三話
「あー! いつものように生活していつものように寝てしまったー!」
気がつけば朝だった。時計を見ると、クエスト終了まで三時間程度。こんなことになるだなんて誰が予想した。いいや、きっと誰も予想していなかったはずだ。
スピカにお菓子を渡したことがすべての原因だ。
『こ、こんなものでカイジュウされないんだからね! でも、ありがと……』
我が妹ながら可愛い。
なんてことやってたら朝になってしまった。
こうなったら強硬手段に出るしかない。
朝食を軽く平らげると、すぐさまビリーの家に向かった。早く戻ってこなければ、スピカを学校に送っていく時間になるからだ。
「あら、今日も来てくれたのね」
「ええ、ビリーとちょっと約束があって。上がっても大丈夫ですか?」
「どうぞどうぞ」
セスナさんはリビングの方へと歩いていった。それを確認し、急いで階段を駆け上がった。
階段を駆け上がった勢いのまま、ビリーの部屋に入った。
「おい起きろビリー」
巨体を揺らす。ゆっさゆっさ、ゆっさゆっさ。この擬音が乳だったらさぞ嬉しいことだっただろうか。
「なんだよー、まだ眠いよー」
「うっせー起きろこのクソデブ!」
思わず腹をひっぱたいてしまった。ポヨンといい感じに衝撃を弾き返す。これが乳だったらどれだけ甘美だったのだろうか。
「ななな、なんでアルファルドがここにいるんだよ!」
急いでメガネをかけるビリー。布団で身体の前を隠すな。まったくいやらしくない。これがセクシー美女だったらめちゃくちゃ最高の時間だったのだろうか。
「いいかよく聞け。これから俺が言うことを反芻しろ」
「どういうことだよ」
「いいから言うことを聞くんだ。さもないとお前が大事にしているM字開脚先生のマンガを全部燃やす」
「そ、そんなことをして魂が削られないのか……!」
「お前の趣味と俺の趣味を一緒にするな。俺の性癖は金髪ロリ巨乳じゃない」
M字開脚先生は漫画界でも有名な金髪ロリ幼女を主体としたマンガを多く描くことで有名だ。
「俺は、なにをしたらいいんだ……!」
たぶんこいつにとっては命より大事なんだろう。まあ取り寄せるのに数ヶ月とかざらだからな、この世界は。
「僕はアルファルドの友人です。はい復唱」
「僕はぁ、アルファルドのぉ、友人ですぅ」
「お前が泣いても可愛くねーんだよ!」
でもお陰様で脳内にラッパの音が響き渡った。
『ミッシンコンプリートゥ』
流暢に言おうと頑張ってるのは認めるけど、じじいが言ってると考えればかなり滑稽だな。
「よし、もうお前は用済みだ。じゃあな」
「なんなんだよお前は! もう来んな!」
だから、布団で身体を隠すなって。
そんなこんなでクエストが完了した。いい汗、かかせてくれるじゃねーか。




