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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
三章:100万ウェン取得しろ! 
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六話

 いや、ちょっと待て。セイバーってことは剣だよな。剣で物を切ったらどうなるか、そんなものは見なくてもわかる。


「ちょちょ! シアちょっとだけ待って!」


 言ったところで止まらない。剣はすでにギガントマウンテンを真っ二つに分断していたのだ。


「おい! 天丼だってやりすぎるとつまんねーんだよ!」

「いや、私もまさかこうなるとは……」

「あとな、突っ込む相手はじじいだけで十分なんだよ! 性的な意味じゃなくて!」

「つ、次は上手くやるから……」

「小さくなるとアイツは足が早くなるの! わかってんのか!」


 シアが俯き、震えだす。


「ふえっ……」


 向けられた顔は涙でぐちゃぐちゃだった。


 こうなることが予想できなかったわけじゃない。しかしここまで打たれ弱いとは……いや、最初から割と打たれ弱かったな。


「あーもう、悪かった。悪かったって。もうキツイこと言わないから。ほらこれ、ハンカチで涙拭けよ」

「もうイジメない?」

「イジメたわけじゃないけど次からは気をつけるから。な? 頼むから泣き止んでくれ」


 シアはハンカチをそっと取り、涙を拭いた。


「ごしごし、ちーん」

「涙を拭く擬音と鼻をかむ擬音はいらねーんだよ」

「よし、いきましょうか」


 立ち直りが早いのはいいことだ。それにハンカチをそのまま返すとかいうお約束もなしだ。ちゃんと洗濯して返すつもりなんだろう。


「ハンカチをそっと俺のポケットに入れるんじゃない。洗濯して返せよ」


 俺の思考は一瞬で打ち砕かれた。なんなんだこの女は。


「一緒に住んでるんだからどっちが洗濯しても同じでしょ。さっさと行くわよ」

「ど正論だけどそこは気持ちの問題ってのがあるんだよ」


 ため息をつきながらギガントマウンテンへと視線を戻した。冒険者たちがなんとかしてくれているだろう。そんな考えがあったからだ。


 しかし、状況は最悪の方向へと向かっていた。


 冒険者たちのせいでギガントマウンテンがどんどん増殖していたのだ。


「どいつもこいつも使えねえなあおい!」


 最初はあの大きさがネックになっていたが、ここにきて数の多さが問題になった。


 こうなったらなりふりかまっていられない。


「手当たり次第にぶっ倒すぞ。このまま町に行かせるわけにはいかない。言っておくけどセイバーは禁止だからな」

「二度も同じことはしないわよ」

「お願いだからフラグ立てるのやめてもらえる?」


 まあ確かにフラグは立ったがシアはバカじゃないし学習能力もある。というかこれ以上面倒を起こされるわけにはいかない。次にバカなことをしようとしたら実力行使で止めてやる。


 個々の大きさは家三軒分といったところか。だが数がすごい。見た感じだと二十とかそれくらいだろうが、家三軒分が二十と考えると頭が痛くなりそうだ。


 急いで接近し、まず一体倒した。戦闘力は低いから一発で仕留められる。他の冒険者も巻き込んだ気がするが、今は気にしないことにした。


「エクスプロージョン!」


 右腕を振って爆発を巻き起こす。

「インプロージョン!」


 今度は爆縮。


「イラプション!」


 地面から炎を巻き上げ、一気に山どもを殲滅していく。最初からこうしておけばよかった。被害は甚大だが非情に簡単だ。魔力は高いから細かいことをやるよりずっといい。


 そしてようやく山は三体までに減少した。シアの攻撃で二体に。俺の攻撃で最後の一体が残った。


「ハッハー! 今までのやり取りは全部無駄だったようだな!」

「それ悪役のセリフだけど……」

「うるせー! 最後の一体倒して来い!」

「はいはい、わかりましたよ」


 シアはダッシュでギガントマウンテンに接近し、小さいダークバーストで一発で仕留めた。こちらを振り向き、親指を突き立てていた。また家に戻ったら褒めてやらなきゃいけないみたいだ。


「あー、終わった終わった」


 結構ギリギリになってしまった。スモールギガントマウンテンのダッシュ速度が早すぎるんだ。気がつけば、町までの距離は一キロもない。


 指を組んで背を伸ばした。金は入るし神様コインは手に入る。一石二鳥とはこのことか。


 次の瞬間、俺の横をなにかが通過していった。


「ん?」


 家一個分くらいまで小さくなったギガントマウンテンだった。しかも数十体。


 どこから湧いてでたのかはなんとなくわかった。冒険者たちが倒したやつだ。そうとしか考えられない。


 今から行けば追いつくことは可能だが、たぶん全部は破壊できないだろう。


「すまん、俺は無力だ」


 手を合わせた次の瞬間、ギガントマウンテンの群れが町へと突っ込むのが見えた。


『ミッションフェーイルドゥ』

「ちゃんとここも音量絞ってあるんだな。えらいえらい」

『ミッションフェーイルドゥ』

「音量あげんな。わかったから。失敗でいいから」


 ため息をついて、町の方へと歩きだした。


 疲れが一気にこみ上げてきた。今日はもう帰って眠ろう。もう、なにも考えたくないや。


 ネティスを抱えたローラが走ってきた。二人共泥だらけだ。たぶん俺かシアがギガントマウンテンをぶっ飛ばしたときに巻き込まれたんだろう。


「アルさんー、なんでぇ、助けてぇ、くれなかったんですかぁ」


 ネティスはめちゃくちゃ泣いていた。


「だから泣くなって。ローラと一緒にいたお蔭で命は助かっただろ」

「でもぉ、私ぃ、ずっとこのままだったんですぅ」

「ずっと抱えられてたのか。じゃあなにが不満なんだよ」

「やっぱり戦士としては失格かなぁってぇ」

「出会った瞬間から戦士としては失格だわ、アホか。さっさと帰るぞ。ローラはそのままネティス抱えてろ」

「心得た!」


 コイツらと一緒にいると体力が保たない。風呂に入って寝よう。


「アールーさーんんんんんん」


 家に帰るまで大人しくしてくれることを切に願う。まあネティスがなにかできるとは思わないが、しばらく泣いているんだろうな。

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