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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
四章:暗殺者を捕まえろ!
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九話

「あるところにおじいさんが暮らしていました」

「お、ちょっと趣向が変わったな」


 紙芝居にはおじいさんが一人で縁側でお茶を飲んでいるところが描かれていた。


「おじいさんにはそれはそれは可愛がっているペットがおりました」

「ペットに関する昔話……花咲かじいさんとかそのへんか?」


 ぴらっと紙芝居がめくられる。


「ケルベロスそれ。頭3つある。ペットにするやつじゃない」

「この犬、非常に頭が良くいろんな芸を教えるとすぐに覚えてしまう。おじいさんにもよくなつき、亡くなったおばあさんの御霊前にもちゃんと手を合わせる礼儀正しさ」

「犬じゃねーしペットにしては知能が発達しすぎてて怖い」

「どうしてこの犬を飼うことになったのか。それはおばあさんが死んだことを信じられず、黄泉の世界へとおじいさんが足を踏み込んだ時のできごと」

「どっかで聞いたことあるな。イザナミとイザナギのやつじゃない?」

「はい、特殊クエスト『夏だ! 海だ! ドキドキ、美女だらけの夏休み!~魔王軍との交渉に成功せよ~』」

「相変わらず会話が散らかってんな。本来のクエストがサブタイトルみたいになってるじゃん。あと海とかいかないでしょ、この辺の地形とか知らないけど」

「アノ山を超えると海ぞよ」

「あーアノ山ね」


 アノ山とは村に一番近い東である。


「でも海とは関係ないでしょ?」

「いーや、今魔王軍があっちの方向にいるのでな。ささっと交渉に向かって、魔王軍に襲われないように手を打つんじゃ。大群が押し寄せてからでは遅いからのう」

「使えそうな人間連れて海行けってこと?」

「話が早くて助かる。ワシじゃってたまにはちゃんとした情報流して、お前の人生の手助けをしたいんじゃよ。シアちゃんの魔王資質を解除するため、お前には神様コインを集めてもらわなきゃならん。いや別にワシが女の子の水着を見たいわけじゃないんじゃ。世の中には水着という需要を欲しがる層も一定数いるんじゃ。お主もまだ若いゆえそういう衝動もあるじゃろうし、ここはワシが人肌脱いでその衝動の手伝いをしてやろうという親心が働いたわけじゃ。戦闘力が低いスライムを仕込んでおいて女の子を襲わせたりなんてしようとは思っておらんよ? まあそういう状況になったら仕方ないとは思うんじゃがのう」

「話が長い。あとオタク特有の早口でしゃべんな。あと欲望に塗れてるからフラグとかじゃなくて「ああ、こういうことが起きるんだな」っていうのわかっちゃうじゃん」

「スライムはワシのせいじゃないからね?」

「絶対準備させてるやつじゃん」

「でも早く行かないとスライムたちも解散しちゃうっていうか」

「準備させてるじゃん?」

「いやいや、自然の摂理で海に集まるんじゃよスライムって。知らんの?」

「スライムだったときにそんな話を聞いた覚えもないし海に出現したこともないわ」

「でも受けるんじゃろ? 水着、見たいしのう」

「水着はこの際どうでもいいけどコインは欲しいから受ける」


 このクエスト成功させてもコイン四枚なんだよな。あと六枚か……。


「今「あと六枚か……」と思ったそんなアナタに朗報。なんと今回はコイン二倍のチャンス! 今すぐこの電話番号にアクセス!」

「二倍でも二枚にしかならねーわ。あと深夜のテレフォンショッピングみたいなのやめろ」

「注文が多いのう。それにホイホイコインあげたらありがたみがないじゃろ」

「確かにそうなんだけどね。んじゃまあ、コイン二枚で引き受けた。期間は?」

「一週間でどうじゃ。あの獣人の脚じゃとまだ魔王軍に合流してないじゃろうし、明日明後日にでも発てば追いつくと思うぞよ」

「獣人の後を追いかけて、それでいて村が襲われない程度に早めに着かなきゃいけないのか。人選に悩むな」


 ある程度戦闘もできて、脚が早くて、それでいて水着を着て様になるような人物か。


「悩むことなかろう。それにあの獣人、よくこの村に着いたなって思えるほど方向音痴じゃよ? 今頃どこかの山で半分遭難しかけておる」

「そういうのわかるもんなの?」

「そりゃ神様じゃからのう。風呂だって覗き放題じゃ」

「神様の能力を不純なことに使うんじゃありません。つかだったら水着とか見なくてもいいだろ面倒くせーな」

「そういうもんじゃないんじゃって。かー、わからんかー」

「わかるけどね」

「まあそういうわけじゃから、さっさとパーティ組んで出かけるがよろしい」

「問題はどうやって交渉するかなんだよな。時間くれつったはずなのにそれを守ってくれないわけだからな。どうしたもんか」

「やり方は任せるぞい。ドンパチやってくれた方が見応えはある」

「見応えよりもちゃんと完遂できるかが心配なんだっつーの」


 普通に、もう一度期限の話をしてみるのが最初の段階としては正しいんだろうな。いざとなった時のために、ちょっとばかし策を巡らせておくか。


「ワシはこれで帰るが、一ついいことを教えておいてやろう」

「いいこと?」

「ピルちゃんじゃがな、魔力を与えれば大きくなるぞい。身体に負担はかからないから、風船みたいにしぼんだら本体がよぼよぼになることもない」


 じじいは「それじゃあの」と出ていった。この後の展開を想像できない者はきっといないであろう。それくらい露骨な助言だった。

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