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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
七章:お見舞いは突然に
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七話

 アイスを食べ終わり、シアの頭をくしゃくしゃっと撫でた。


「気にすんなよ。文句があるなら直接言う。それくらいお前だってわかってるだろ。俺が文句を言わないってことはそういうことだ。今回は王都を知るいい機会だと思うしな。まあさすがにアイスを食べ終わったら呪術師のところに向かおうとは思うが」

「わかった。それでいい」


 シアもアイスを食べ終わった。


 それからシアを先頭にして呪術師の居場所を目指した。たまにこちらを振り返っているのは俺がちゃんととついてきているかを確認するためだろう。


 俺たちは人々が賑わう場所からどんどんと離れていく。少しずつ柄悪い連中も増えてきたし、ホームレスらしき人たちの姿もちらほらいた。


「ここはどういう場所なの?」


 まだ昼間だというのにやけに暗く細い路地を進んでいく。

「ここというかこの先だな。ようするに仕事がない奴らが溜まる場所だ。格安の日雇い労働をしたりゴミを漁ったり、盗みを働いたりして命を繋いでる」

「どうしてそんなことになるの? やる気がないから?」

「世の中にはいろんな人間がいるってことだ。自分の才能に気づかずに、自分が苦手なことをし続ければ誰だって上手く行かなくて嫌になる。そもそも対人関係が苦手な人だっているし、大きな規模でいけば働くこと自体が嫌なやつだっている。仕事場が潰れて無職になった人もいるだろうし、他人には他人の事情があるってことだ」


 働いていないから、ホームレスだからといって簡単に見下してはいけない。無能ばかりというわけではないし、働く意欲がある人だっている。それでも働けない事情があったりもするのだ。


「難しいわね、人間って」

「魔族にも仕事をしてるやつはいるだろ。農作物を育てるやつ、物を売るやつ、戦うやつ。でもそれもできなきゃ、人から奪って生活するしかなくなる。それさえできなきゃゴミを漁るしかなくなる。どこも一緒だと思うがな」

「私にはまだわからないわね」


 まだ、ということはこれから知っていく気があるということだ。


 くしゃくしゃっと、さっきと同じように頭を撫でた。


「やめてよ、髪が乱れるじゃない」

「すまんな。俺はこうしたい気分なんだ」


 やめてと言いながらも振り払う素振りはない。


「もういいわ」

「ありがとな」


 そんなやりとりをしながらも俺たちは先へと足を進めた。


 ホームレスのたまり場はすえた匂いがした。


 路上に座る人からジロリと睨まれた。威圧感はないがどうしても居心地が悪くて仕方がない。


「いたわ。あの人よ」


 シアが指差した先には一人の老人が横たわっていた。顔を真っ赤にし、酒瓶を抱いて気持ちよさそうに眠っている。


「マジか」


 みすぼらしいボロボロの布切れを身にまとう老人。あれが父さんに呪いをかけた張本人だというのか。


 しかし、目視でわかるだけでも他のホームレスとは魔力の大きさがまったく違う。


「間違いない。魔力の量も一般人にしては多いし、体には魔導紋も刻まれてるみたい。普通の魔術師とも違うわ」

「魔導紋か。魔法の威力を上げるためのものだったか。そうなると王宮魔術師だった可能性も低くはないな」


 だがどうしてそんなやつがここにいるんだ。


「とにかく話を訊きましょう」

「話が訊ける状態かどうか難しいところではあるがな……」


 酔っぱらいにまともな話が通じるとは思えない。


 それでも父さんの腰痛を直すためには仕方がないか。


 腰痛を直すために元王宮魔術師らしい男に話しかけるっていうのも間抜けな話だな。


 近付いて肩を揺らす。


「おいじいさん、起きてくれ」


 何度か肩を揺らし、じいさんの目蓋が開いた。


「なんだお前ら、俺に用事か?」


 むくっと起き上がり、目をこすりながら民家の壁に寄り掛かる。


「アンタ元王宮魔術師だったりとかしないか?」

「よくわかったな。アンタも魔術師か? ああわかったぞ、俺の噂を聞きつけて弟子入りしたいんだな? 悪いが魔術師はもうやめたんだ」


 じいさんはへらへらしながらそう言った。


「弟子入りじゃねーよ。アンタに訊きたいことがある。前に誰かに腰痛の呪いをかけたことはないか?」

「腰痛? あー、本当は別の呪いをかけようとして間違えて腰痛の呪いになっちまったことならあるな」

「それだ。誰にかけた?」

「名前は忘れちまったよ。でも陛下に仇をなす狼藉者だったっていうのは覚えてる。大男でな、軍の中でも指折りの猛者だった」

「他のやつには腰痛の呪いはかけてないのか?」

「腰痛の呪いなんていう間抜けなもん、王宮魔術師がかけるわけないだろ。その時が最初で最後だ」


 それだと辻褄が合わない。父さんは根っからの農夫だったはずだ。でもコイツが術者で、コイツ自身が大男にしか呪いをかけていないと言っている。


 本当であれば呪いを解いてもらうだけでいいのだが、このままではどうにも釈然としない。


「なあ、その男ってのはなにをしたんだ? 王宮魔術師が呪いをかけたんならそれ相応のことをしたんだろ?」


 老人は酒を一口飲み「ぷはー」と酒臭い息を吐きかけてきた。ぶん殴ってやろうかと思ったが、シアに拳を止められてしまった。

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