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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
一章:女の子を三人口説き落とせ!
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六話

「はい、なんでも言うことを聞きます」

「なんでも、言うことを、聞きます」


 下唇から血が出てるぞ。


「はい、お風呂も一緒に入るし、毎日添い寝もします」

「お風呂もぉ、一緒に入るしぃ、毎日添い寝もしますううううう」

「だー、もう、泣くなよ。嘘だから」


 そして、脳内にトランペットの音が鳴り響いた。第一段階完了ってことなんだろう。


「クソ、割とうるせーな。ラッパやめろラッパ」


 ポケットからハンカチを取り出してシアに渡した。おい、鼻水はティッシュで処理しろよ。


「ねえ、誰と話してるの?」

「いや気にしないでくれ。とりあえず、お前はこのまま母さんの手伝いでもしててくれ」

「アルはどうすの?」

「俺にもいろいろやらなきゃいけないことがある」


 その内容っていうのが他人に口にできないようなことなんだが。


 シアを母さんに押し付けて家を出た。行き先は決まっている。クエストを完遂するためにはまず、口説き落とせそうな女のところにいかなきゃいけないんだから。


 それにしても、あれで口説いたことになるのすごいな。じじいの基準ってどうなってんだろ。

目的地は非常に近いので、歩いてすぐに着いてしまった。さて、どうやって口説いてやろうか。


「好きだ! はダメだな。後々面倒になる」


 もっと遠回りをした方がいいな。


「俺のこと、どう思ってる? いや違うな。そんなの一蹴されて終わるだろ」


 いざ口説けって言われても全然思いつかないぞ。そもそも元いた世界では童貞だったし、転生してからもまともに女の子といい関係になったことがない。


「というかこういうのってもっと時間かけるもんだよな……」

「なにが? つーか人の家の前でなにブツブツ言ってんの? チョーキモいんですけど」


 背後から声がした。


 急いで振り向くと、ウェーブがかかった髪の毛を指先で弄ぶソニアがいた。小さめのシャツにホットパンツ。体つきが十八歳のそれではないのですべてがパツンパツンだ。主に胸と太ももがやばい。これで刺激されない男はいないだろう。


「すまんな」

「別にいいけどそこどいてもらえる」

「あ、ああ」


 半身開けて、ソニアに道を譲った。


 なにか考えろ。今しかチャンスはないんだぞ。


「な、なあソニア」


 ドアノブを掴む寸前に声をかけた。このままドアを開けてしまったら中に入ってしまうだろう。いや、ドアを開けてなくても入りそうなものだが。


 いつからだろうな、ソニアが俺を避けるようになったのは。


「なに?」


 こちらを振り向いたソニアは、心底面倒臭そうな顔をしていた。


「ちょっと聞きたいことがあるんだ」

「ならさっさとしてもらえる?」


 と、言いつつもちゃんと身体はこちらに向けてくれる。うん、こういう律儀なところは昔から変わらんな。


「気になってたんだけど、なんで俺のこと避けるようになったんだ?」


 こう、こうだ。こうやって話のきっかけを作っていく。相手の反応を見ながら話を上手く方向を変えていく。よし、この作戦でいくぞ。


「あ?」


 と、顔面の造形が一瞬にして歪んだ。お前、そんな鬼みたいな顔できるんだな。


「えっと、俺なんかまずいこと言った?」

「おめーもしかして覚えてねーとか言わねーよな?」


 詰め寄られて、鬼のような顔面が眼の前まで近付いてきた。なまじ顔が綺麗なだけにめちゃくちゃ怖い。


「よく覚えてないんだよねー、これがっ」


 まったく反応できない速度でビンタが飛んできた。そしてちょっとだけ意識が飛んだ。


「死ね!」


 最後にそう吐き捨てて、ソニアは家の中に入っていってしまった。無情にもバタンとドアが閉まった。バタンというがドカンって感じの轟音だったが。


 一瞬にして希望が砕け散ってしまった。


 悔しさと少しの羞恥心を抱えたまま立ち上がる。周囲の視線が非常に痛いが、こんなところで寝ているわけにもいかない。

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