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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
五章:ドッラゴンを退治しろ!
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一話

 朝起きるとスピカがテーブルに突っ伏していた。たしか今は夏休み中だったな。


「暇そうだな。宿題はやったのか?」

「お兄ちゃんと一緒にしないで。三日で終わらせたよ」


 俺は休みが終わる一週間くらい前に一気に終わらせるタイプだったからな。俺を反面教師にしていい子に育っている。思春期のせいか言い方に棘があるけれど、きっと内心お兄ちゃん大好きに違いない。


「じゃあ友達と遊びに行ったりしないのか?」

「友達はみんな家族旅行でいない」

「都合良すぎか」

「だからやることもないんだ」


 今度は身体を反らして大きく伸びた。うん、胸部装甲はまだまだ発達途中だな。ちゃんとお兄ちゃんはお前が大きくなるまで見守ってるぞ。なにが大きくなるまでとは言わんが。


「お兄ちゃんは暇なの?」

「あー、まー、午前中は畑仕事するけどその後の用事は特にないな」

「ふーん、そうなんだ」


 スピカは口を尖らせてそう言った。これはもしやフラグというやつではないのだろうか。


「じゃあ今日はお兄ちゃんとどこか行くか」

「どこかってどこ?」

「馬で王都にでも行くか。都会でおしゃれな服でも買ってやろう」

「買ってくれるの?」


 キラキラと目を輝かせるスピカ。


「お兄ちゃんに任せろ。早めに畑仕事終わらせてくるから、十時くらいにはここを出よう。そうすれば向こうで遅めのお昼ごはんが食べられるぞ」

「うんわかった!」


 さっきのグータラモードが一気に消し飛んだらしい。


 とにかく今日は妹と二人で買い物に行くことが決まった。そうとなれば畑仕事なんて一瞬で終わらせてやろう。俺にかかれば大したことはない。いつもは人間として仕事をしているから時間がかかるのだ。


 そして畑へ。


「どうしてアンタの見栄のために私たちが頑張らなきゃいけないのよ!」


 シアにケツを蹴られた。


「仕方ないだろ。どうやっても畑仕事には人手が必要なんだから」

「私締め切り近いんですけどぉ」


 ネティスは泣きそうである。


「お前らビリーとソニアを見習え。もくもくと仕事をこなしてるぞ」


 友人二人も動員した。当然文句を言っていたが、俺の手にかかれば懐柔も難しくない。


「おいアル、約束忘れるなよ」


 ビリーは身を寄せてそう言う。正直デブがタンクトップというのはかなりキツイ。


「わかったわかった。ちゃんと偶像歌姫の写真集買ってきてやるから。店に置いてなかったら知らんけど」

「それは困る!」

「努力はするから」


 身体に触れるのは嫌だったので肩を叩く振りだけしといた。


「ちょっとアル」


 今度はソニアだ。


「忘れないでよね。なんでも言うこと利いてくれる券」


 ソニアを懐柔するのになにをしたらいいのかわからず、一回だけ言うことを利くという権利を進呈した。これでいいかどうかは未知だったが、なんだかんだ言って受け取ったということはそういうことなのだろう。これからどんな無茶振りが来るかは少し怖いところではある。


 ちなみにローラにも頼んだのだが、彼女は彼女でとんでもない速度で畑を耕しているので話をする暇がない。


「最近出番減ったな」

「我が剣技を喰らえー!」


 地面に剣技を使うんじゃない。まあ仕事は早いからいいんだけども。


「肥料持ってきたよー」

「おお、ご苦労ピル」


 ブタ状態のピルには肥料を頼んでおいた。魔力の量を調整するだけで身体の大きさを変えられるのがわかったので非常に助かっている。今は牛くらいの大きさなのだが、これくらいの大きさだと使い勝手がいいのだ。


 友人たちをこき使い、俺は畑仕事をこなしていく。自分ひとりでもなんとかなると思ったのだが、どうやっても一人で速度を上げたところで意味がないことに気がついた。つまり同時進行しなければ終わらないのだ。腕を切り離して分身を作り出すことも考えなかったではないがめちゃくちゃ痛いのでやめた。痛いのは嫌だからな。


 こうして畑を耕し、新しい野菜の種を植えた。ついでに野菜を収穫して手伝ってくれた友人たちにおすそ分けした。一応出荷分とは別枠なので問題はない。親父がいても同じことをしただろう。


 解散し、俺、シア、ピルで家に戻って三人で風呂に入ることにした。


 俺とピルが先に身体を洗い浴槽へ。いつもどおり、ピルが俺の股の間に座った。収まりがよく、新しい妹ができたみたいで嬉しい。


「シア、抵抗しなくなったな?」

「抵抗しても無駄だって気付いたわ」

「嫌じゃないの?」

「別に嫌じゃないけど」

「じゃあなんで嫌がってたの?」

「そんなこともわからないわけ?」

「さー、わからんなあ。言ってくれないとわからないんだよなぁこれが」

「わかってるって顔してるけど」

「わかんないからちょっと言ってみ」

「ちょっともクソもないでしょうが」

「いいから」


 シアは湯船に入り、顔を逸らした。


「恥ずかしかったからよ」


 口を湯船に入れてぶくぶくとやりはじめてしまった。マジで恥ずかしがってるやるだ。


「じゃあ今は恥ずかしくないわけか」


「恥ずかしくないわけじゃないけど、さすがに慣れたわ」

「まあうちに来たときは俺とスピカと母さんって交代で風呂に入ってたからな」

「スピカとアルテナはわかるけどなんでアンタと一緒にお風呂入らなきゃいけなかったのよ」

「裸が見たいから」

「なんで二人ともアンタを止めようとしないのか」

「信用されてるからな。それにあの時、二人には俺の姿は見えていなかった」

「ただの変態じゃない……」

「過ぎたことをいちいち気にするんじゃない。それに今は見えてる。それでもなにも言って来ないってことはそういうことだ。気にしすぎなんだよお前は」

「気にしない方が問題でしょ」

「まあこれからもよろしくな」


 ピルの胴体を持ち上げて立ち上がった。これ以上入っているとピルがのぼせてしまう。


「今日はスピカとデートだっけ?」

「そうだ。お前にも土産を買ってきてやろう」

「ふーん、期待しないで待ってるわ」


 一人で浴槽を占領できるからなのか、浴槽の縁に腕を乗せて気持ちよさそうにしていた。


「私とはデートしないのに」


 出ていくときにそんな小声が聞こえてきた。そういえばシアと二人ででかけたことがなかったな。一応嫁候補として機嫌を取っておくのも必要か。いや別に嫌というわけではない。ただ今までタイミングがなかっただけだ。

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