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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
一章:女の子を三人口説き落とせ!
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七話

 その時だった、町の住人の一人が大声を上げて走り込んできたのは。小太りの男性、狭い町だから見たことがある。


「大変だ! 魔族が! 魔族が攻めてきたぞー!」


 住民たちがざわつき始める。たぶんこの人は町の中を大声で駆けずり回ってきたんだろうとは容易に想像できた。なんてったって噂好きの人だからな。名前は知らないけど。


「いやいや、そんなことはどうでもいい。さすがに早すぎるぞ」


 とにかく、おっさんが来た方向に行こう。どれくらいの魔族が来てるのか見てみなければ。


 と、来たはいいけどどういう顔をしていいのかわからなかった。


「絶対百とか二百のレベルじゃないじゃん……」


 平原目一杯の魔族。数人の冒険者とかがいたところで意味がないくらいの数だった。


「まだシアの魔王特性も消せてないのに……」


 その時『ミッションフェーイルドゥ』というじじいの声が脳内に響いてきた。ちょっとかっこよく発音してんじゃねーぞ、腹立つな。


 近くの民家の影に隠れる。


「おいじじい! 聞こえてんだろ! 今すぐ降りて来い!」


 じじい、もとい神様を呼び出す。でも帰ってく時あの速度だぞ。すぐに来るとは考えにくいか。


「呼んだ?」


 俺が来た方とは逆の方から現れた。手にはなんかの串焼きを持っていた。


「なんでちょっとナチュラルに溶け込んでんだよ。あーもう、そういうのはどうでもいい。なんだよさっきの」

「ミッションフェーイルドゥ」

「そうそうそれ。たしかにソニアは口説けなかったけど、まだ次がある」

「いやいや、次とかないから。今回の特殊クエストの制限時間十二時間だから」

「聞いてないけど?」

「言ってないけど?」


 間髪入れずに頭をひっぱたいた。


「制限時間くらい教えとけや」

「仕方ないのぅ、次からそうしてやるわい」


 じじいと戯れている暇はない。眼の前にある大きな問題を片付けるのが先だ。


「どーすんだよあの魔族の群れ! シアの魔王特性を解かないとどうしようもないって言ったよな?!」

「来ちゃったものは仕方ないじゃろ」

「あ、シアちゃん来たぞ」

「え? マジかよ……」


 民家の陰から身を乗り出す。すると、魔族の群れの戦闘にいるヤツに向かって、シアが歩いていくところだった。


「盗聴する?」

「できるならそうしてくれ」

「ほいほいのほいっと」


 眼の前に半透明なスクリーンが現れた。そこにはシアと、この魔族の群れの長らしき人物が映っていた。

 長っぽいヤツは面長で身体の線も細い。でもタキシードなんか来ててちょっと綺麗めだ。いい感じに中

年してるな。


『これはこれはアレクシア様。生きておられたのですね』

『ええ、とある人物に助けられたわ』

『ディアボリックシンドロームを治した、ということでしょうか』

『そう、なるかしら』

『八百年ほど生きていますが、ディアボリックシンドロームが治ったという話は聞いたことがありません。いったい誰がそんなことを?』

『それは言えない』

『そうですか。しかし、ディアボリックシンドロームを治すくらいの人物です。魔族の群れがこの町を襲えば、ひょっこり出てきてくれるかもしれませんね』

『やめて。ここの人間には手を出さないで』

『おやおや魔王らしくない発言ですな。もっと魔王らしくしてもらわねば、仕えている我々は貴女についていこうなどと思えませんよ?』

『でも、人間は殺さないで』

『無理ですね。これだけの魔族を集めてしまいましたから。皆、すでに臨戦態勢にございます。さ、この魔族の指揮をしてくださいませ』


 なんて会話が聞こえてきた。


「おいじじい。なんとかしろ」

「無理じゃな。こういう諍いには手を出さない決まりじゃから」

「じゃあどうしろってんだよ……」

「お前がなんとかしたらええ。そのための力くらいもっておるじゃろ」

「そういうわけにもいかねーよ。俺が普通の人間じゃないってバレちまう」

「お? 今度は見ね麗しい女性冒険者じゃ」

「マジだ。誰だあれ、見たことねーぞ」


 ソニアと同じくらい服がパツンパツンの女の子が、魔王の群れに歩いていくではないか。胸当て、肘当て、膝当て、それに長めの剣。冒険者だってのはわかるが、もしかして魔族の群れに切ってかかろうってんじゃないだろうな。


『私の名はローラ=ローランド。話は聞かせてもらった。お前が魔王か。我が剣のサビにしてくれる』

『いえ、私は魔王ではございません』


 話聞いてたんじゃないんかい。


『いたいけな少女を連れ去ろうというのだろう。許せん』


 全然話聞いてねーじゃねーか。そんなこと一言も言ってねーぞ。それにあのおっさんのレベルはたぶん二百近い。でもローラはレベル八十そこらだろう。まともな戦闘にもならねーぞ。


 なんて見ている間に戦闘が始まってしまった。魔族の方が手加減してるから、すぐに死ぬってことはなさそうだが。


「ほれほれ、どうしちゃう? 戦っちゃう?」

「妙な煽り入れてんじゃねーよ」


 コイツの頭をひっぱたくのは今日二回目だな。


「仕方ない。お前はここから動くなよ」

「よかろう」


 はい、三回目。神様だが偉そうにされると腹が立つ。

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