四話
「アンタ、本当に森の中が好きなのね。なにかといえば森の中に隠れたがる」
「だって、そこに森があるから」
「はいはい。なんでもいいからその試したいことっていうのをやってちょうだい」
「そう急かすな」
昔サイクロプスだったころに身に着けた「目からビーム」を試したいのだ。
「ねえ、こんな悠長なことしてて大丈夫なの?」
「心配ない。集まった冒険者の中で一番レベルが高かったのがローラだ。結局は烏合の衆でしかない」
「相変わらず口が悪い」
「物は言いよう。他人に厳しいだけだ」
「自分には?」
「自分のことは赤ん坊のように可愛がってるよ」
「ただのクソ野郎じゃないの……」
「ははっ、その嫁になる可能性があることをゆめゆめ忘れるでないぞ」
「なんでこんなのに助けられちゃったんだろ……」
額に手を当てて落ち込むシア。頑張って大人っぽくしようとしているくせに感情の起伏が顔にでる。それがまた面白くてからかってしまうのだ。
と、こんなことをしてたらギガントマウンテンが町を踏み潰してしまう。
「さてやるか」
目に魔力を集めていく。しかし魔法を使うわけでもないので詠唱も必要ないし、チャージ時間も数秒程度で済む。
顔の辺りが温かくなってきた。いや熱い。
「あああああああ! 出ちゃうううううううううううう!」
ビシュンと、風切り音とも思えないような不穏な音をさせてビームが飛んでいった。というか勢いで出してしまった。
ビームはギガントマウンテンを直撃。顔を上に逸したせいか、下から上にビームが移動して真っ二つになっていた。なんかギガントマウンテンの前後の地形もちょっと変わったみたいだけどこれくらいは、まあ、ね。
「今の声なに」
「我慢できなくて……」
「もじもじしないでもらえる? ちょっと気持ち悪いんだけど」
「キモいって言われるよりキツイからやめて。それよりあれを見ろ。不完全なビームでも真っ二つだ。すごい威力だな」
ギガントマウンテンが真ん中で割れ、左右に倒れそうになる。が、予想外の出来事が起きた。
仮に右をギガントマウンテンA、左をBとして、半分になったまま前進し始めたではないか。
「面倒になっただけじゃねーか……」
「ビームが細すぎて半分になっただけみたいね。ダメージはあまりなさそう」
「モンスターの集合体だっつってたし、単純に分離しただけだなあれは。これは、どうしたらいいもんかな」
片方は俺がぶっ潰してもいいんだろうか。
「シアはここで待ってろ。ちょっともよおした」
「はいはいトイレね。早く済ませてきてよね」
「え? 一緒に来たい? お前積極的だな」
「早く行きなさいよ!」
怒鳴られた。こういうのも嫌いじゃない。というかシアが怒った時の声、俺割と好きかもしれない。
数十メートル離れただろうか、シアの姿はもう見えない。
「じいさん。じいさん聞いてんだろ。さっさと降りて来い」
「なんじゃ?」
がさっと、その辺の茂みから出てきた。右手には大きめの茶碗、左手には箸。こいつ左利きだったのか。
「もうその辺は突っ込まないからな。本題から切り出すが、ギガントマウンテンが半分になっちまった。あの半分は俺が倒しても問題ないのか?」
「あーずるずる。そうじゃのうずるずる」
「うどんを食う手を止めろや」
「勝手に呼び出しておいて身勝手じゃのう、ずる」
「だから食うなって」
「それで回答じゃが、問題ない。結局あれは分離しただけじゃからな。ギガントマウンテンのHPが半分になっただけのこと。その半分をお前が減らしただけに過ぎない」
「今言ったことは間違いないな?」
「うむ。途中で意見を変えたら反則じゃろ?」
「お前なら途中でルール変えそうだからな、言質くらいはとっておかないと。んじゃ俺戻るから」
「ずるずるずる」
「すする音で返事するな」
飯時に呼び出して悪かったなとはちょっと思ったけど、謝ったら調子に乗るから口には出さないでおこう。
「戻ったぞ」
「おかえりなさい。で、どうするの?」
「半分は俺がやる。たぶん一瞬で終わるぞ」
「じゃあ私はもう半分の方にいけばいいのね」
「そういうこと。テキトーに足止めしておいてくれるだけでいい」
「バカにしてる? 私は魔王。あれくらい倒せる」
そう言ったあとで「ちょっと時間かかりそうだけど」とつぶやいていた。バッチリ聞こえていることは黙っていよう。




