをしてくれるヤツはいないからな。お前、分裂してシアの代わりできる?」
「できんことはない」
「マジかよ」
「でもワシ、すね毛隠せないんじゃよ」
「もうそういうのマジでいらないからこのポンコツクソじじいがよぉ」
こんなことをしてる場合じゃないっつーのに。
「んじゃ俺は行くから。父さんの方なんとかすれば、この町に兵士が来ることもないだろうしな」
「わかった。ママさんのご飯はワシが美味しくいただくとしよう」
「ちょっとは残しとけよな」
「お主にはハッシュドビーフをやろう」
「おめーが作った飯はいらん」
ベッドの下から衣装を取り出して着込む。そして颯爽と窓から飛び出した。ステルスをかければ誰かに見られるような心配もないだろう。




