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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
二章:フレンドを作ろう!
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六話

「よく聞け、ヘルヘイムの兵士たちよ」


 兵士たちがざわつき始める。でもなんとうか、ざわつき方がちょっとおかしい。

「なんだあの格好」


「変人か?」

「やべーやつきた」

「あのダサさはいったい……」


 みたいなのばっかりだ。俺はめちゃくちゃカッコいい衣装だと思ってるのに。ダサいってなんだよ。


「ブラックノワールとその相方、レッドスカーレットの登場だぞ! しっかり目に焼き付けておけ!」


 あー、やべーやつきた。なんでこの子真っ赤な衣装着て俺の横に立ってるんだ。つかなんだその衣装。どっから持ってきたんだよ赤いスカートと赤いマント。仮面はビニール袋だし赤くないし。


「ついて来るなって言っただろ!」


 そう耳打ちした。


「つい魔が差して」

「意味わかって言ってる? 絶対わかってないよね?」

「ほら、早くヘルヘイムの兵士たちになんか言ってやりなさいよ。武器構えて攻めてこようとしてるわよ」


 コイツ……あとで説教してやらなきゃいけないな。


「お前たち、これからどこに行くつもりなんだ? もしやこの先にある町に向かうつもりではあるまいな」


 俺がそう言うと、先頭にいる女騎士が一歩前に出た。騎士とはちょっと違うな。鎧は着てないし、軍師とか魔法師って感じか。


 黒髪ボブカットとメガネは似合っているな。壊滅的に乳はないけど、割と短めのスカートから出てる太ももはいい感じにむっちりしている。そうか、そこに需要があるキャラなんだな。なかなかコアだ。


「アナタの言う通り、私たちはこの先の町に行こうとしている。なにか問題でも?」


 凛としていて好感が持てるな。結構カッコいいぞ。


「町でなにをするつもりだ。ここがムラファド共和国の領地と知ってのことだろうな」

「今三国が膠着状態であることは言うまでもないだろう。我々ヒルヘルムは、そこに一石を投じるために領地を拡大することにした」

「つまり町を襲撃するということでいいんだな?」

「そういうことになる」

「それならば容赦はせん。悪いが、ここで全員消し炭になるといい」


 物の弾みで「消し炭になるといい」とか言っちゃったけど、できれば殺しとかはしたくないんだよな。風魔法とかで国境までぶっ飛ばすくらいでいいかな。


「一人でいったいなにができるというんだか……」


 ちょっとくらい約得があってもいいかな。女騎士も結構いるみたいだし。


「鎧のみを風でふっとばしてみよう。久しぶりだから上手く調整できるかな」


 両手に魔力を集中。あんまり集中しすぎると身体を爆散させてしまう可能性もあるし気をつけねば。まあ服だけ切り裂くとか鎧だけ吹っ飛ばすとかは、別の転生先の時によくやってたから大丈夫でしょ。


 魔王の能力を半分くらい開放。風魔法を解き放つ。


「エアブレイド!」


 手の平から放たれた空気の刃が兵士たちを襲う。主に女性陣のみ。


 そして、女性陣の鎧や服がはらりと落ちる。


「最高の眺め、ありがとうございます」


 思わず両手を合わせてしまった。


 たぶんこんなことばっかりやってるから彼女もできないんだろう。


「アナタ、本当に最低クソ野郎ね」

「男っていうのは基本的に最低クソ野郎なんだよ」

「いや、ここまでの最低っぷりはなかなか見られないと思うけど……」


 男たちは喜び、女たちは手で前を隠していた。これで兵力も相当減っただろう。


「んじゃ、さっさとぶっ飛ばしてやるか」

「どうするの?」

「国境の向こう辺りまで風で飛ばす」

「変なところ律儀なのね。クソ野郎のクセに」

「うるさいぞ。お前の服も引き裂いてやろうか」


 と、シアに向けて手の平を掲げ、風魔法を行使した。


「気がつけば私の服がボロボロなんだけど?」

「うむ、前を隠そうとしないのはやはりお前の良さだな。もうちょっと発育が良ければ最高なのに」


 こんなことをしている場合ではない。兵士三千人を一気に吹っ飛ばす。結構難しいんだよな。三千人に近い大きな一個の塊とかの方が楽だ。


「ほい、さっと」


 下からすくい上げるようにして兵士を風の檻に閉じ込める。球体に加工して空高く浮かせた。その間にも、ある程度の距離を運んだら静かに下ろすように指示を編み込む。普通の魔法師なんかにはできないけど、魔王クラスになれば魔法そのものに命令を付与することができるのだ。


 兵士たちを遠くに飛ばしてそれを見送った。


「いやー、いい仕事したな」


 実はあの風の檻、中では風が渦巻いている。皮一枚を切り裂く程度の弱い風だけど、冷たい風に長時間さらされれば体力が奪われる。つまりすぐにはせめて来られないってことだ。


 ふと、平原の下を見下ろした。


 素っ裸の女が一人取り残されているではないか。いや、意図的にじゃない。俺が魔法を発動する前に、一人だけ抜け駆けしてダッシュしてきたんだ。


 その女こそ、さっき俺と会話をしていたメガネの女だ。


「お前……」

「べ、別に私は逃げたわけじゃありませんからね! 元々危険予知能力が高くて勝手に身体がうごいちゃうだけであって!」

「本当に……」

「嘘じゃない! 嘘じゃないから!」

「マジで胸ないんだな……」


 着痩せ、してるわけじゃなかったのか。


「真面目な顔で聞くことではないような」

「大事だから。貧乳キャラとかそんなにいらんし。あそこに素っ裸で腰に手を当ててるロリ貧乳がいるだろ。もうキミには需要がないんだよ……」

「なんでこんなに悲しい顔されてるんだろう。私、悪いことしたのかな」

「まあいいや。なんか使えるかもしれないし持ち帰るか。お前、名前は?」

「ネティス=ソレイユですけど……」

「よしネティス。お前は今日から捕虜だ」

「え、ちょっと待って」

「どっこいしょっと」


 目にも留まらぬ速さで近づき、強引に担ぎ上げた。しゃがみ込み、ネティスの腹に肩を当てて直立の体勢に戻る。


「見えてる! 見えてるから! この体勢だとお尻が丸見えだから!」

「大丈夫だ、俺は見えてないから。見えそうだけど」


 顔の横にケツがあるし、顔面に当たっている。うん、やっぱり太ももは最高なんだよな、コイツ。


「いやらしい手つきで触らないで! もうお嫁に行けなくなっちゃう!」

「ははっ、そしたら俺が引き取ってやるさ」


 ケツをパシーンとひっぱたいてみる。こりゃクセになりそうだな。


「もうなにも言わないわよ、私」


 シアが哀れんでいるのがよくわかる。俺もさすがにやりすぎたなと反省してるよ。


「お尻に頬ずりするのやめなさいって。その人、顔隠して胸隠さずのまま泣いてるから」

「まあいいだろ。他国に攻めてきた報いだ、全身でよーく感じるといい」

「攻めてきたのはその人のせいじゃないと思うのよ、私」

「ええい黙ってろ。とりあえず帰るぞ」


 と、いうことで森の中で着替えを済ませて町に戻ることにした。ネティスの服はないから、布袋を引き裂いてテキトーに「いけないところ」だけを隠した。


 町に帰ると、なぜか知らないけどローラの家ができていた。


「さすがに展開早すぎない? 来て数日で家ってできるものなの?」


 しかもウチの家と同じくらいの大きさだぞ。しかもなんで隣に建てたんだよ。


「お、アルファルドではないか」

「ようローラ。ちょっと頼みがあるんだけどいいか」

「なんだ、改まって言う仲でもあるまい」


 いや、出会って数日ですけど。


「コイツを一緒に住まわせてやってくれないか」


 小汚い茶色な布で局部を隠し、更に目隠しをした女をローラの前に出した。


「これはまた、すごい見た目だな」

「お前にもある程度常識的な思考があるんだなってちょっと安心したよ」


 さっと目隠しを取ってやる。ネティスは右を見て、左を見て、また右を見て、挙動不審に身体を縮こまらせていた。


「ねえ、やりすぎだったんじゃない?」


 シアが小さくそう言った。


「そうか? あの町はブラックノワールを信仰してるから、名前を口にしただけで八つ裂きにされるって言っただけだぞ」

「それ嘘でしょ。自分がブラックノワールだってことを言ったら四肢を引き裂いて食ってやるって言ってたじゃない」

「聞いてたのかよ」

「そりゃ聞こえるわよ」

「まあこれで危険の芽は摘み取った。正義は必ず勝つのだ」

「やってることは完全に悪の側だけどね」


 こうして、この町に新たな仲間が加わった。

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