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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
四章:暗殺者を捕まえろ!
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八話

「前に村が襲われて、その話をしただけだ」

「そうは見えませんでしたが?」


 なるほど、会話までは聞いてないと。


「実際そうなんだから仕方ないだろ。証拠もないしな」


 俺がそう言うと、ミュレスは腕を組んで唸り始める。しかし、瞬時に会話の方向性を変えてきた。


「それはいいとしましょう。それでも魔族の獣人をやりくるめたのは間違いありません。あのクソダサい仮面は置いといて、アナタは我軍に必要なのです」

「そうきたか。だが断る。面倒だからな」

「それじゃあアナタがあの仮面の男であることを村民にバラします。それでどうでしょう」


 それは困る。口に出したらアウトなので言わないが、そんなことをされてしまったら俺の日常が消え去ってしまうじゃないか。あんな魔力を持ってるなんて知られたら、もうこの村には住んでいられない。


 どうしよう。と頭を抱えているとドアがノックされた。今客人の相手をしてる場合じゃないんだが……。


「ちょっと失礼」


 ミュレスにそう言ってからドアに向かった。この間になにか手を考えなくては。


 ドアを開ける。その瞬間、ミュレスを言いくるめる策が湧いてきた。湧いてきたというか、目の前のこの状況がすべてではあるんだが。


「悪いがミュレス、俺はやっぱり軍部にはいかないぞ。だって俺は仮面の男じゃないからな」


 ドアを大きく開け、ミュレスに見せつけてやった。


 家の外には俺が作った仮面と衣装を身にまとった誰かがいた。ブラックノワールと俺が両方存在しているのだから疑いようのない事実である。


「そ、そんな馬鹿な……!」

「俺はたしかに森に言ったし魔族と会話をした。それは認めよう。でもお前が昨日見たのは俺じゃない。コイツだろ?」

「しかし昨日家から出てきたのは――」

「背格好でしか判断してない。それに会話も聞いてない。俺が家から出てったのと、コイツが偶然俺の家の付近から森の方に向かったの、お前が見間違えたんじゃないか?」

「そんなわけありません!」

「でも現にこうなってるだろ。ちなみに俺はコイツと知り合いってわけじゃないんだけどな」


 仮面の男に目配せする。


「我が名なブラックノワール。正義の使徒である。魔族がこの村にやってきた経緯があってこの村を見守っている。それは事実だが、この青年とは関係がない。それだけを言いに来た。さらばだ」


 そして、ブラックノワール(偽)はどこかに行ってしまった。あれが誰なのかは考えるまでもなさそうだ。


「ちょ、ちょっとまってくださいよ!」


 と、ミュレスは家を出てそのまま走り去った。


 少し遠くの方でこっちに向かって礼をしたところを見ると、なんとか誤魔化せたと思っていいだろう。


 ドアを閉めてため息を一つ。再度ピルを膝に乗せて頭を撫でた。


「あー、どうなるかと思った」

「ホントにのう」


 後ろから声がした。


「いきなり現れるんじゃない」


 見るまでもなくじじいである。


「そういう言い方しちゃう? せっかく助けてあげたのにのう」

「それに関してはありがたいと思ってる。でもどうやったんだ? あれ、お前本人だろ?」

「ワシはテキトーに背格好も声も変えられるからな。あれくらい問題ないわい」

「どっか行くふりしてそのまま消えたってことか」

「そういうことじゃ。いやー、いいことした」

「うん、お前にしちゃ珍しくな」

「そんな扱いでいるとお主の正体をうっかりばらしてしまいそうじゃな」

「さすがにそれは勘弁して欲しい」

「そう思うんなら、もうちょっと自分の行動に責任を持った方がよいぞ? シアちゃんだってこれから人間に戻って、今までのような魔力が使えなくなるんじゃ。諍いは避けておいて損はない」

「それは間違いないだろうな。腑に落ちないが、もう少し気をつけることにしよう」

「ワシに説教されるの、そんなに嫌なの?」

「嫌に決まってるじゃん。くっそムカつくし」

「口が悪い」

「口が良くなったら俺じゃなくない?」

「んー、まあ確かにのう」

「まあいいや、これからはもうちょっと扱いを考えてやるか」

「それでよいのじゃ」


 じじいはうんうんと何度もうなずいていた。


「そうじゃ、忘れるところじゃった。次のクエスト、持ってきたぞよ」

「今回は早かったな」

「今回も、じゃろ。ワシは有能なんじゃ」

「で、次のクエストは?」

「よしよし、では紙芝居を始めようかのう」


 じじいが二回手を叩くと、空中から紙芝居が現れた。そんなこともできるのか、と関心したそばからその紙芝居を地面にぶちまけていた。


「ああ、ワシの……」

「チャッチできないの? それはさすがに恥ずかしすぎじゃない?」


 一人で紙芝居をかき集め、なにごともなかったかのように紙芝居を始める。


「コホン、それではいいかな」


 ピルが人型に変身し、空いてるイスに飛び乗った。


「わーい! かみしばいー!」

「ピルちゃんはくぁいいのう。それでは始めるぞよ」


 ピラッと紙芝居をめくる。どうでもいいけど「くぁいい」って言い方ちょっと気持ち悪い。

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