6歳 ー 2
今日は父さんがイノシシを狩ってきた。
ということでイノシシ鍋になったのだが、イノシシの肉はクセがあってなかなか難しかったような気がする。それでも母さんは料理が上手く、食べられなかったことなど一度もない。
「さ、たーんとお食べ」
大鍋がどーんと置かれた。
「「「いただきます」」」
手を合わせていただきますをする。こういうところは前の世界と一緒だ。もう違和感はないけど。
母さんのお腹には俺の兄弟がいる。まだ男か女かわからないけど、やっぱり兄弟ができるってのはいい。素直に嬉しくなる。
父さんはいつもどおりガツガツご飯を食べる。白米を頬張って、肉を口にいれて、咀嚼して、飲み込む。その動作が豪快で早い。
母さんは上品に食べてはいるがそこそこの量を食べる。妊娠のせいもあるだろうが、最近は特に太ってきたようだ。
俺はと言えば、食べたい気持ちはあってもたくさんは食べられない。六歳児の身体っていうのは難しい。胃の容量もそうだが、あんまり食べ過ぎれば心配されてしまう。
「もうお腹いっぱいなのかアルファルド! たくさん食べないと父ちゃんみたいに大きくなれないぞ!」
ガハハハと笑う父さん。いや、そこまでデカくなりたくはないんだ。アナタ身長二メートル超えてるじゃない。筋肉もそこまでいらないから。
「あらやだ、これ以上食べて筋肉だるまが増えても困るわよ」
うふふふと笑う母さん。筋肉だるまはさすがに可哀想なのでは。
まあ、二人共楽しそうに笑っているからいいけれども。
今回の転生先、レグルス家はいつも明るい。明るいというかいつもうるさい。物静かで暗いよりはずっといいけど、父さんの笑い声が豪快すぎて困る。
食事が終わって、父さんが俺を抱き上げた。
「もう少しでお前にも弟か妹ができるからなー! 楽しみだなー!」
抱き上げたままぐるぐる回る。パワータイプすぎて、いつも目が回るまで遊んでくれる。正直勘弁して欲しいけどここは我慢。楽しんでるふうを装って満面のスマイルで切り抜ける。
「ちょっとアナタ、アルの顔が引き攣ってるわよ」
「違う違う。これは心底楽しんでる顔だ」
「そう、それならいいわ」
と、言いながらキッチンに戻っていく母さん。いやいや、引き攣ってる顔は引き攣ってる顔だから。
いや待て、俺の顔引き攣ってたのか、知らなかったぞ。
「よーし! 三倍速だ!」
「まだ上がるの?!」
「そうかそうか嬉しいか! 父ちゃんも嬉しいぞ!」
「俺はこの状況楽しんでないけど父さんが嬉しいならよかったね?!」
もうちょっと身体が大きくなるまでの辛抱だ。身体さえ大きくなってしまえばぐるぐるされなくなる。
そう思いながら、父さんが飽きるまでぐるぐるされるのだった。