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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
三章:100万ウェン取得しろ! 
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最終話

 団らんの中を抜け出して外に出た。ベンチに座って夜空を見上げる。たぶんそろそろアイツが現れるだろうと思ったからだ。


「さすがマイフレンド。ちゃんとワシにももって来てくれたんじゃな」


 暗闇の中からハゲが現れた。


「友達じゃないわ。でも一応な」


 一枚の皿を差し出す。二本のマトゥタケをスライスして焼いた物に軽く塩をかけたものだ。


「高級食材は美味いのう」

「がっつかないところに妙な上品さを感じてしまった。ってそんなことはどうだっていいんだよ。で、今日はなんの用だ?」

「マトゥタケを食べに来た」

「それだけ?」

「それだけ。自分たちだけ楽しくキノコ狩りして美味しいもの食べるなんてずるいんじゃ」

「お前はそういうヤツだよ。わかってた、わかってたよ」


 そこでどういうわけかピーちゃんが俺の膝にまた乗ってきた。可愛いかよ。


 犬や猫のように膝の上で伏せて丸くなる。思わず頭や胴体を撫でてしまっても仕方がない。


「それは山で見つけたモンスターじゃな。飼うことにしたのか」

「このまま放置しておくわけにもいかないだろ。今までデカイ姿で山を牛耳ってたんだろうし、こんなに小さくなったら他のモンスターに食われてもおかしくない」

「慈悲の心、これもワシが育てた賜物じゃな」

「お前は一切関係ないから。むしろお前が俺にしてきた仕打ちを考えると、ちゃんと慈悲というものが残っていること自体が不思議だわ」

「でもそのモンスター、ただの豚ではないぞよ」

「知ってるよ。モンスターって自分で言ったじゃん」

「そうではない。そのモンスターは魔力を食うことで成長するモンスターなんじゃ。ベヒーモスって知らんか?」

「これがあのベヒーモス……? ベヒーモスってカバとかゾウとかじゃなかったっけ?」

「まあお主の元の世界で言うカバやゾウで描かれることが多いかもしれんな。しかしここではブタじゃ。で、この世界のベヒーモスは魔力を吸収して大きくなる」

「じゃあデカくなるのも時間の問題か。そりゃ、困ったな」

「そこでじゃ。神様コイン一枚でその体質をちょちょいといじってやろう」

「いやいや、それはさすがに可哀想だろ。勝手に身体を改造されて快く思うわけないだろ。言葉が通じないからって勝手なことできるか」

「お主、慈愛の心に目覚めたのか……?」

「いちいちうるさいんだって。でも、このままだとウチで飼うのも難しいのか。どうしたもんか」


 ぴょんっと、ピルフェットが四つの短い脚で立ち上がった。前足を俺の胸に当てて見上げてくる。


「お前、ひょっとしてこのじじいの言うこと利けって言いたいのか?」

「ぷぴ」

「そうなると野生には戻れなくなるぞ」

「ぷ、ぷ、ぷ」


 リズム良く俺の胸を叩く。大丈夫だ、とでも言ってるのだろうか。


「心配ないぞ。野生に戻る時にはちゃんと戻してやる。飼っている間だけってことになるのう」


 ピルフェットを見下ろすと、心なしか瞳が輝いて見えた。


 これは考えるまでもないって感じだな。


「わかった。お前がそれでいいって言うならやってもらうか」


 コインを一枚取り出してじじいに渡した。


「心得た」


 じじいがピルフェットに向かって手を伸ばす。まばゆい光に包まれ、どんどんとその光が大きくなっていく。


「おいおいおい! どうなってんだよじじい!」

「これでフィニッシュじゃ!」

「そういうのいらねーから!」


 一瞬にして光が収まった。それと同時に、膝にはずっしりとした重みを感じる。なんだか少し懐かしい。これはスピカが小さかった頃の――。


「うーん……」


 俺の膝の上で背伸びをする幼女がいた。


「うそでしょ……」


 髪はサラサラの淡いピンク色。身体は小さく、スピカが十歳くらいの時の大きさだ。


「おいじじい、これはどういうことだよ?」

「おまけ、しておいたぞ☆」

「そういうのいらないから。星とかつけんな。どうすんだよこれ、どうやって母さんたちに言い訳すんだよ」

「大丈夫、ちゃんと元の豚にも変身できる。変身さえできればこれがピルフェットちゃんだと証明できるじゃろ」

「全部俺に投げるってこと?」

「それでは、マトゥタケありがとうな。さらばじゃ」


 そう言ってじじいは消えてしまった。


「どうすんだよ、これ」


 くるりとピルフェットが振り向いた。人差し指を俺に向け、目を細めて明るく笑う。


「アル!」

「お、おう。そうだ」


 今度は自分に人差し指を向けた。


「ピルフェット!」

「合ってる合ってる」

「えへへー」


 今度は抱きついてきた。幼女の熱い抱擁は非常に嬉しいのだが、これからのことを考えると喜んでばかりもいられない。


「そういえば、スピカもこれくらいのときはめちゃくちゃ可愛かったな」


 今でも可愛いのだが、成長するにつれて子供っぽさが消えてしまうのはやはり悲しい。


 ではなく、俺は母さんやスピカにどう言い訳しようかと、それだけを考えていた。


「アル! アル!」


 俺の胸に顔を擦り付けてくるピルフェットの頭を撫でながら、深い蒼いに染まる空を見上げた。いくつも言い訳を考えておいた方がよさそうだ。

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