最終話
「特殊クエスト、魔族を百体倒せ」
例のごとくトランペットが鳴った。ちょっとだけ音量下がったな。
「今じゃなくない? それさっき言うべきやつだよね? これで俺が魔族倒し続けてたら、魔族にとっての俺の評価めちゃくちゃ低くなるじゃん? ただただ襲ってくるだけのクソ野郎じゃん?」
「そういう展開が見たいんじゃ」
「お前がクソ野郎だったわ」
「大丈夫じゃ。殺さなくてもいい、倒せばいいんじゃ」
「あー、なるほどね。でもクエスト完了の報酬をまだ聞いてないぞ」
「このコインを一枚やろう」
取り出したのは金色のコイン。あれ売ったら結構長い間遊んで暮らせそうだな。
「ふらちな事考えておらんか?」
「気のせいだ。で、そのコインどうすんの」
「枚数によって報酬が変わる、神様ギフトと交換できるぞ」
「ガチャの天井みたいなことしてんじゃねーぞ。でもまあわかった。じゃあちょっと行ってくるわ」
「そうしろそうしろ、ワシはもう帰るでよ。それじゃあのぅ」
「ああ、ご苦労さん」
「それは上司が部下に言う言葉じゃぞ」
「いちいちうるさいよ。さっさと帰れ」
「もう、いけずなんだから」
「ぶっ飛ばすぞ」
「冗談じゃー」
なんて言いながら、光の粒になって消えていった。普通に消えられるのかよ。
その日、魔族の群れが遠征帰りに一斉に転んだ。その日から、その草原は「寝転び平原」と呼ばれることになったそうな。
家に帰るといつも通りの日常が待っていた。母さんが昼食を作っているようだ。どういうわけかシアがスピカに勉強を教えていた。結構頭いいんだろうか。と思ったら逆にシアが教えてもらってた。どういう状況だよ。
そしてリビングでお茶を飲むローラ。なんて普通なんだ。
「なんでいるんだよ」
「ん? 誰だ? でもその声聞き覚えが……」
しまった。つい普通に喋りかけてしまった。コイツはアルファルドという人物を知らないんだったな。
「俺はアルファルドだ。アンタはローラだったな」
「なぜ私のことを?」
「大声で名前を叫んでたからな」
「そんなに大声だったか?」
「それくらいは気づけよ」
「思い出した。二つ前の町で出会った商人と同じ声だ。お前、変装してたのか?」
「ちげーよ。つか話の腰を折るなよ。んで、なんでここにいるの」
「シアとスピカに言われてな。居候させてもらうことになった」
「必要なくない? 割とキャラ的に扱いづらいからさっさと次の町行った方がいいよ?」
「またいつ魔族が現れるかわからないからな。それにここの温泉は非常に気持ちがいい」
「ここ温泉あったの? 二十年近く住んでて初耳なんだけど?」
「一ヶ月前に掘り当てて、昨日ようやく風呂が完成したらしい。ちゃんと畑仕事も手伝うぞ」
「ま、まあちゃんと仕事してくれるんならいいけどさ」
「はーい、お昼ご飯できましたよー」
母さんが大皿を運んできた。元の世界でいうところの焼きそば、この世界でいうヤッキソーバという料理だ。こういうところももう慣れたぞ。
そんなこんなでヤッキソーバを食べ始めた。賑やかというか、クソ面倒くさそうな日常が始まる予感しかしない。
あばよ、俺のノーマルデイズ。




