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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
六章:逃げキレ!
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二話

 ビリーが大きな木箱を持って俺の家にやってきた。汗っかきが重いものを持って歩くというのは局所的大雨が降っているのと変わらないんだなと知った。木箱までびちゃびちゃだぞ。


「なんだよそれ」

「世紀の大発見だ」

「そういうのは頭の中のもう一人の自分とやってくれ。じゃあな」


 ドアを閉めようとしたが木箱が邪魔して閉まらない。


「ちょっと下がってもらえる?」

「いいからいいから。本当にすごいんだって」


 無理矢理家に入ってきやがった。いったいなんだっていうんだ。


 ビリーは木箱をテーブルの上に置いた。その汗まみれの木箱をテーブルに置くんじゃない。


「で、なにが世紀の大発見だって?」


 仕方がないのでイスに座って頬杖をついた。ビリーがこれだけ強引に家に押し入ってきたのだ、少しくらいは話を聞いてやってもいいだろう。一応友人ということになってるわけだしな。


「実はこの場所は昔軍部の実験場だっていう話は知ってると思うが――」

「待て待て待て、衝撃の新事実だしなにいきなりぶっこんで来てんの? 後付設定にもほどがあるだろ」

「それが本当なんだ。ちゃんと文献も存在する」

「どこに?」

「町の図書館に寄贈されてる」

「図書館行かないから知らんけどそうなのか……」

「文献には何百年も前にここが軍部の実験場だったことが書かれていた。町ができるまえの話だよ」

「実験ってなんの実験だ? まさか人体実験とか言うんじゃねーだろーな」

「そのまさかさ。究極の生物兵器の人体実験をしてたんだ。そしてこれがその実験で作られた装置」

「ドヤ顔で言ってんじゃねーぞ持ってくんなよそんなもん。つかどこで見つけてきたんだよ」

「文献に載ってた暗号を解読したんだ」

「めちゃくちゃ都合がいい展開になったな」

「あんなのマジカルみーちゃんのパズルに比べたら楽勝だったなり」

「あーもう情報量が多いなお前は。なりってなんだよ、いきなりわかりやすくキモい感じを演出しなくていい。あとマジカルみーちゃんってなんだよ」

「マジカルみーちゃんは王都で人気の魔法少女マンガさ」

「暗号解読となんの関係があるんだ? 暗号だらけの謎遺跡に行ってお宝を探し出すトレジャーハンターじゃあるまいに」

「もしかしてマジカルみーちゃんのファンなの? 知らないフリしちゃってこのこのっ」


 ビリーは嬉しそうに肘を当ててくる。


「トレジャーハンターなの……?」

「それも凄腕のね。弱気を守り悪しきを挫く正義の味方でもある。決めゼリフは「天国の母ちゃんも悲しんでるぜ」だ」

「それだけ聞くと面白ハードボイルドなんだけど魔法少女なんだよな? 魔法少女がトレジャーハンターして正義の味方なの?」

「老若男女に大人気だよ」

「詰め込みすぎて内容が想像できない」

「必殺技はラブリーシンドローム」

「愛・症候群。じゃねーわ。もういいよその先は聞かん」


 気になって夜も眠れなくなっちゃう。今度マンガ借りよう。


「で、木箱に戻るね」

「そうしてくれ」


 ビリーが木箱からゴテゴテしたツボっぽいものをナチュラルに取り出した。


「待て待て待て、なんでそんなに動きがしなやかなんだよ生物兵器だって自分で言ったよな? なんで取り出したんだアホなのか? 装置が作動したらどうなるかとか想像できないのか? なんなんだお前はアホなのか?」

「二回言わなくてもわかるけどボクはアホじゃないからね?」

「じゃあなんでその壺出したんだよ。生物兵器なんだろ?」

「大丈夫だよ、取り出したからってなにかが起きるわけじゃないんだよ。バカだなあアルは」

「手を滑らせて落としたらとんでもないことになるだろうが」

「大丈夫だって言ってるじゃないか。これめちゃくちゃ軽いんだよ? ほらこんなこともできる」


 壺を持って数十センチ上空に投げた。そしてキャッチ。


「できねーのかよ!!!!!!!!!」


 壺は真っ逆さま。床に落ちて無残にもバラバラになった。が、特になにも起きない。


「ここここここういうのは壺の中になにかが入ってるんだよ。壺が割れたくらいじゃなにも起きないよ」

「めちゃくちゃビビってんじゃねーか」


 確かに、割れた壺の中には金属製の小さな箱が入っていた。木箱の中に壺、壺の中に金属の箱、マトリョーシカかなにかかよ。


 箱には赤いボタンがついていた。押してくださいと言わんばかりだ。


「もう物騒だから持ち帰ってくれよな、それ」

「もう、仕方ないなあ」

「お前が主導権を握ってるみたいな感じにするのやめてもらえる? めちゃくちゃムカつくんだけど」

「それじゃあボクはこれで帰るね」


 金属の箱を拾い上げ、ビリーはドアへと向かっていった。


「なんのために来たんだよお前は……」

「世紀の大発見を友人と一緒に祝いたかった。ただそれだけだよ」


 親指を立てて白い歯を見せるが、こっちとしては迷惑極まりない。


 ビリーはスキップしながら「じゃあねー」と出ていってしまった。木箱と割れた壺をそのままにして。


「はた迷惑な男だ……」


 ホウキとチリトリを出してきてそれを片付ける。母さんとスピカが父さんのお見舞いにでかけててくれて助かった。なにか起きていたらと考えたくない。

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