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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
四章:暗殺者を捕まえろ!
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十一話

 森の拓けた場所に着地すると、ピルの姿が人間へと変わった。モンスター状態のときはあんだけデカかったのに、人型に戻ると今までのピルのままだ。


「いたっ」


 ピルが元に戻るのと同時にそんな声がした。声の主が誰なのか、そんなのは一目瞭然だった。


「なぜ母さんとスピカがここにいるのか」


 お尻をさする二人の姿があった。


 スピカがスッと立ち上がり、スカートのホコリを素早く払った。


「ピーちゃんが海に行くっていうから連れてきてもらったの」

「ピル、二人に喋ったの?」

「みんなで行った方が楽しいと思ったの! ダメ?」


 そういうキラキラした上目遣いは卑怯だ。


「ううん、ダメじゃないよ」


 思わず頭を撫でてしまった。


 が、スピカがなんとも言えない表情でこちらを見ていた。このあとの展開は想像に難しくない。


「スピカが来てくれて俺は嬉しいぞー」


 スピカの頭に手を乗せ、ちょっと癖がある髪の毛を優しく撫でた。


「べ、べつに私は嬉しくないけど? お兄ちゃんが嬉しいならそれで良かったんじゃない?」


 今は反抗期だから仕方ないが。きっと数年すればもうちょっと素直になってくれるだろう。


 しかし、これからどうしたものか。スピカと母さんがいると交渉が難しくなる。取れる手段は一つしかないかもしれない。


 目を閉じて魔王軍の場所を探る。魔力感知の範囲を最大まで広げればいい。


 魔王軍は海岸の左端に固まっている。そうなれば俺たちは右端で海水浴をするのがいいだろう。


 ピルの背中に乗せていた荷物を皆で持った。なんだかやけに大きな布袋がある。布袋というかこれ

は……寝袋か。


 一応、念の為中を見た。


「き、奇遇だな」


 中にはソニアが入っていた。


「もう突っ込むのも疲れたわ。さっさと出ろ」


 渋々といった感じで寝袋から出てきたソニア。まさか荷物に紛れて三人も余計に乗っていたとは。しかも非戦闘員。


 これからなにが起きてもきっと驚かないだろう。


「よし、こっちだ」


 森の中を進み、俺たちは砂浜を目指した。ここからでも潮の匂いがする。


 数分歩けば白い砂浜と青い海が見えてきた。魔王軍がいる場所とここの浜辺は山の端っこで区切られている。魔王軍からはこちらは見えない。


 大きなレジャーシートを敷いて、パラソルを立てて、クーラーボックスから飲み物を取り出した。


「クーラーボックス」


 驚かないと思われた数分後の出来事だった。


 それにしても男一人というのもいたたまれない。ビリー……はいてもいなくても一緒だから結局こうなっただろう。


「お待たせ」


 と、ようやく女性陣が到着した。


「うむ、絶景じゃな」

「なんでしれっと俺の横に座ってんだよ」


 女性陣よりも先に禿頭に目がいってしまった。そして思わずひっぱたいてしまった。


「バカバカ、女性陣には見えておらんのじゃぞ。露骨な態度を取るでない」

「今ステルスモードなの? そこまでして水着見たいの? グラビアでも見てれば?」

「生で見るのがいいんじゃ。それにグラビアは豊満な肉体の女性ばっかりじゃしのう。こう、変化球が欲しくなるじゃろ」

「クソ変態発言だぞわかってんのか。仮にも神様じゃねーのかよ」

「仮ではない。神様じゃ。ほれ、女の子たちが呼んでおるぞよ」


 見れば女性陣みんなで手を振っているではないか。シアは黒くて露出が多いワンピース、ネティスは白いワンショルダービキニ、ソニアは青と白のオフショルダービキニ、スピカは黄色いフリルビキニ、ピルはピンクのワンピース、母さんは大胆な緑色の三角ビキニだ。母さん、ちょっと年考えて欲しい。


 俺はじじいのことを忘れようと首を横に振った。そしてビーチボールを持って砂浜を駆け出す。


「ビーチボール」


 驚かない、というのは嘘だ。なんて誰への言い訳かはわからないが心の中でそう呟いた。


 スピカ、母さん、ソニア、ピルは四人で浅瀬でパチャパチャ遊んでいる。残ったのは俺、シア、ネティスだ


「さて、これからどうするか」


 腕を組んでそう言った。遊ぶのは問題ないが、本題は魔王軍との交渉になる。どこかで抜け出して話をしに行かねばならない。


「仕方ないから私とアルで行くしかないわね。ネティスには三人を上手く言いくるめてもらって誤魔化してもらいましょう」

「わ、私がですか? できるでしょうか……」

「今やらなくていつやるんだ? 普段役に立たないのに」

「言い方ひどくないですか?」

「本当のことだからな。ってことで頼むぞ」

「もう強引なんですから!」


 女性陣の水着は名残惜しいが仕方がない。さっさと魔王軍の方を片付けて戻ってくればいいと考えれば少しだけ気が楽になる。


 ネティスにすべてを任せた俺たちは、素早く森の中を駆け抜けていった。


「っていうか水着のままなんだけど大丈夫なんだろうか」

「はい、一応上着だけは持ってきてあげたわ」

「気が利くな」



 渡されたシャツを頭から被った。


「いやいや、上着着ても水着ってことはバレバレじゃん」

「仕方ないでしょ! 私なんてこのまま行くのよ!」


 俺のは持ってきてくれたのに自分のは忘れたのか。


「それにちゃんとした交渉の場じゃないんだからそれくらい許されるわよ。たぶん」

「頼りない」


 頼りないが、一人で行くよりは頼りになる。戦力的には問題ないが、あの人数を前にするのは億劫だ。


「言い忘れたんだが」

「なによ」

「その水着、似合ってるぞ」


 俺がそう言うとシアの顔がみるみるうちに赤くなっていった。


「あり、がと」


 そういうところは可愛いんだよな。


 なんて思いながらも魔王軍がいる浜辺に向かい、森の中を駆け抜けていくのだった。

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